筋由来の現象がもたらす運動類似効果と運動困難者のための筋増量法の確立

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 21K11276
• Research Institution: Seijoh University
• Principal Investigator: 大野 善隆 星城大学, リハビリテーション学部, 准教授 (80440808)
• Project Period (FY): 2021-04-01 – 2024-03-31
• Keywords: 細胞・組織 / 骨格筋 / 筋肥大

Outline of Annual Research Achievements

骨格筋量の増加（筋萎縮の予防・回復）は健康寿命を延伸すると考えられている。筋増量法の代表は運動であるが、運動困難者のための新たな筋増量法が望まれる。本研究では、運動の影響を除外するために骨格筋培養細胞（C2C12）を対象に使用する。筋由来の現象である熱産生と乳酸分泌に着目し、筋の同化作用を促進する安全な温熱刺激条件、乳酸刺激条件を検討する。生体内ではこれらの現象が相互に作用すると考えられるため、温熱刺激と乳酸刺激の組合せ刺激による筋の同化応答への影響を検討する。
本研究は３年計画で実施され、令和３年度はその１年目に当たる。本年度の検討項目は、骨格筋の同化作用を促進する安全な温熱刺激条件とした。実験対象にはC2C12細胞を用いた。分化期の筋細胞を複数の温熱刺激条件で培養し、筋の同化作用を促進する温熱刺激条件を調べた。先行研究を参考に温度条件を設定し、通常の培養温度より高い温度に設定したCO2インキュベーター内で細胞を培養することで、温熱刺激を負荷した。温熱刺激時間も複数設定し、その影響を検討した。筋の同化作用の評価指標には、筋管細胞の直径の変化を用いた。先行研究と同様の温度条件は筋管細胞の直径を増加させることを確認した。さらに、先行研究より低い加温条件も筋管細胞の直径を増加させた。また、温熱刺激時間がある程度以上長くなると、筋管細胞の直径の増加が抑制された。本研究で用いた温熱刺激は筋の同化作用を促進するが、その至適条件には刺激時間（刺激量）が関与することが示唆された。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本年度の検討項目は、骨格筋の同化作用を促進する安全な温熱刺激条件である。これまでの検討により、先行研究と同様の温度条件およびより低い温度条件が筋の同化作用を促進するかを、筋管細胞の直径を指標に確認した。その結果、本研究で用いた温熱刺激条件は筋管細胞の直径を増加させることを確認した。しかし、新型コロナウイルス感染拡大により、実験時間の確保が困難になり、消耗品の納期遅延も生じた。そのため、本研究の温熱刺激条件がタンパク質代謝に作用する細胞内シグナルに及ぼす影響、そのメカニズムの解明には至っていない。以上より、本研究課題はやや遅れている。

Strategy for Future Research Activity

令和４年度の検討項目は、骨格筋の同化作用を促進する安全な乳酸刺激条件とする。令和３年度に引き続き、温熱刺激条件も検討する。運動の影響を除外するために骨格筋培養細胞（C2C12）を対象に使用し、分化期の筋細胞に乳酸ナトリウム（乳酸）を添加する。また、分化期の筋細胞に温熱刺激を負荷する。複数の乳酸刺激条件および温熱刺激条件で筋細胞を培養し、筋の同化作用を促進する刺激条件を調べる。筋の同化作用の評価指標には、筋細胞の量的変化またはタンパク質代謝に作用する細胞内シグナルの変化を用いる。そして、筋の同化作用を促進する安全な乳酸刺激条件および温熱刺激条件について、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。

Causes of Carryover

新型コロナウイルス感染拡大により、当初計画していた出張（研究成果の学会発表）を中止した。また、購入予定の物品の一部について、納期が遅れて年度内に購入できなかった。このために次年度使用額が生じた。今後、物品購入や成果発表の費用に充てる予定である。