2023 Fiscal Year Research-status Report
1,8-シネオールによる アロマセラピーの効果と応用
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21K11082
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
五島 聖子 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (80745216)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 1,8-シネオール / ボルニルアセテート / 微香 / 長期暴露 / アロマセラピーの危険性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、当初の計画通り高齢者を対象とした臨床実験を行った。実験では前年度の研究結果により、被験者に強い不快感を誘発する可能性のある2-ノネナール(当初計画)の代わりに、ボルニルアセテートをコントロールとして用いた。 年度前半に予備実験として健常者を対象に、ボルニルアセテートと1,8-シネオールの「微香」とする濃度を確定したのち、通常濃度で5分暴露した際の嗜好性とリラックス効果と覚醒効果、さらに微香で1時間暴露した際のリラックス効果と覚醒効果を調査した。これらの結果をもとに、年度後半に長崎市内の介護施設「のぞみの杜」(入居定員50人)の3つのユニットの40人の入居者(要介護度平均4.4、平均年齢89.9歳)を対象に、アロマペンダントとアロマステイックを用いた2週間の長期暴露による効果を調査した。被験者は、日中はアロマペンダントを装着し、夜間は枕元にアロマステイックを置くことで、終日微香に暴露された。実験の対象となった3つのユニットのうち、ユニット1では実験1 週目に終日1,8-シネオールを使用し、2 週目に夜間の香りをボルニルアセテートに変更した。ユニット2では1 週目にボルニルアセテートを併用し、2 週目は終日1,8-シネオールを使用した。ユニット3では、香りを曝露しない状態で同じ検証を行った。香りの効果は実験前後のMMSE、実験中の介護者による行動観察、眠りSCANによって評価した。 実験の結果、認知機能、睡眠状態は、1,8-シネオールのみを曝露した場合よりもボルニルアセテートを夜間に併用した場合の方が改善することが明らかになった。一方、この実験では1 名の介護者が1,8-シネオールの微香に過剰反応してくしゃみが止まらなくなった。健常者でも香りを感知しない程度の微香でも、過敏な人にはアレルギー反応を引き起こすことが明らかになり、公共空間でのアロマセラピーの危険性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初実験計画のうち、コントロールとして挙げた2-ノネナールの不適切性が明らかになったため、その代替となる香りを実験により確定すること、及び、実験を予定していた「ぐるーぷほーむ新里油木」と「ぐるーぷほーむ新里城栄」がコロナ禍以来、実験参加を認可しなくなったことで、代替となる施設を探し被験者数を確保することに予定外の時間を要した。しかしながら、本年度は当初計画した実験は、基本的に実施できたが、結果を論文にまとめられておらず、学会への投稿や発表など行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の補足実験を行い、研究成果を論文にまとめ、投稿および学会発表を行う。
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Causes of Carryover |
初年次にコロナ禍のため、予定した被験者を対象とする実験を行うことができなかったため、当初計上していた金額を使用することがなく、全体的に研究の遅れが生じた。次年度は、未使用の金額を追加実験と論文作成、研究発表のための経費として使用する。
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