2021 Fiscal Year Research-status Report
精神障害者と家族、支援者を支えるためのダイアローグを用いた参加型実践的研究
Project/Area Number |
21K10722
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
西池 絵衣子 兵庫県立大学, 看護学部, 講師 (90559527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川田 美和 兵庫県立大学, 看護学部, 准教授 (70364049)
末安 民生 佛教大学, 保健医療技術学部, 教授 (70276872)
竹端 寛 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (90410381)
坂下 玲子 兵庫県立大学, 看護学部, 教授 (40221999)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 対話実践 / 精神医療福祉 / リフレクティングプロセス / 精神看護 / 相互支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、精神障害をもつ当事者、家族、医療・教育・司法関係者、地域住民と協働し、①リフレクティングプロセスを用いたダイアローグ形式のミーティングを繰り返しながら、②相互理解を深めながらニーズを正確に把握し、③地域特性を活かした支援モデルを開発することを目指すアクション・リサーチ型の研究である。本支援モデルは、当事者・家族の個々のニーズに応じた支援方法であることに加え、支援者が安心して困難な課題への取り組みを継続し、かつ自ら精錬させて取り組むことのできるような支援技術の方法論を超えた支援の方法としての包括的なモデルである。 精神障がいをもつ当事者、家族、医療、福祉従事者・教育者・司法関係者、地域住民ともに、ダイアローグ形式でミーティングを行い、②精神障がいをもつ人や家族個々のニーズに応じた支援方法や支援者への支援プログラムについて検討し、③精神障がい者が地域特性を活かした生活しやすい場としての包括的支援モデルの開発を目指している。 本研究では、「参加者全員で行うダイアローグ」と「それぞれの専門性」の双方の特性をいかせる方法としてアクションリサーチ法を用いて生きにくさをかかえた患者やその家族に対してそのときどきの地域の課題をも視野にいれて、可視化し、共に歩みながら変化をともにしていく視点(共進化 co-evolution)が独創的である。 今年度は予定としていた実施案がコロナ禍の影響を受けたことによって直接的な調査対象者に対する試みが困難であったため、前段階として予定していた、研究者各自が背景としている臨床観の相互理解とこれまでの臨床経験を踏まえた現状の課題を認識し、研究に反映していくことができる事項について共有し、次年度の実施が円滑に進むための体制整備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
開始時におけるミーティングを行い課題の共有化と調査実施運営時に反映する事項の抽出を行ったが、コロナ禍でもあり当事者、家族など研究者以外らのミーティングへの参加を得た展開までには至っていない。そのため調査データ収集のためのミーティングに予定通りの時間を確保できないことも想定して、できるだけ研究対象としてのミーティングの実施時に研究者の臨床経験と研究課題との関係性を精緻に組み合わせることができるように論議を行っている。その成果としては、精神科受診を要するような患者の場合においても、患者個人の病状だけに特化するのではなく、また特異的な状態を消退、改善させていくというような直線的な治療プラグラムとするのではなく、家族や地域の全体の回復をめざしたミーティングの視点の確立を行っていくことを確認した。 これまでの家族療法等の実践において理論的にも技術的にも一定の評価を得ている家族システムとそのダイナミクスにも着目し、研究対象となるダイアローグ形式のミーティングに反映する。そのことによって家族の多様性と家族の精神健康度を高める健全性が得られるとともに、家族内に生じているコミュケーションのゆがみについて批判的対象とだけにはせず「家族関係のありよう」をそのまま回復プロセスに反映していくことが可能になるという合意である。患者個人の病理だけではなく家族関係と偽相互性にも着目した家族のなかの役割関係を見直すとともに、相補的関係としての共依存や、IPなどの存在を家族役割システムとしての家族関係、個と集団の関係性として捉えなおすことが可能になる。このことによって家族ホメオスタシスによる恒常性の回復を促し、家族問題として行動プロセスへの関与の意義が確かめられるのではないかという方向性を確認した。今後は、遠隔も含めた参加方法の検討を継続して行い、ダイアローグ形式のミーティングを継続してできるように検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況を踏まえて、ミーティング開始時に研究目的が参加者スムースに伝わり、リフレクティング・プロセスを用いたダイアローグのミーティングの説明もより正確に理解されるように研究者の協力を得て準備を行う。当初の計画では研究者以外のミーティングへの参加者には平準化された説明で準備をしていたが、研究者による一年間の検討によって、オープンなミーティングにおけるダイアローグの意義をできる限り平易に説明する一方で、専門職でない人々に「不確かさの包容」「対話主義」「ポリフォニー」などのダイアローグの根幹に触れる要素をいかに伝えたうえで参加していただけることがこの研究の肝の1つであることが再確認されたので、困難ではあるが説明をより精錬していきたい。特にこのダイアローグが、「即時対応」「24 時間対応」「ニーズに合わせたスタッフ編成」「スタッフ間での提供責任の連帯性と継続性の保障」などの地域医療提供システムの保障と連動して実施され、さらに発展していることも重要事項として説明を要することである。そのため計画の実現度をより高めるために参加依頼に同意が得られた方々との事前ミーティングを開催し、精神障がいをもつ人や家族個々のニーズに応じた支援方法や支援者への支援プログラムの開発のために「知識」の共有と、最終的にはこれまでは「対患者救急システム」としてとらえられていたような包括的医療から除外されていたような、「人と人との支え合い」による支援のニーズの開拓や新しい疑問や問題を明らかにし、洗練させながら支援モデルの構築を目指す。 その結果、研究計画の「パブリックコメントを共有」における手法も再検討を要することになるのかもしれない。すでに計画のなかでは、誰の課題なのか、課題を変化させることをどのように考えているのかを分析する予定であり、報告の段階でも分析方法も研究者らとあらかじめ合意を得ておきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で予定していたミーティングが開催されず、謝金や旅費、ホームページの開設が遅れてしまったため次年度に繰り越す。
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