2021 Fiscal Year Research-status Report
大腿骨近位部骨折で周術期にある認知症高齢者の低栄養の実態と歩行再獲得に及ぼす影響
Project/Area Number |
21K11093
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
舩橋 久美子 北海道医療大学, 看護福祉学部, 助教 (70866061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 律子 北海道医療大学, 看護福祉学部, 教授 (70285542)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大腿骨近位部骨折 / 高齢者 / 認知症 / 歩行再獲得 / 要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、次年度のパイロットスタディに向け、調査項目を選定することを目的とし、①周術期にある高齢者の低栄養の判定のためどのような栄養指標を測定することが適切か、②周術期という特徴をふまえ、栄養の取り込みと消費をどのように測定する必要があるか、③大腿骨近位部骨折で回復期にある高齢者のどの時点の低栄養が歩行再獲得に影響したか、④認知症高齢者が低栄養に至る要因と歩行再獲得に影響する要因は何か、について国内外の文献レビューを実施した。 文献レビューの結果、①について、先行研究より、周術期の栄養状態を評価するための指標として用いられている項目が多く確認されたが、今後疫学調査へと発展させることを考慮すると調査項目を絞っていく必要がある。②について、大腿骨近位部骨折で周術期にある高齢者の入院時から退院時の栄養状態の変化をどう捉えていくかは、炎症の程度を考慮する必要があるため、今後も文献レビューが必要である。③について、「歩行再獲得」は、評価時期の違いから先行研究によってさまざまに定義されていた。大腿骨近位部骨折を受傷した高齢者の回復期における歩行再獲得に関連、もしくは影響した要因として、「年齢」「認知機能の低下(認知症を含む)」「受傷前歩行能力」「入院時血清アルブミン値(急性期の病院と回復期リハビリテーション病院による)」が挙げられ、大腿骨近位部骨折で手術を受けた高齢者が高齢であるほど、認知機能が低下しているほど、受傷前歩行能力が低いほど、入院時血清アルブミン値が低いほど歩行再獲得が困難となったことが明らかになっていた。④について、大腿骨近位部骨折で周術期にある認知症高齢者を対象に歩行再獲得に影響する要因を調査した研究はなかった。 今後は、さらなる文献レビューを進めるとともに、調査フィールドとなる施設の栄養状態に関する収集データを把握したうえで、調査項目を選定していく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究計画に沿って、次年度のパイロットスタディに向けた調査項目の選定を目的に以下の①~④に関する国内外の文献レビューを実施した。 ①周術期にある高齢者の低栄養の判定のためどのような栄養指標を測定することが適切か ②周術期という特徴をふまえ、栄養の取り込みと消費をどのように測定する必要があるか ③大腿骨近位部骨折で回復期にある高齢者のどの時点の低栄養が歩行再獲得に影響したか ④認知症高齢者が低栄養に至る要因と歩行再獲得に影響する要因は何か 結果の一部を、「大腿骨近位部骨折で手術を受けた高齢者の歩行再獲得に影響を及ぼす要因に関する文献検討」として学会誌へ投稿中である。また、先の申請者らの研究において得られた結果をまとめ、「周術期にある大腿骨近位部骨折高齢者の低栄養の実態」「大腿骨近位部骨折で手術を受けた認知症高齢者の低栄養の予防に向けて」「大腿骨近位部骨折で手術を受けた認知症高齢者の食支援における課題」をテーマに学会発表を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の文献レビューより、調査項目を以下のように選定した。 【属性】1.基本属性(年齢、性別、入院前の居所、退院後の居所)、2.大腿骨近位部骨折の入院経過(受傷原因、診断名、術式、入院日、手術日、退院日、疼痛の程度〈スケールを使用〉、鎮痛剤使用状況、せん妄発症の有無と期間、身体拘束の有無と期間)、3.認知機能(認知症の原因疾患、認知症の重症度〈MMSE〉)、4.日常生活動作(Baethel Index、FIM) 【歩行状態】1.機能訓練の状況〈リハビリ記録〉(平行棒での歩行訓練開始日、歩行器での歩行訓練開始日、杖での歩行訓練開始日、独歩での歩行訓練開始日〈それぞれの開始日〉、荷重の状況〈荷重の状況と日数〉、全荷重可となった日)、2.病棟での状況〈看護記録〉(食事の場所が車椅子になった日、膀胱留置カテーテルの抜去日、歩行器で排泄に行くようになった日、杖で排泄に行くようになった日) 【栄養状態】1.栄養スクリーニング(MNA-SF〈入院時〉)、2.栄養アセスメント(身体計測:身長、体重、下腿周囲長)、血液検査:血清アルブミン、総コレステロール、リンパ球、CRP)、3.食事摂取状況(食事のエネルギー量、食事摂取量、栄養補助食品) 今後は、令和4年度のパイロットスタディの実施に向け、臨床家を含む専門家会議により、調査項目について収集可能なデータか、不足している項目はないかを検討し、内的妥当性を高める。COVID-19感染拡大に伴い、研究者の医療施設への訪問が制限される可能性があるため、研究フィールドで勤務する研究協力者を十分に確保できるよう調整を図りながら、データ収集を行う。データ収集を行う際には、簡便にデータを入力できるよう調査項目のフォーマットを作成する。 データ収集後は、分析結果をもとに疫学調査へと発展させるためのさらなる調査項目の選定を実施する。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大の影響を受け、参加予定であった学会がWeb開催に変更となったため旅費が発生しなかった。また、同様の理由により高齢者施設や医療現場がひっ迫しているために専門家会議を開催することができなかったため謝金が発生しなかった。 次年度使用額は、次年度にオンラインでの会議を企画し専門家会議を開催するとともに、COVID-19感染拡大による影響下でも研究を進めることができるよう研究フィールドの研究協力者の協力体制を十分に確保し、謝金として執行することを計画している。 また、次年度の助成金は、当初の計画通り執行する予定である。
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Research Products
(8 results)