2023 Fiscal Year Research-status Report
嗜好的個人差を考慮した感情調整と認知機能向上との関連の解明
Project/Area Number |
21K11167
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
遠藤 加菜 広島大学, 医系科学研究科(保), 助教 (60584696)
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Project Period (FY) |
2022-02-01 – 2025-03-31
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Keywords | 感情 / 認知機能 / 嗅覚刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、嗅覚刺激により誘発される感情変動に伴う認知機能の変化を検討することである。初年度は、個人の快・不快評価に基づき、不快な嗅覚刺激によって認知ストループ課題の所要時間が対照臭よりも有意に増加することが明らかとなった。本年度は、更に個人的嗜好差のある嗅覚刺激により誘発される快・不快感情の変動と認知機能との関係を調査した。また、認知機能と不快感情との関連を脳血流動態から評価するため、不快臭刺激提示前・後における認知課題時の前頭前野脳血流データを取得した。 まず、個人的嗜好差のある嗅覚刺激としてピーチ臭を用いて快・不快感情誘発後の認知機能の変化を調査した。認知閾値濃度のピーチ臭、高濃度のピーチ臭、および対照臭をそれぞれ提示し、提示前・後におけるストループ課題の所要時間と誤答数を計測した。課題所要時間を嗅覚刺激における快・不快判定で群分けした結果、不快感情が誘発された群では課題所要時間が延長した。嗅覚刺激の不快度が高い程、課題所要時間の差は増加した。以上より、嗅覚刺激に伴う不快感情は認知機能を低下させる可能性が示唆された。 次に、不快な嗅覚刺激による認知パフォーマンス低下時には局所脳活動減少がみられるとの仮説の下、2チャンネル近赤外分光計を用いて背外側前頭前野の血流動態を評価した。靴下臭および対照臭それぞれの提示前・後にストループ課題を行った。実験中は左・右前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度(Oxy-Hb)を測定した。課題所要時間は靴下臭提示後に提示前よりも延長した。安静時を基準とした嗅覚刺激提示中のOxy-Hb変化量は、靴下臭において対照臭よりも有意に増加したが、嗅覚刺激提示後における認知課題中のOxy-Hb増加量は靴下臭と対照臭で差がなかった。嗅覚刺激に伴う不快感情によりストループ認知機能は低下したが、課題中の背外側前頭前野脳活動には影響を及ぼさないことが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感情の生理指標として取得した顔面皮膚血流動態データについて解析途中であるため、進捗はやや遅れていると判断した。しかし、脳血流動態を評価する実験は一部実施し、データを取得できたため引き続き併せて解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、認知課題遂行に関わる脳活動指標としての局所脳血流動態データ、および感情指標としての顔面皮膚血流データの解析を引き続き行う予定である。感情変動に関わる生理的指標および主観的感情度との関係を評価し、感情の包括的評価法を検証する。「個人的嗜好差のある嗅覚刺激により誘発される快・不快感情の変動と認知機能」の実験ついて、2022年度および2023年度実施分のデータを合わせて実験結果をまとめる。得られた研究成果について学会発表、論文執筆および投稿を目指す。「不快な嗅覚刺激に伴う認知機能の低下時における脳血流動態」の実験については、現時点で被験者数が7名に留まるため、既に得られたデータを精査し、今後の追加実験の必要性と実験方法の改善について検討する。
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Causes of Carryover |
必要な経費を使用したが、当初予定していた被験者数の削減があったため、謝礼等の支出が計画を下回り、次年度使用額が生じた。次年度は、データ解析の結果に応じて追加実験を行い、繰越額と2024年度研究費とを合わせて、実験消耗品や謝礼等の費用とする。また、研究成果発表のための学会参加費および旅費として使用予定である。
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