2022 Fiscal Year Research-status Report
LC-QTOF/MSによる大麻草由来カンナビジオールオイルの高感度分析と毒性評価
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21K10532
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
中尾 賢一朗 東京女子医科大学, 医学部, 准講師 (20621618)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | デルタ9-テトラヒドロカンナビノール / カンナビジオール / LC-QTOF/MS / 薬物分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
カンナビジオール(CBD)は大麻草の茎や種子に含まれる有効成分の一つである。向精神成分であるデルタ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)と違い、向精神作用がなく、麻薬及び向精神薬取締法で規制されない成分である。そのため、一部のインターネット販売業者より美容や健康補助食品として、あるいは電子タバコのリキッドとして「CBDオイル」が輸入販売され、誰でも簡単に入手できる状況にある。しかし、インターネットで入手できるCBD製品の3分の2以上が、製品ラベル表示より高いもしくは低いCBD含有量であり、一部の商品には相当量のTHCを含むものもあったことが報告されている。CBDオイル中のCBD以外の成分は外見ではわからず、特有の臭いも少ないため、精密分析を行わない限りTHC含有が発覚しにくい。本研究者は実務において、CBDオイルを服用したと思われるヒト検体からCBD、THC及びTHC代謝物を検出し、CBDオイルからもTHCを検出した。今年度はCBDオイルをマウスに投与し、脳及び血中のTHC及びCBDを液体クロマトグラフ四重極飛行時間型質量分析計(LC-QTOFMS)により測定するために、マウス脳及び血液をマトリックスとしてTHC及びCBDのバリデーションを行い、内部標準物質をTHC-d3及びCBD-d3としたTHC及びCBDの検量線を作成した。その上でマウスに市販のCBDオイルをヒトへの推奨投与量をマウスの体重に換算した量投与し、脳及び血中のTHC及びCBDの濃度を測定した。結果、バリデーション及び検量線は良好な結果であった。一方、マウス脳及び血中からTHC及びCBDは検出されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
マウス脳及び血液をマトリックスとしたバリデーションを実施し、検量線を作成した。この点については問題なく遂行でき、結果は良好であった。一方、実際のCBDオイルをマウスに投与し、脳及び血中のTHC及びCBDを測定したが両薬物とも脳及び血中から検出されなかった。これはCBDオイルのヒトへの推奨投与量をマウス体重に換算した場合、投与量が極少量になり、結果的にマウス体内に入るTHC及びCBDの絶対量が少なくなったためだと考えられた。今年度は脳細胞のDNA損傷を調べるところまで進める予定だったが、CBDオイルはTHC及びCBDだけが含有しているのではなく、他にも様々な化学物質が不純物として混入している。それゆえ、CBDオイルを単に投与するだけでは脳細胞のDNA損傷が何に由来するのかを帰結することが難しいと考えた。現在所有しているTHC及びCBDはアセトニトリルを溶媒としているのでマウスに投与できない。そのためエタノールを溶媒としたTHC及びCBDをあらたに発注しているが、違法薬物且つ輸入品のため納品に時間がかかっている状況である。そのため今年度予定していた動物実験は進んでいない。よって(4)遅れているを選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
発注している試薬が納品され次第、すぐに動物実験を行い血中及び脳内薬物濃度と脳細胞のDNA損傷を調べる。血中及び脳内薬物濃度は、LC-QTOF-MSを用いて測定する。脳におけるTHC及びCBDの効果は、凍結切片を作成しDNA損傷の指標となる抗γH2AX抗体を用いた免疫染色やアルカリコメットアッセイにより解析する。さらにカンナビノイド受容体の発現変化も併せて観察し、THC及びCBDの影響を網羅的に観察する。
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Causes of Carryover |
現在繰越金を含め令和5年度予算として約130万円である。令和4年度からの繰越金が生じた理由として、①アルカリコメットアッセイ用電気泳動装置が当初購入を予定していた物より安価な物を購入した、②THC及びCBDが海外からの輸入品であり規制薬物なために、厳重な輸入手続きが必要である。そのため発注に時間がかかり令和4年度内に納品することが出来なかった、③試薬納品の遅れにより動物実験が進んでいないため動物実験および薬物分析に関わる費用の多くが執行されていない、以上の理由により令和4年度にこれら物品の計上ができず繰越金が生じた。 次年度の使用計画は以下の内容で計画している。1.輸入試薬の購入(60万円:輸入手続諸費用等込み)、2.血中及び脳内薬物濃度を測定するための必要な消耗品と、動物実験と免疫染色に関わる消耗品費(60万円)の購入、3.学会参加等の旅費や論文作製に関わる経費(10万円)を予定している。
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