2021 Fiscal Year Research-status Report
オクタン酸トリグリセリドを用いた呼吸不全カヘキシア包括的治療法の開発研究
Project/Area Number |
21K11264
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
松元 信弘 宮崎大学, 医学部, 助教 (70418838)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 呼吸不全カヘキシア / リハビリテーション / 経口栄養剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、慢性呼吸不全によって不可逆的に進行していく呼吸不全カヘキシアを対象として、経口栄養剤やリハビリテーションの処方を受けた患者で栄養状態や筋力の改善を評価することが目的である。 慢性呼吸不全とは慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの気道疾患、特発性肺線維症などの間質性肺疾患、気管支拡張症や非結核性抗酸菌症などの慢性気道感染症により、不可逆的に肺の解剖学的構造が破壊されガス交換能の著しい低下を来たし、慢性的な労作時、または安静時の呼吸困難を主な症状とする病態である。特に重症になってくると悪液質(カヘキシア)と呼ばれ、呼吸運動にも多くのエネルギーを要するようになり、IL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカイン産生による更なるエネルギー消費もあいまって著しいるいそうを来たす。このような患者では体重が減少することにより呼吸筋量も減少し、呼吸不全がさらに増悪していくなど悪循環を呈する。さらに呼吸不全カヘキシアを来した患者では、心機能や消化管蠕動なども低下しており、消化吸収能力の低下から著しい食思不振を呈する。このため必要なエネルギー摂取も困難であることが多く、加速度的に体重や筋肉量の減少が増悪していく。体重減少は慢性呼吸器疾患の予後に関連し、るいそうをきたした患者の予後は不良であることは良く知られている。本研究では、呼吸不全にため体重が減少している患者で経口栄養剤を処方された患者やリハビリテーションを処方された患者で体重や筋力、運動耐容能の改善を評価する。 令和3年度は体重変化、運動耐容能改善、除脂肪体重と握力の増加、栄養状態を評価する液性因子の変化を評価項目とする観察研究を立案し、倫理委員会へ申請を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、慢性呼吸不全によって不可逆的に進行していく呼吸不全カヘキシアの予防と進行抑制を目的に、摂食亢進、エネルギー同化、抗炎症、心血管保護など抗カヘキシア作用を有するグレリン産生を誘導するオクタン酸トリグリセリドを経口的に投与し、呼吸リハビリテーションとElectric Muscle Stimulation (EMS)による下肢筋力トレーニングを合わせたmultimodalityな新規治療の確立を目標としている。これに先立ち、経口栄養剤を投与した患者での臨床情報、呼吸リハビリテーションにEMSを取り入れた患者での臨床情報の取得が欠かせない。これらを目的とした臨床研究の準備が整えられており、本研究の進捗としてはおおむね順調と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後において重要なのは、いまだに続いている新型コロナウイルス肺炎蔓延の影響下でいかに多くの症例を臨床研究に登録できるかである。コロナ禍は医療機関における一般的な診療のみならず、多くの臨床研究の遂行に多大なる悪影響を及ぼしている。本研究への協力機関を増やしていくことで、コロナ禍の影響に対応していきたいと考える。
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Causes of Carryover |
本年度はコロナ禍の影響もあって、感染リスクを避けつつ、研究計画の立案を確実にするため、研究打ち合わせや研究発表に関する出張を行わず、ウェブ会議で代行できるものはZoomなどを利用してきた。このため、旅費への支出が少なく次年度使用額が生じる大きな要因となった。最近では学会への参加も現地への出張が増えてきており、次年度は研究打ち合わせや情報交換など必要な出張は積極的に行い、予算執行は確実に行う予定である。
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