精神科病院におけるおむつ使用状況の実態調査と排泄アセスメントツールの開発

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 21K10810
• Research Institution: Komazawa Women's University
• Principal Investigator: 岡 京子 駒沢女子大学, 看護学部, 助教 (30845045)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 畠山 卓也 駒沢女子大学, 看護学部, 講師 (00611948) ; 松尾 真規子 駒沢女子大学, 看護学部, 講師 (10301706)
• Project Period (FY): 2021-04-01 – 2024-03-31
• Keywords: 排泄ケア / 精神科 / おむつ

Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、精神科における排泄ケアの特異性を明らかにすること、精神科入院病棟でのおむつ使用状況の実態を明らかにすることである。さらに、おむつ離脱に向けた看護介入モデルの作成を視野に入れ、精神科に特化した排泄アセスメントツールの作成をめざす。
精神科疾患と排泄セルフケアの関連について、文献検討を行った。精神症状との関連では、不安・焦燥感から排泄行動への注意・集中困難、感覚過敏によるおむつ着用拒否、亜昏迷状態によるセルフケア能力全般の低下、退行による排泄行動の自立困難、疎通不良患者の排泄の訴えのとらえにくさ、易怒性・暴力によるケアの難しさなどが事例研究で報告されていた。抗精神病薬の副作用には腎機能障害や排尿障害、多飲水、便秘があり、特に多飲水と便秘については様々な看護介入が行われている一方で、便秘対策としての日常的な緩下剤の服用による下痢や栄養障害の報告もあった。おむつ交換の場面は患者からの身体的暴力が起こりやすいという調査報告があった。国外の調査研究では統合失調症の尿失禁発生率が一般に比べ高いこと、精神科入院患者の尿失禁の有病率と身体拘束・入院期間の長さの関連が明らかになっている。これらから、精神科では排泄機能のアセスメント・排泄ケアに特有の困難さがあることが考えられた。しかしおむつ使用に至る要因、おむつ使用が慢性化する要因について系統的に明らかになっておらず、日本の精神科病院におけるおむつ使用状況の実態調査もなかった。
精神科病院での排泄ケアの実際を把握するために、精神科病院に勤務する看護師を対象にインタビュー調査を行った。調査内容は、過去1年間に新たにおむつ着用となったケースについて、おむつ着用の経緯、おむつ着用前の排泄状況、現在の排泄状況、実施した排泄に関連するケア、患者・医療チームでの問題共有状況などである。現在22名のインタビューを終了し、分析を進めている。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

精神科病院に勤務する看護師を対象としたインタビュー調査において、研究の手続きとして施設長の許可を得て、対象となる看護師を紹介してもらい、対象者に個別に協力依頼を行うという手順を取った。COVID-19の感染拡大に伴い、看護師の人員不足や感染予防の理由などから施設長の許可を得ることが困難であり、当初のスケジュールよりもインタビューのケース数を集めるのに時間がかかっている。オンラインでのインタビューを積極的に活用し、インタビュー調査を進め、現在22名のインタビュー調査を終了した段階である。

Strategy for Future Research Activity

インタビュー調査は、30名の看護師からの情報収集を目標としていたが、25名のインタビュー終了時点で分析結果をまとめることと変更する。インタビューで語られたケースのおむつ使用要因、おむつからの離脱を困難にさせる要因、ケアを困難にさせる要因を抽出し、精神科における排泄ケアの特異性を明らかにする。
インタビュー調査の結果をもとに質問紙を作成し、精神科におけるおむつ使用状況の実態調査を行う。国内の精神科病院と精神科病院に勤務する看護師を対象とし、目標回答数は精神科病院200施設、看護師1000名を目指す。日本の精神科病院でのおむつ使用状況を明らかにするとともに、おむつ使用要因とおむつ使用が慢性化している要因と使用状況の関連を検討し、精神科における排泄ケアの課題を明らかにする。
以上の研究結果から、精神科に特化した排泄アセスメントツールを作成する。

Causes of Carryover

インタビュー調査が遅れており、学会での発表に至らなかったため、旅費の使用が無かった。次年度の学会参加を予定している。また、データ分析の際のアルバイト人件費として使用を予定している。