2021 Fiscal Year Research-status Report
脊髄損傷者のための歩行再建ロボット使用時の歩行器操作練習支援システムの開発
Project/Area Number |
21K11178
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
田辺 茂雄 藤田医科大学, 保健学研究科, 准教授 (50398632)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 総市朗 藤田医科大学, 保健学研究科, 講師 (90754705)
井伊 卓真 藤田医科大学, 保健衛生学部, 助教 (50815074)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / ロボット / リハビリテーション / 歩行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,脊髄損傷による対麻痺者(両下肢麻痺者)の歩行再建を目的に開発された,装着型歩行支援ロボットWearable Power-Assist Locomotor(WPAL)を用いた歩行時における,歩行器操作の練習を支援するシステムの開発である. 昨年度(2021年度)は,WPALを用いた歩行時における,歩行器を押し出す時期に歩行速度が与える影響について,予備的な検討を進めた.対象は健常成人とし,いずれもWPALでの歩行経験が十分にある者とした.WPALの歩行関連パラメータは,実際の脊髄損傷者の設定値を参考に,6条件設定した(ストライド長:30cmと50cmの2条件,遊脚期/両脚支持期の時間組み合わせ:0.8秒/0.4秒,1.0秒/0.5秒,1.2秒/0.6秒の3条件).対象者に各条件での歩行練習を十分に行わせた後,計測を行った.計測では,足底接地時期および歩行器と被験者の距離を経時的に収録した.解析手順としてはまず,足底接地時期を用いて,主要な指標となる歩行器と被験者の距離データを1歩行周期ごとに抽出した.その後,リサンプリングによって時間軸の正規化を行い,各被験者の1歩行周期における距離変化の平均波形を算出した.最後に,歩行器と被験者が離れ始めた時期を被験者が歩行器を押し出した時期と定義し,歩行周期のどの時期に歩行器を押し出しているかを算出した.結果として,歩行器を押し出す時期に対する歩行速度の影響について,3名中2名では,最も遅い歩行速度条件と最も速い歩行速度条件を比較して,歩行器を押し出す時期に5-12%程度の変化を認め,歩行速度が速い方が押し出す時期が遅い傾向であった.残り1名では一様な傾向を認めなかった. 今年度(2022年度)は被験者数を増やし,これらの傾向についてより詳細に検討を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,脊髄損傷による対麻痺者(両下肢麻痺者)の歩行再建を目的に開発された,装着型歩行支援ロボットWearable Power-Assist Locomotor(WPAL)を用いた歩行時における,歩行器操作の練習を支援するシステムの開発である. 研究計画としてはまず,歩行器を押し出す時期に歩行速度が与える影響について検討する.次に,歩行器を押し出すべき時期を伝える練習支援システムを構築する.最後に,練習支援システムを使用した際の,歩行器操作の習熟過程を計測することによる,提案システムの有用性の検討を行う. 昨年度(2021年度)は,予備的な検討として,レーザ式変位計(測距計)を用いて,歩行器と被験者との距離を計測した.歩行器と被験者の距離が離れ始めた時期を被験者が歩行器を押し出した時期と定義し,歩行速度による影響を検討した.今後は,歩行速度による影響について,より詳細に検討を行いつつ,並行して歩行器を押し出す時期を伝える手法について検討を行う予定である.具体的には,「歩行を押し出す時期に歩行速度が与える影響」を考慮した,PCスピーカ等用いた適切な時期を提示するプログラムを作成する.プログラムの試作後は,健常者を対象として探索的な実験を行い,聴覚提示での指示理解が困難な場合は,WPAL歩行器に照明を追加設置して,視覚提示等を行う手法も検討する.歩行器を押し出す時期の提示による練習支援システムの構築後は,本研究の中心的な課題である,歩行器操作の習熟に対する練習支援システムの有用性の検討を行う.いずれも対象者の安全を十分に確保して実施する.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度(2021年度)は,WPALを用いた歩行時における,歩行器を押し出す時期に歩行速度が与える影響について,予備的な検討を行った.本研究全体の具体的な目的は下記の3項目である. 1)レーザ式変位計(測距計)を用いて,歩行器と被験者の体幹との距離を計測する.その距離が離れ始めた時期を被験者が歩行器を押し出す時期とし,歩行器を押し出す時期に歩行速度がどのような影響をもたらすのかを明らかにする. 2)被験者に歩行器を押し出すべき時期を提示するシステムを構築する.時期の提示には聴覚提示や視覚提示を用い,Visual Analogue Scale(VAS)などで,その伝わりやすさや,臨床現場での使いやすさ等を評価し,効果的な練習支援システムについて検討を行う. 3)WPALを用いた歩行の未習熟者に対して,2)で構築した練習支援システムを用い,歩行器操作の習熟に対する有用性を検討する.主要な評価指標は,歩行器を押し出すべき時期と,実際に押し出された時期の差とし,練習支援システムを用いた群と用いない群での比較検討を行う. 今年度(2022年度)は,昨年度(2021年度)に続く1)の継続的な検討,および2)の予備的検討を行う予定である.主な購入物品としては,聴覚に対する提示を行うための各種スピーカ,視覚に対する提示を行うための各種照明,画像および動画解析ソフトウェアを予定している.その他,センサの固定用器具などの実験備品(消耗品)については,研究の進捗に伴い,さらなる改良が必要となった際に購入を検討する.
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