2023 Fiscal Year Research-status Report
医療従事者に感染リスクの高い疥癬の迅速診断法の開発-ベッドサイド診断への応用-
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21K11132
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
青山 幾子 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (90332452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 正大 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (20547533)
池森 亮 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 研究員 (90827255)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 疥癬 / POCT / 抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
疥癬は、ヒゼンダニが皮膚の角質層に寄生して起こる皮膚疾患で、患者との接触により人から人へ感染伝播するため、施設内の同室者や看護や介護に携わる医療従事者に感染を引き起こすリスクが大きい感染症である。近年わが国では、病院、高齢者施設、養護施設などで集団発生の事例が増加している。疥癬はヒゼンダニを退治すれば治癒する疾患であり、疥癬治療薬も保険適応のものが増えたが、治療のためには疥癬の診断が必要である。現在、診断は皮疹部から虫体や虫卵を直接検出することにより行われているが、疥癬の診断には知識や経験が必要なために、見逃しケースが多く存在するため、臨床の現場からはこの疾患を迅速に診断できる臨床現場即時検査(POCT)の開発が求められている。 本研究では、ヒゼンダニ感染症に対するマウスモノクローナル抗体を作製し、臨床現場における診断精度の向上のための疥癬鑑別用抗原検出迅速診断キットの開発及び評価を行うことを目的としている。疥癬患者由来の皮膚、鱗屑等検体より単離した、ヒゼンダニ虫体、虫卵の乳剤を精製して抗原をマウスへ投与することにより免疫を誘導し、細胞融合法よりハイブリドーマの作出を行った。また、動物関連施設より動物の疥癬検体を入手し、皮膚・毛より単離したイヌセンコウヒゼンダニ虫体、虫卵の乳剤を精製した抗原をマウスへ投与して免疫を誘導し、ヒトのヒゼンダニとの共通抗原を認識するハイブリドーマの作出も実施している。なお、別の手法として、ヒゼンダニ抗原について組換えタンパク質の抗原としての使用も検討しており、目的のタンパク発現実験を実施している。これまでに得られているハイブリドーマは、残念ながら特異性については迅速診断キットへの応用には不十分な性状であったため、再度ハイブリドーマの作出を行っている状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査対応により遅れが生じたこと、また所属機関の移転のため、動物舎の稼働並びに動物実験の開始に制限があったこと、COVID-19流行以降、協力医療機関における疥癬患者の受診数が激減して疥癬検体の入手が困難となったため、免疫抗原やスクリーニングに使用できるサンプルが少なくなり、引き続き実施する予定であった抗体産生ハイブリドーマの作出を一部見合わせたことから、本研究計画に遅延が生じた。協力医療機関を追加するとともに、動物関連施設に依頼し、動物の疥癬検体の収集を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒゼンダニ抗原に対するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの作出を継続する。抗原については、ヒゼンダニ、センコウヒゼンダニ、組換えタンパク質を組み合わせて使用し、得られたモノクローナル抗体は抗原検出系の開発に利用する。また、ヒゼンダニ抗原に対するリアルタイムPCR法についても検討中であり、迅速診断法の有効性評価に用いる。
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Causes of Carryover |
COVID-19対応と、所属移転対応により研究計画に遅延が生じ、計画していた実験が実施できなかったため、予算を執行できなかった。タンパク質発現実験を速やかに遂行して遅れを取り戻すと共に、作製したハイブリドーマの解析を実施し、繰越し分と合わせた予算を使用する。
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