2021 Fiscal Year Research-status Report
がん患者に対する運動器至適包括管理の基盤確立を目指した臨床研究
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21K11247
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
緒方 直史 帝京大学, 医学部, 教授 (10361495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 博隆 帝京大学, 医学部, 教授 (20345218)
本田 祐士 帝京大学, 医学部, 助教 (40734942)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | がんのロコモティブシンドローム / 移動機能 / がん患者 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん患者でどれだけ運動器の機能が落ち、がん治療に伴う有害事象などが、がん患者の運動器機能にどのような影響をおよぼすかを調べたがん大規模なコホート研究は未だ履行されていないことから、がん患者におけるロコモティブシンドローム(がんロコモ)に着目し、がん患者の運動器の機能評価を行う大規模コホート研究を令和3年より開始した。 令和3年度は、当院で入院治療を行う全てのがん患者のうち、入院中のリハビリテーション処方があった成人のがん患者全てを対象としてエントリーを行い、約250例の患者さんをエントリーすることができた。追跡期間2年間のコホート研究のエントリーを行い、入院時のデータ回収が終了した。がん患者126例が詳細に解析でき、その平均年齢65.3歳であった。がんの内訳は、乳がんが一番多く24%、胃がん16%、肺がん、前立せんがんが9%、ぼうこうがん7%、食道がんとすい臓がんが6%であった。すべての患者でロコモ度テストである立ち上がりテスト、2ステップテスト、ロコモ25を計測した。これらのがん患者のロコモ有病率は95.2%、ロコモ度2以上は71.4%であり、ロコモ罹患率が非常に高いことが明らかとなり、がん患者の移動能力は非常に劣っている可能性が示唆された。特に立ち上がりテストでは、70歳代前半の中央値が5であるのに対し、がん患者の50歳代の中央値が5であり、がん患者の移動能力は50歳未満から低下しており、2ステップテストでは、すべてのがん患者の年齢層で低下し、50歳未満でもすでにロコモに陥っていることが明らかとなった。がん患者では、早期から筋力低下が生じ移動能が低下していることから、がん患者では若年でも下肢の筋力訓練が重要であり、がん患者での若年層からの移動機能評価が重要である可能性が明らかとなってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、約250例ほどのがん患者のエントリーを行うことができた。ほとんどの患者でロコモ度テストが行われ、血算・生化学的血液検査、SF8、体重変化、食事量、骨粗鬆症の有無、がん情報(がん種、臓器転移の有無、骨転移の有無、化学療法の有無(開始日、評価時の継続の有無)、ホルモン療法の有無、手術の有無、手術合併症の有無)を回収でき、さらにリハビリテーション評価として、ADL評価(FIM)、体組成計測、握力、下肢筋力測定(ロコモスキャン、ミュータス)、活動度評価(加速度計)、歩行能評価(下肢荷重計、三次元動作分析システム:ストライド、歩幅、歩隔、歩行角度、つま先角度、スピード、歩調(ケーデンス)、歩行周期)、片脚立位時間、TUG (touch up and go) test、6分間歩行などの詳細なデータを回収することができ、現在解析も行っている。 各データを退院後3か月ごとに回収する予定であったが、患者の多くはコロナウイルスの蔓延による来院頻度の減少、本人の体調や仕事などの都合で3か月ごとの来院が困難であることを訴えることから、退院後3か月のデータ回収は中止し、退院後6か月もしくは一年後のデータを回収することとした。現在エントリーしたほとんどの患者での1年後のデータを回収することは可能となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度も新規のがん患者の運動器機能を評価するうえで、コホート研究へのエントリー数を増やしていく。。1年間に800例のエントリーを目指していたが、令和3年は250例ほどであった。コロナ感染症の拡大により、病院への来院を減らすなどの現象があり、目標より数値は減少している。コロナ感染症の感染者数はワクチン接種などにより減少傾向であり、今後はエントリー数が増えることが見込まれる。3年間1440例の対象者数は難しい可能性はあるが、残り2年間で500例以上の対象者を見込んでいる。また2年間で90%の追跡を目指していく。各種検査;ABI/PWV、血算・生化学的血液検査、画像検査(単純レントゲン、各がん腫特異的画像検査など)、アンケート調査(ロコモ25、QOL(SF8)、体重変化、食事量、骨粗鬆症の有無)、がん情報(がん種、臓器転移の有無、骨転移の有無、化学療法の有無(開始日、評価時の継続の有無)、ホルモン療法の有無、手術の有無、手術合併症の有無)などのデータは引き続き回収してく。ロコモ度調査のみならず、リハビリテーション評価(ADL評価、体組成計測、握力、下肢筋力測定、歩行周期、片脚立位時間、TUGtest、6分間歩行などのデータも引き続き回収する。ただし、退院後の来院頻度は減らし、退位後6か月、1年、2年後のデータ回収とする予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症まん延により、海外学会での成果発表が全く出来なかったため、旅費が大幅に減少している。国内の学会も多くが参加制限となり、旅費は全く計上していない。令和4年度はコロナ感染症が落ち着き、海外での学会参加が可能となることが考えられ、費用を持ち越し計上としている。また、体組成計なども追加購入が必要とならなかったため、来年度に持ち越しとしている。
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Research Products
(1 results)