2023 Fiscal Year Research-status Report
子どもが生涯無煙環境で育つための家族支援プログラムの開発
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21K10955
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Research Institution | University of Human Environments |
Principal Investigator |
三並 めぐる 人間環境大学, 松山看護学部, 教授 (20612948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥居 順子 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 教授 (00249608)
岡 多枝子 人間環境大学, 松山看護学部, 教授 (30513577) [Withdrawn]
羽藤 典子 人間環境大学, 松山看護学部, 准教授 (50626489)
大坪 かなえ (平間かなえ) 人間環境大学, 松山看護学部, 准教授 (00461319)
上西 孝明 人間環境大学, 松山看護学部, 講師 (50648590)
上西 加奈 人間環境大学, 松山看護学部, 助手 (10805948) [Withdrawn]
吉屋 寿則 人間環境大学, 松山看護学部, 助手 (20909923) [Withdrawn]
藤田 碧 秋田看護福祉大学, 看護福祉学部, 講師(移行) (70881358)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | タバコ / 子ども / 家族 / 無煙環境 / CRAFT理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度の研究成果は以下の2点である。 1.子どもとその家族の無煙環境に関する国内外の先行研究を対象とした研究を行い、第10回日本タバコフリー学会学術大会で口頭発表した。 研究では喫煙家族と非喫煙家族の特徴から、医療者としての支援について検討した。その結果、喫煙家族の特徴は、「妊娠・出産をきっかけに禁煙への行動変容がみられる」「受動喫煙が家族や妊婦に及ぼす影響を理解していない」「家族・友人・恋人が喫煙している人、働く女性や自営・非常勤、一人暮らしの人」「子どもの喫煙も容認し、自身の歯科検診受診行動が取れていない」「子どものう蝕罹患率が高い」「妊娠・育児にストレスを感じている」「家族は同居者の受動喫煙に対し寛容」であった。医療者が行う支援は、「喫煙者が禁煙するきっかけとなる「妊娠・出産」に焦点を当てる」「喫煙者本人とその家族に受動喫煙に関する情報を提供する」「身体面、精神面、健康意識、環境面に対する支援を行う」重要性が示唆された。 2.小学生と中学生の喫煙に対する意思決定(将来の禁煙意志および喫煙の誘いを断る意志)と自尊感情調査から未成年から始まるタバコフリー社会の実現に求められることを検討した。小学校6年生から中学校3年生を対象に将来にむけたタバコを吸わない意思の程度や自尊感情を尋ねた。94.0%が「20歳になってもタバコを吸わない」という意思をもち、91.2%が「喫煙を誘われても断れる」と回答した。自尊感情尺度の得点は、男女別・学年別では有意差はなかった。しかし、20歳以降もタバコを吸わない意思、および喫煙の誘いを断る見通しの問いに対する回答別に自尊過剰尺度得点を比較したところ、いずれの問いが、「強くそう思わない」群が「強くそう思う」「そう思う」群より有意に低得点だった。このことから未成年の喫煙防止教育には、自尊感情を高める重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
自己点検による評価は6.0であり、その根拠は以下の2点である。 1)第10回日本タバコフリー学会学術大会において共同研究結果「喫煙家族と非喫煙家族の特徴と支援」「モンゴル国のタバコ事情と子どもの健康」を口頭発表し、いのちの教育学会では、研究論文「児童生徒の喫煙に対する意思決定と自尊感情との関わり ~タバコフリー社会の実現に向けて~」の投稿により、研究成果を収めることができた。 2)今年度の研究では、タバコフリー社会の実現のための薬物乱用防止教育の終了時の質問紙調査の分析から受講者の将来の禁煙意志や喫煙の誘いへの断り意志と自尊感情との間の関係に着目した検討を行った。喫煙行動の開始には家庭内の喫煙や友人の喫煙など多くの人的・物理的要因の影響があることが確認されており、これらも併せて重視すべきである。本研究は、一定の地域での限られた人数での調査であり、一般化するには今後調査を重ねて拡大実施する必要がある。 さらに、回収率はある程度良好であったものの、未回答の児童生徒が存在する。一般的に、健康や教育に関する自記式調査を行った場合、未回答・未提出の者に、そのテーマとする事象に関し深刻な課題を持つ者や、支援者に対し警戒心を持つ者が多くみられる傾向がある。今回の調査でも、未回答群に深刻な状況にある児童生徒、すなわちより手厚い予防的関与が必要な児童生徒がいた可能性を重々認識すべきだと考えている。 子どもの「生きる力」を育む役割を担う者として、子ども自身が内発的に喫煙をしないという選択をする力を育てる際には、その子どものもつ自尊心を視野に入れることの重要さが示唆されており、この研究には一定の意義があったと考えられる。今後は将来の喫煙に対する考えの回答別にグルーピングをした上で、他の設問の回答の分析を行い、子どもの感じる状況を踏まえたかかわりを検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
人生100年時代を生きる子どもたちとその家族の健やかな生活のために無煙環境(タバコの煙に曝されない,つまり一次・二次・三次喫煙がない「無煙環境」)の実現が求められる。 本研究は,子育て中の家族が喫煙防止および禁煙できる支援を行うことで,子どもと家族が無煙環境で健やかに成長・生活できることを研究目的としている。 禁煙成功と禁煙継続,および家族支援に影響を与える点に焦点化して研究を行う。CRAFT研修受講後,本研究の活用について検討する。倫理審査を受け,調査準備を進める。 禁煙支援に関する質問紙調査(プレ調査・本調査)を全国を10ブロック(北海道・東北・北関東・南関東・北陸信越・東海・近畿・中国・四国・九州沖縄)の年長児がいる保護者各200名(計2000名)とし,家族の喫煙状況や求められる禁煙支援を明らかにする。家族支援プログラム実施希望者は,調査用紙とは別封筒で返却してもらう。CRAFT理論の(相手の望ましい行動を増やす,30秒ルールの温かいコミュニケーション,家族が楽になり生活を豊かにする)手法をとりいれた家族の禁煙支援プログラムの開発と実施準備,専門家によるトレーニングを受講する。研究対象者への感染症対策と健康状態を配慮し,いつでもどこでも可能な,携帯電話でのオンライでできるプログラムを作成する。 質問紙調査(プレ調査と本調査)後の結果を分析し,CRAFT(Community Reinforcement and Family Training )理論を取り入れた禁煙のための包括的な家族支援プログラムの開発を行う。コロナ禍における家族支援を考慮し,オンラインで実施できる方法に取組む。
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Causes of Carryover |
最終年度にあたり、調査研究や研究発表等を予定しており、研究完了時までに使用いたします。
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Research Products
(8 results)