2021 Fiscal Year Research-status Report
患者の個別性をふまえた術後疼痛経過の予測モデル構築に関する研究
Project/Area Number |
21K10720
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Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
井川 由貴 山梨県立大学, 看護学部, 准教授 (20453053)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 奈央 山梨県立大学, 看護学部, 講師 (30509427)
高取 充祥 山梨県立大学, 看護学部, 助教 (60781383)
遠藤 みどり 山梨県立大学, 看護学部, 教授 (90279901)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 周術期看護 / 術後疼痛管理 / 予測的アプローチ / 患者の個別性 / 看護実践 / 看護の質向上 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「患者の個別性をふまえた術後疼痛経過の予測モデル構築に関する研究」をテーマとして、個別的要因の影響を受け変化する術後疼痛の経過をモデル化することを目的としている。2021年度は、目的変数(NRS:Numeric Rating Scale:痛みを数値で示すスケール)に対する説明変数を吟味するための準備として、調査研究ならびにパイロットスタディの整理・統合と先行研究のレビューを行った。 調査研究ならびにパイロットスタディの統合として、「全身麻酔下で手術を受ける患者の術後回復過程(術前期、術直後~1日目、術後2~3日目、術後5~6日目)の特徴に応じた看護実践」について、外科病棟看護師へのインタビュー結果を論述した。この研究では、術直後~1日目の看護実践として、患者しか理解しえない術後疼痛を多面的なアセスメントにより理解し、積極的な鎮痛を図り、術後2~3日目には、拡大する活動との関連や退院を見据えた鎮痛管理の継続、また術後5~6日目には、痛みが十分コントロールできていることの確信を得た上で退院が迎えられるよう援助している事を明らかにした。患者の術後経過には看護師のこのような疼痛管理が組み込まれていることから、患者の特性のみならず「看護師の術後疼痛に関する看護実践」を本研究における疼痛の影響因子に含めることの必要性を確認した。 また、これまでのパイロットスタディを"Trajectory of Postoperative Pain and its Affecting Factors"としてまとめ発表予定である。この研究では、術後疼痛への影響要因として、患者の基本属性や入院時計測データ・血液データ等の身体所見、手術時間・術式等の手術情報に加え、看護実践スコアを変数とした。その結果、術後疼痛に有意に影響する要因が明らかになったため、本研究の説明変数の絞り込みに活用する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、先行研究や文献から目的変数(NRS:Numeric Rating Scale:痛みを数値)に対する説明変数を吟味することを目的としていた。パイロットスタディの結果では、術後疼痛のピーク(8時間~12時間)や手術翌日から開始される離床に伴う活動強度のばらつきや鎮痛薬使用の多様性を考慮し、術直後から術翌日就寝時までの8時点に絞り術後疼痛経過を観察していた。しかし、2021年度の調査研究ならびにパイロットスタディの統合と研究レビューから、多くの施設における術後の早期離床と早期退院の標準化に伴い、術翌日の離床時の疼痛管理に関心が高まっている事、退院後の疼痛コントロールまで視野に入れた文献が多い事から、術後の活動時期(術後1日目~3日目)まで調査時期に含めることで、より広く疼痛緩和に効果的な看護介入が考察できると考えた。
調査項目については、痛みの影響要因として、患者の個人特性(年齢や痛みの閾値、過去の痛みの体験、サポート者の有無など)や治療特性(術式や手術部位、手術時間、鎮痛薬の使用頻度、看護師から受けた術後ケアなど)を検討している。これらの影響要因は先行研究では、症例研究や実践報告あるいは患者の疼痛体験の中で、術後疼痛の影響要因として記述されている。しかし、術後疼痛との統計学的な関連性を明記した文献は見当たらなかった。これらの要因は臨床経験上も術後疼痛に影響する要因であると考えるため、本研究では説明変数として継続投入することとする。 なお上記の検討を含め、研究計画書は概ね完成している。年度末の所属部署変革(新カリキュラムへの移行、新部署編成等)により研究倫理審査申請の準備に若干の遅れが生じているが、年度開始に伴い実施予定である。調査実施施設における研究協力者との打ち合わせは順調に進んでおり、倫理審査の承認が得られ次第、調査スケジュールの打ち合わせを行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
4~6月:研究倫理審査委員会申請、調査協力者との打ち合わせ(調査対象施設決定) 7~8月:調査依頼①(意向調査) 調査対象施設ならびに調査対象施設について、階層的データの予測モデル構築に必要とされる20施設以上、各施設内50人以上のサンプル数を設定し、調査項目数を考慮した上で、申請者と研究協力者(リンクナース)の在住近県5県(東京・静岡・埼玉・山梨・長野)各4施設程度の外科系病棟にて、全身麻酔下での腹腔鏡または胸腔鏡下手術予定患者への調査を行う。 9~12月:調査依頼②(意向調査にて同意が得られた施設に対して) 各施設への意向調査にて調査協力の承諾が得られた施設に対して調査を依頼し、各施設の看護管理責任者、病棟師長の承諾を得た上で、調査協力に同意が得られた患者の術後疼痛経過に関連するデータをカルテより収集する。データ収集・回収においては、本研究のリンクナースの協力を得て行う。 1~3月:調査実施
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Causes of Carryover |
年度末の所属部署変革(新カリキュラムへの移行、新部署編成等)により研究倫理審査申請の準備に若干の遅れが生じている。また、COVID-19の感染状況から県外の調査実施施設における研究協力者との打ち合わせを遠隔で行うなど簡素化している。さらに学会における公表もオンラインとなり、発表にかかる予算執行が不要となったため、打ち合わせ資料の概略化、打ち合わせや成果報告自体の簡素化により、次年度使用額が生じている。 しかし、これに伴い対面での綿密な打ち合わせが行えていない(特に旅費の執行が遂行されていない)ため、2022年度には、倫理審査承認後の詳細な打ち合わせに係る資料準備費、各調査対象施設の視察を交えた調査依頼等の旅費、調査のための旅費、調査協力看護師への謝礼等が必要となる。
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