2022 Fiscal Year Research-status Report
腎に発現するTRPチャネルの温熱プレコンディショニングに対する役割
Project/Area Number |
21K11186
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Research Institution | Kumamoto Health Science University |
Principal Investigator |
岩下 佳弘 熊本保健科学大学, 保健科学部, 准教授 (70623510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 孝成 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (00393356)
飯山 準一 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (00398299)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 全身温熱刺激 / TRPV4 / heat shock protein |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】我々は、マウスに対するmild systemic thermal preconditioning(MSTP)がシスプラチン腎障害を軽減することを確認した。MSTPの作用機序を解明するため、35-40℃の温度を受容するTRPV4に着目し検討を行った。【方法・結果】①ラット近位尿細管細胞(NRK52E)のTRPV4を薬理学的に阻害し、MSTPの細胞保護効果への影響を確認した。2022年度は新たにアポトーシス関連蛋白質(cleaved caspase3)を評価した。MSTPはシスプラチンによるcleaved caspase3を有意に抑制したが、この効果はTRPV4阻害剤により有意に減弱した(p<0.01)。②MSTPプロトコールを検討し、マウス腎においてTRPV4がMSTPの熱受容に関与するかを、熱ショック蛋白質(HSP27)を評価して確認した。MSTPによるHSP27の有意な発現増加はTRPV4の阻害により抑制された。また、TRPV4阻害剤の投与により、血管拡張関連蛋白(eNOS)の恒常的な発現が有意に減少した(p<0.05)。【展望】2022度までにラット近位尿細管細胞において、MSTPの保護効果および熱受容にTRPV4が関与することを確認した。2023年度は、マウス腎におけるTRPV4のMSTPによる腎障害軽減効果に果たす役割を検討するために引き続き、マウスにおける温熱刺激応答に対する温度受容体TRPV4チャネルの役割の検討を行う。また、細胞実験において薬理学的阻害のみならずHsp27などのノックダウンNRK52E細胞を作成し、MSTPによる細胞保護効果への影響について再確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度の実験目標は以下の4つであり、3/4を達成した段階にある。 ①シスプラチン誘発性腎障害モデルマウスの作成(達成)、②全身温熱プレコンディショニング(MSTP)のプロトコル作成(達成)、③MSTPに対する温度受容体TRPV4チャネルの役割を検討(達成)、④MSTPによるシスプラチン誘発性腎障害の細胞保護効果に対するTRPV4の役割を検討(進行中)。以上より、目標達成度は75%で、「目標より遅れいているが、進展はみられる状態」と判断している。目標①の実験において時間を要した。投与量の決定後に行った実験で、当初よりも非常に強い腎障害を示したためである。原因として、実験期間中に動物飼育室の空調故障に伴う環境温の上昇があった。環境音の急激な変化によるマウスへのストレスがシスプラチン感受性を増大させた可能性がある。そのため、シスプラチン濃度決定に時間を要し、実験の遅れにつながった。
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Strategy for Future Research Activity |
動物飼育室の問題は解決済みである。今後、調整したシスプラチン濃度でMSTPによる腎保護効果をマウスを用いた実験で確認していく。しかしながら、遠赤外線加温装置でマウス直腸温の測定は麻酔下で実施しており、温度設定には再調整が必要になる可能性も考慮しておく。
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Causes of Carryover |
動物飼育室の換気修理期間により実験動物の購入ができず、実験がやや遅れたことが主な理由と考えている。現在はその問題も解決しており、2023年度は遅れている実験に早々に取り組む予定であり、また国際学会や全国学会への参加、および関連論文投稿(準備中)が予定されており計画通りに使用する予定である(消耗品費:350,000、学会参加旅費等:300,000、論文投稿:100,000)。
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Research Products
(3 results)