2023 Fiscal Year Research-status Report
Potential of markers of muscle damage and regulators of body fluid for postmortem diagnosis of hypothermia
Project/Area Number |
21K10535
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
竹下 裕史 金沢医科大学, 医学部, 助教 (70387075)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 低体温症(凍死) / 死後診断 / 筋損傷マーカー / 体液調節因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
低体温症例の腎組織では抗ミオグロビン抗体免疫組織化学染色で陽性像が認められる傾向にあるとの報告が散見される.この現象は筋組織からのミオグロビンの逸脱によるものと考えられることから,寒冷曝露によって筋損傷に類似する病態が生じていると予想される.本研究ではマウスを低温環境に曝露し、ミオグロビンを含む筋組織由来成分や筋損傷マーカー等について腎組織における分布や血中濃度の変動を検証する。6段階の温度条件を設定し、無処置の実験群とともに、体幹部を剃毛した群や麻酔薬を投与した群など体温維持機能が低下した実験群を追加し、低温曝露実験を施行した。実験終了後に全臓器、血液,尿を採取し,腎組織は常法に則って組織切片を作製後、抗ミオグロビン抗体免疫組織化学染色を施行した。血液から血清を分離後、ELISA法にてミオグロビン、H-FABP、トロポニンCの血中濃度測定を施行した。その結果、腎組織における抗ミオグロビン抗体免疫組織化学染色では曝露温度による差を認めなかったものの、ミオグロビンおよびH-FABPの血中濃度は環境温度の低下に加えて、剃毛群、麻酔群で高値を示す傾向がみられた。 また前年度から、低体温症の死後診断への有用性の検証として、法医剖検例を低体温症群、心疾患群、外傷群等の10種類以上の疾患群に分類し、筋損傷マーカーや体液調節因子の免疫組織化学染色陽性率を比較検討している。低体温症例では抗ミオグロビン抗体免疫組織化学染色にて、主として低体温症群で尿細管に特徴的な陽性所見が認められることは以前から確認しており、現時点では設定条件を満たす全症例について同所見の有無、および複数の視野で尿細管数あたりの同所見陽性率を算出し、疾患群間で比較している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
動物実験では低温負荷を延長するために剃毛処理をしない無処置群と、一方で体温維持機能であるシバリングの影響を避けるため麻酔下にて低温曝露を施す麻酔群を追加設定し、各々25℃、20℃、15℃、10℃、5℃、0℃の温度条件にて低温曝露実験を施行した。曝露実験後に各種試料を採取し、筋損傷マーカーであるミオグロビン、心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)の血中濃度を測定した。その結果、ミオグロビンおよびH-FABPはいずれも、15℃以下では麻酔群が他の群よりも高値を示す傾向を認めた。また、10℃以下では剃毛群が無処置群より高値を示し、0℃ではいずれの群も他の温度条件よりも高値を示した。一方、検討を予定していたトロポニンCやミオシン軽鎖など他の筋損傷マーカーやバソプレシンやアルドステロンなどの体液調節因子の変動解析、ならびにミオグロビン以外の筋損傷マーカーに対する免疫組織化学染色による評価の実施に至らなかったため、進捗状況はやや遅れている。 法医剖検例の腎組織について抗ミオグロビン抗体免疫組織化学染色を施し、主として低体温症に尿細管の特徴的な陽性所見が出現する。同所見の評価法として検討を重ね、一視野あたりの尿細管陽性率を算出し、複数の視野の平均陽性率を症例ごとに算出し、疾患群別に比較することとした。本年度はこの評価法の作成と症例数の処理に時間を費やしたため、実験計画の進捗はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
実験動物を用いた低温曝露実験にてミオグロビンとH-FABPに変動が認められており、骨格筋トロポニンCやミオシン軽鎖、タイチンなどの他の筋損傷マーカーについても継続して測定・解析を実施し、低体温状態の指標としての有用性を模索する。また低体温状態にみられる寒冷利尿や組織間質の狭小化は体液量調節機能の異常によって生じると推測されることから、バソプレシンやナトリウム利尿ペプチド、レニンなどの測定・解析も同時に実施する予定である。 法医剖検例における検証では、腎組織における抗ミオグロビン抗体免疫組織化学染色の陽性率評価を継続しつつ、同染色陽性率の高い症例を対象とした上記動物実験の解析対象成分に対する免疫組織化学染色を行い、ミオグロビン以外の成分による低体温症の評価方法を探る予定である。
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Causes of Carryover |
前年度の実験計画の修正による追加設定条件での動物実験の実施、および剖検例を対象とした免疫組織化学染色の評価法の検討により実験計画全体が遅延したため、動物実験後に予定した試料の測定・解析まで到達し得ず、次年度使用額が生じた。次年度の使用計画としては、動物実験では各種対象成分のELISAキットの購入を主として、動物実験および剖検例の検討に必要な免疫組織化学染色用試薬や抗体の購入に使用する予定である。
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