2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K11278
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Research Institution | Baika Women's University |
Principal Investigator |
深見 秀之 梅花女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30382625)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 嚥下 / 嗅覚 / 大脳皮質 / 咽頭部感覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
嚥下運動は脳上位中枢からの随意的要素と末梢からの感覚入力による反射を介した不随意的要素が嚥下中枢で統合され誘発される。そのため、嚥下運動誘発には口腔咽頭部の様々な感覚が重要な役割を果たすことがこれまでに示されてきた。しかし、飲食物に含まれる匂い物質が口腔を経て、後鼻口より鼻腔に入り嗅覚受容体を刺激するretronasalな嗅覚(後鼻腔性嗅覚)の嚥下誘発への影響については十分に解っていない。 今年度、ヒトにおいて後鼻腔性嗅覚が嚥下に与える効果を調べた。健常若年被験者は直立座位にて椅子に座った状態で口腔側から咽頭部へ直径1.0mmのシリコンチューブを通し、それを通じて0.3M NaCl溶液および匂い刺激としてバニラエッセンスを加えた0.3M NaCl溶液を注入した。被験者には刺激液を注入している間、出来るだけ繰り返し嚥下するよう指示した。各被験者の嚥下はオトガイ下の表面筋電図記録にて行い、5回の嚥下間隔時間の平均値(SI)を、嚥下の能力の指標とした。 これまでの研究で、NaCl溶液刺激ではSIが延長し、嚥下に有効な感覚刺激とはならないことがわかっている。バニラエッセンスを加えた0.3M NaCl溶液刺激はNaCl溶液に比べSIを短縮させた。咽頭部に注入したバニラエッセンスを加えた0.3M NaCl溶液より揮発した匂い物質は後鼻腔性に嗅覚刺激となりSIを短縮させたとかんがえられる。嗅覚は脳幹を経て大脳皮質に感覚情報が至る咽頭部の感覚と異なり、嗅上皮にある嗅細胞が嗅球を経て直接大脳に入力することが知られている。後鼻腔性嗅覚は脳上位中枢から嚥下中枢への入力を活性化し嚥下誘発を促進させると考えられる。
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