2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of objective diagnostic methods for effective treatment of neuropathic pain
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21K11210
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Research Institution | National Institute for Minamata Disease |
Principal Investigator |
中村 政明 国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 部長 (50399672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 健太郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (60806488)
衛藤 誠二 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (70295244)
三浦 陽子 国立水俣病総合研究センター, その他部局等, その他 (70785732)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 / 経頭蓋磁気刺激 / 4連発磁気刺激 / 脳磁図 / 感覚ゲーティング |
Outline of Annual Research Achievements |
神経障害性疼痛は、神経、脊髄、または脳の損傷や機能障害によって起こる痛みで、本邦では600万人が保有していると推定されている。神経障害性疼痛の病変部位の特定はしばしば困難であることに加えて、疼痛は患者の持つ内的経験であるため、疼痛の評価は主観的評価となりやすく、客観的評価が困難であることが、治療研究の大きな妨げになっている。 これまで申請者らは脳の活動に伴って発生している微弱な磁場の測定により脳活動を推定できる脳磁図 (Magnetoencephalography, MEG) を用いて、体性感覚誘発脳磁場 (somatosensory evoked magnetic fields, SEF) や感覚機能の伝播、第一次体性感覚野のγ活動を解析することで、感覚野の機能や神経障害性疼痛の病変部位に関する多くの情報が得られるようになってきている。 また、疼痛のコントロールはしばしば難渋するが、近年運動野への反復経頭蓋磁気刺激 (repetitive Transcranial Magnetic Stimulation, rTMS) の有用性が報告されている。rTMSは短期間で治療効果が得られることから、疼痛の治療効果のバイオマーカーを探索するには最適の治療法と考えられる。 本研究では、脳磁図を含めた神経生理学検査を行うことで、神経障害性疼痛患者の感覚野の機能異常を明らかにするとともに、神経障害性疼痛に対するrTMSの治療効果(感覚野の機能変化)を客観的に評価するバイオマーカーの探索を行う。本研究により、バイオマーカーが同定されれば、疼痛の治療効果を迅速かつ正確に評価可能になるため、神経障害性疼痛の治療研究に大きく貢献することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍で被験者の確保が困難なため、治療研究としては、発症4年目の左被殻出血後遺症で顔面を含む右半身の疼痛を呈する50歳代の男性患者1名に対して、左運動野に10HzのrTMSを行った。主要評価項目であるVASは治療後に軽度の低下(9.83→ 9.3)しか認められなかった。副次項目では、疼痛の質を評価するSF-MPQ2では治療前では疼痛の質は神経障害性疼痛が主体で、神経障害性疼痛のスコアは経頭蓋磁気刺激で軽減し(46→30)、治療終了4週後には悪化傾向(30→42)が見られた。うつの指標であるBDIではスコアの改善(5→3)を認め、PGICスコアは2で治療に対する満足が認められた。脳磁図を用いた感覚ゲーティングの検討では、罹患側の右手刺激の場合のみgating ratioの低下を認めた。以上の検討から、本症例では主要評価項目であるVASでは改善を認めなかったが、副次項目で改善を認めたことから、磁気刺激治療はある程度有効であったと考えられた。 脳磁図を用いて10HzのrTMS前後の感覚野の機能変化を3名で検討したところ、rTMS後にgating ratioの有意な低下が認められた。 また、経頭蓋磁気刺激の有害事象を検討するために、予備検討としてスタッフ5名とボランティア4名に対して、3種類のコイル(ダブルコーンコイル、8の字コイル、4連発磁気刺激(QPS))と2種類の刺激頻度(10Hz、20Hz)を変えて実施した。その結果、被験者への負担を軽減するには、8の字コイルを用いた10Hzの経頭蓋磁気刺激かQPSを行うのが適切と考えられた。 コロナ禍で患者の確保が困難なため研究が当初の予定より遅れているのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究では、磁気刺激治療の方法として、これまで有効性が報告されている10HzのrTMSを行うことにしていた。近年QPSが従来のrTMSより効率的に神経修飾を引き起こすことが報告され、治療への応用が期待されているが、神経障害性疼痛に対する治療研究はこれまでに行われていない。そこで、次年度はコロナ禍で被験者の確保が困難な状況を考慮して、①脳磁図を用いて、健常者10名で磁気刺激(10Hz rTMSおよびQPS)前後の感覚野の機能変化(N20mの振幅および再現性、感覚野のゲーティング)を比較検討する、②神経障害性疼痛の患者5名に対するQPSの治療効果(VAS、脳磁図所見、SF-MPQ2、BDI、PGICで判定)を評価するために、10HzのrTMSとの比較検討を行う予定である。
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