2022 Fiscal Year Research-status Report
前腕における皮神経の位置を体表から推定する方法の開発-安全な点滴注射のために
Project/Area Number |
21K10540
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小宮山 政敏 千葉大学, 大学院看護学研究院, 教授 (70175339)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 静脈注射 / 点滴注射 / 静脈穿刺 / 前腕 / 皮静脈 / 皮神経 / 神経損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
前腕への安全な点滴注射のために、体表から触知できる骨の隆起や腱およびそれらを結ぶ仮想線を頼りに適切な穿刺部位を体表から推定する方法を考案することを目的として、献体遺体の前腕の橈側および背側における皮静脈と皮神経の位置関係を調べた。令和4年度は3体の6上肢を対象に、回内位の前腕の橈側および背側の皮静脈と皮神経を精査した。体表の基準線には、上腕骨外側上顆と橈骨茎状突起を結ぶ線(LA)、上腕二頭筋腱外側縁と橈骨茎状突起を結ぶ線(PA)、上腕骨外側上顆と尺骨茎状突起を結ぶ線(DA)を採用した。 その結果、以下のことが明らかになった。(1) LA70%以遠の前腕背側で、LAとDAとの間の領域には太い皮神経の走行が見られなかったため、その部位の皮静脈には比較的安全に穿刺できると考えられた。(2) PAに沿っては、主に橈骨神経浅枝と外側前腕皮神経の走行が見られ、PAを目安に静脈穿刺をするのは困難であると考えられた。(3) DAを穿刺の目安としたときには、DA78%以降、すなわち遠位22%の範囲が比較的安全に静脈穿刺ができる部位であると考えられた。(4) 橈骨神経浅枝と外側前腕皮神経は皮静脈に沿って皮静脈の深層を走行していることから、静脈穿刺時には真正面から穿刺し、深く刺しすぎないように注意する必要があると考えられた。 皮神経と皮静脈の位置関係について、回内位の場合と回外位(解剖学的正位)の場合とでどの程度異なるのかを、生体において超音波画像診断装置を用いて解析した。その結果、前腕の遠位半分辺りでは、体表の基準線に対する皮静脈の位置関係は回内位か回外位かに関わらずさほど変化しないことが明らかとなった。細い皮神経は超音波画像診断装置では確認できなかったが、ごく太い皮神経は皮静脈との位置関係が変化することはなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
回内位の前腕における皮神経および皮静脈の走行と、それら相互の位置関係および体表の基準線との位置関係に関しては、おおむね順調に解析が進んでいる。令和3年度は6上肢、令和4年度も6上肢について解析できたので、令和6年度も同程度の例数の解析を見込んでいる。 また令和4年度には、生体において超音波画像診断装置を用いて、回内位と解剖学的正位との間で皮神経と皮静脈の位置関係がどの程度変化するかについて解析を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
献体遺体の解剖による解析は従来通りに続け、これまでに得られたデータと総合して解析を行う。 また、令和4年度の成果をまとめて学会発表を行うとともに、令和5年度中に得られる成果を順次追加しながら成果の公表に努めていく予定である。
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Causes of Carryover |
消耗品の支出が予想より下回ったため、約9,500円の次年度使用額が生じた。 これは次年度に消耗品費として支出する予定である。
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