2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of functional reconstruction in neonatal white matter injury model via oligodendrocyte progenitor cell transplant and exercise
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21K11222
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
田尻 直輝 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (80782119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飛田 秀樹 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (00305525)
安原 隆雄 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (50457214)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 新生仔低酸素虚血性白質障害 / オリゴデンドロサイト前駆細胞移植 / サイクロスポリンA / 運動機能 / ミエリン形成 / 神経細胞樹状突起 / シナプス / 運動刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
在胎32週以下の早産児に生じる脳性麻痺では、脳室周囲白質軟化症(PVL)が多い。発達段階の中枢神経系の未熟性に、低酸素虚血(H-I)が加わり、脳室周囲の白質が障害されることが、PVLの基本病態であると考えられている。PVLの病態は、H-Iに対する未熟脳の反応性と正常な脳発達の要素とが複雑に混在している。胎児脳におけるオリゴデンドロサイトの分化段階で、ヒトにおける在胎28週から32週は、ラットでは生後3日齢の脳内環境に相当する。この時期にH-Iを呈すると、分化途上のオリゴデンドロサイト後期前駆細胞(pre-OL)は選択的に障害を受けやすい。つまり、pre-OLの細胞死や分化抑制が起き、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の成熟障害が生じることで、PVLの危険性が高まることが知られている。髄鞘を形成するオリゴデンドロサイトは、脳高次機能の発現に重要な役割を担い、pre-OL虚血障害による髄鞘形成障害は、運動機能と認知機能の生後発達と関連している。近年の周産期医療の進歩により、脳組織欠損(cyst)を認める重症型PVLは激減したが、MRIでも明らかなcystを認めない軽症型PVLが増加している。軽症型PVLでは、運動機能障害とともに発育後の認知機能障害も臨床上の大きな課題となっており、未だに根本的治療法は存在しない。 我々は、軽症型PVLの病態を良く反映する新生児低酸素虚血性白質障害(NWMI)モデルラットを確立し、PVLの根本的治療法の開発を目指している。本研究では、この疾患モデル動物を用いて、外部からOPCを補充することで、運動機能の改善に繋がるかどうか(実験1)、移植したOPCが脳内で、生存・生着・分化・成熟するかどうか(実験2)を検証した。また、発育期のリハビリテーション(以下、リハビリ)が成熟後の運動機能にどのような影響を与えるか(実験3)についても焦点を当てている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生後3日齢のWistar系雄ラットの右総頸動脈閉塞及び6%低酸素処置によりNWMIモデル動物を作製した。モデル作製から2日後に、緑色蛍光タンパク質(GFP)標識したOPCを脳梁部へ移植し、免疫抑制剤(サイクロスポリンA)の非投与下において、コントロール群(OPC移植なし)と比較して、4週と8週目において、有意な行動学的改善を示した。また、移植したOPCが、脳内で8週目まで生着・生存していることも確認している。しかしながら、4週目と比較して、8週目では移植細胞数の減少が認められた。これまでに、様々な幹細胞を用いた細胞移植に関する研究を実施してきたが、移植細胞の脳内での生着・成熟が解決すべき最優先課題であることが分かった。この課題を解決するため、移植OPCの生存細胞増加と運動機能のさらなる回復を目的とし、NWMIモデルラットへのOPC移植における免疫抑制剤投与による効果を検討した。同様のプロトコールで、2週後に免疫抑制剤を毎日経口投与し、4週と8週間後に行動学的及び免疫組織学的評価を行った。その結果、免疫抑制剤投与群では、非投与群と比較して、4週と8週目において、有意な行動学的改善は認められなかったが、回復傾向を示している。面白いことに、免疫抑制剤投与群では、非投与群と比較して、Olig2/GFP陽性細胞が脳梁や運動皮質領域において8週目でも有意に生着・生存しており、ミエリン様構造の形成も確認された。また、免疫抑制剤投与群でCC1/GFP陽性細胞数が、4週目において増加傾向にあり、移植したOPCが分化・成熟していることが認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
NWMIモデルラットにおいて、本研究室から明らかになっていることは、①後肢運動機能障害、②障害側の白質でのpreOLの減少、③皮質運動野(第2・3層)でのミエリン形成異常、④神経細胞数の減少なし、⑤皮質運動野(第2・3層)の神経細胞樹状突起の形態変化、⑥皮質運動野の非薄化、⑦運動マップの変化などが挙げられる。今後の研究推進方策として、OPC移植によって、皮質運動野(第2・3層)の神経細胞樹状突起の形態変化に影響を与えているか、ゴルジ染色法を用いて確認したい。仮説として、OPC移植により、皮質運動野(第2・3層)の神経細胞樹状突起の形態変化が正常化していれば、それが機能改善に繋がっている可能性が考えられる。また、神経細胞樹状突起の形態変化が認められれば、シナプスにも変化があることが予想されるため、VGLUT1(グルタミン作動性神経終末/シナプスのマーカー)を用いて検討する。加えて、脳透明化技術を用いて、移植OPCが機能改善にどのように結びついているのかをより詳細に検証していく。さらに、移植されたOPCが生存・分化が起こるに当たり、脳内でどのような因子が機能や組織改善に関連しているのかを行動学的・組織学的・分子生物学的・電気生理学的手法などを用いて(in vitro含む)網羅的に解析していく予定である。また、発育期のリハビリが成熟後の運動機能にどのような影響を与えるのか、生後5日齢のNWMIモデルの脳梁部へGFP標識したOPCを移植し、離乳時期である生後25日から回転カゴを用いた自発運動を開始させる。運動刺激で移植したOPCの生着・生存及び分化の促進が可能か否かについても検証する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、当初の研究計画通りに、全て順調に実施できたわけではなかったため、次年度使用額が発生してしまった次第である。 今後の研究の推進方策に示したように、当該年度で得られた結果を元に、次年度でさらなる検討・解析を進めていきたい。
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Research Products
(4 results)