2021 Fiscal Year Research-status Report
Potential of markers of muscle damage and regulators of body fluid for postmortem diagnosis of hypothermia
Project/Area Number |
21K10535
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
竹下 裕史 金沢医科大学, 医学部, 助教 (70387075)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 低体温症 / 死後診断 / 筋損傷マーカー / 体液調節因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
低体温症例の腎組織において,抗ミオグロビン抗体免疫組織化学染色が陽性を示すとの報告はこれまでにいくつか散見されるが,この現象に関する研究報告はなく,そのメカニズムは解明されていない.また,低体温症でみられる組織間質の狭小化や寒冷利尿などの所見は,低体温状態による体液の分布や移動に関わる調節機能の異常が原因と考えられている.本研究計画はこれらの点に着目し,低体温症とミオグロビンを含む筋損傷マーカーとの関連性,および低体温状態における体液調節因子の変動を解析し,低体温症を示す新たな所見および低体温症の重症度判定方法を確立し,致死的低体温症の診断精度向上を目的とする. 本研究ではマウスを用いた低温曝露実験を行うにあたり,麻酔作用による低体温時の筋肉の挙動抑制を避けるため,非麻酔下での実験を計画している.これに伴い,実験動物への苦痛軽減方法として人道的エンドポイントの設定が必要であった.そのため,本研究計画に則した6段階の温度条件について曝露実験を行い,各曝露温度下におけるマウスの体温降下速度を計測した.この結果をもとに,各温度条件において初期体温から最大6℃の低下に至るまでの時間を最長曝露時間として設定した後,同様に各温度条件下における曝露実験を遂行した.現時点では,同実験後に採取した腎組織について各種筋損傷マーカーに対する抗体を用いた免疫組織化学染色,血液試料について各種体液調節因子の測定を遂行中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では実験動物を用いた低温曝露実験を行い,低体温状態における筋損傷マーカーの変動を解析する.こうした動物実験は実験動物への苦痛軽減のため,本来は麻酔下で行うべきである.しかしながら,麻酔作用によって筋組織の挙動が損なわれ,測定対象である実際の低体温状態の変動と異なる可能性があり,本研究では無麻酔下での低温曝露実験を実施する計画を立案した.これに伴い,本研究の実施には実験動物への苦痛軽減方法として人道的エンドポイントの設定が必要となり,各曝露温度における実験動物の体温降下速度からの検討に時間を要したため,実験計画にやや遅延が生じた.
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で無麻酔下における各設定温度の曝露実験を完了し,採取した腎組織を対象に,一部の筋損傷マーカーに対する免疫組織化学染色を行っている.また,低体温状態における筋肉への影響に関して,無麻酔下低温曝露実験結果と比較するため,麻酔下における低温曝露実験も並行して行っている.今後は,その他の筋損傷マーカーに対する免疫組織化学染色のほか,血液試料を対象として,体液調節因子の測定等を行う予定である.
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Causes of Carryover |
無麻酔下での低温曝露実験における人道的エンドポイントの設定に時間を要したため,本実験の試料に用いる本年度分の免疫組織化学染色用試薬や測定用ELISAキットの購入が一部に留まり、次年度使用額が生じた.したがって,次年度では本年度未購入分の試薬および測定用キットの購入に使用する.これに加え,麻酔下低温曝露実験を行うことから,遂行に必要な実験動物,試料採取用品,および追加分の試薬等の購入に使用する予定である.
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