2021 Fiscal Year Research-status Report
xR環境でのアーチェリーの忠実な再現のための弓と身体の相関モデルに関する研究
Project/Area Number |
21K11345
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
安本 匡佑 神奈川工科大学, 情報学部, 准教授 (00609448)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生体計測 / HCI |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアーチェリー、アーチェリータグ、弓道等の弓を使用し、広い空間が必要なスポーツを、室内の限られた空間においても本質的に同等、あるいはそれ以上の体験を可能にすることが目的である。矢をつがえて弓を撃つことは強烈なリアリティが存在するが、矢を発射し、それを限られた広さの室内で安全に再現することは困難である。故にそのリアリティのもたらす身体への影響を計測し、矢を使わずにそれを別の方法でいかにして実現しうるのかを複数同期した生体計測を行い身体とデバイスの相互関係を探りながら模索する。第一段階として身体と弓の相互の情報を同時にリアルタイムに視覚化するシステムを構築し解析プロセスを容易にするとともに、アスリートに対してのフィードバックを行えるようにする。次に精度を維持し、矢を使わずに代替の刺激や機構でリアリティを感じさせることができるのかを、弓デバイスの制作、実験、検証を繰り返し行い探究する。本研究は、これまで曖昧かつ主観的であったインターフェースの評価を客観的に可能とするため、本物の道具と、制作したUIデバイスを複数の生体計測や慣性センサ、高速撮影による分析で数値データを出すことであり、それを基にすることで今後のUI開発に役立てる。スポーツ科学に軸足を置きながら身体性を重視し、xR(VR/AR/MR)、HCI、生体工学の複数の分野にわたる研究である。 当該年度に実施した研究の成果は第一段階をほぼ予定通り達成しており、リアルタイムでの射手のモーション、筋電情報、弓のグリップ部分にかかる加速度、上下のリムの歪の値が同時に視覚化した。実際のアスリートに対する実験はコロナ化で思うように進んでいないため、それ以外の部分を優先して実施しており、その研究実績に関しては今後国内外の学会等で発表を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究実施計画に基づき以下の4点の研究を行った。 まず、矢を使用せずに弓を空射ちした際に破損するか否かに関しては、弓を固定し計測できる装置を拡張し、弦を引くトリガーに電気的に発射を検知する装置を制作し、射撃の瞬間から2秒間弓の上下部の歪、グリップにかかる加速度を自動的に計測ができるようにし、その結果を分析した。同時に高速撮影を行い、弓の挙動の違いを比較検討した。これらの実験から、矢を使用しないことで射撃の振動が収まるまでの時間が長くなること、グリップにかかる加速度が大きくなることが確認されたが、12ポンドの弱いリムの場合は1000回の射撃で破損は確認されず、十分に安全であり破損することはないことが確かめられた。 次に弦の引き量、弦にかかる力、矢にかかる力を明らかにすることに関しては現在研究を進めている最中であり、現時点で弦の引き量と弦にかかる力の量は明らかになっており、矢を使用することのできる射撃装置も完成しているため、今後矢の飛距離と矢の速度の計測をすすめていく。 射撃時に弓にどのような力がかかるかに関しては、前述の電気トリガーとグリップ上部に取り付けた±16gが計測可能な慣性センサによって射撃ごとに自動計測および記録が可能なシステムの構築を行った。この結果から矢を使用しない場合と矢を使用する場合の比較を行い、3軸の加速度の波形の解析を行った。 UIデバイスの制作に関しては、センサ数を減らしてもDeeplearningにより同様の精度で弓の挙動を得られるようにするためのものだが、現在すでに3つとセンサ数が少なく、必ずしも必要ではないのではないかと検討している。センシングデバイス自体は小型軽量化が進んでおり、今後より適切な取り付け位置、弓型のデバイス自体の再構築を含めて研究開発を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、2年目は昨年度の計画から継続して実施する2点と新たに取り組む2点の計四 点を重点的に研究を進めていく予定である。 まず、引き続きUIデバイスの制作に関しては、これまでの知見を基に新たな形状の弓型デバイスのグリップ部分の制作を行い、そこに同様のセンサを取り付けられるようにしていく。計測のためだけではなく、実際にxR環境での使用、競技での使用が可能な強度をもったものにし、そこに複数のセンサを小型化して取り付けられるようにする。 次に弦の引き量、弦にかかる力、矢にかかる力に関しては、弦関連のものは終了しているため、実際に矢を使って屋外での射撃実験を行い、弦にかかる力と矢にかかる力の関係を明らかにする。 今年度の空の取り組みとしては、弦を引く位置と矢の方向を明らかにすることで、上下の歪ゲージの値の違いと矢をつがえた箇所の位置関係を基に、実際に矢を使った場合、それが矢の飛んでいく方向、速度、飛距離にどのような影響を与えるのかを明らかにする。 更に弓の違いや矢の有無で射手にかかる力の差異に関しては、重量、リムの強度、矢の有無のパラメータを変更し、射手に対してのモーションキャプチャ、筋電測定、グリップ部分にかかる加速度などからその影響を明らかにする。これらのデータを独立して測定を行うが、それらの比較検討が容易になるように、弓の各部位にかかる力やセンサの値と生体計測の値を同期して同時計測することで、より正確に弓と人の関係を数値的に明らかにする。
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Causes of Carryover |
購入したモーションキャプチャ用機材が予定額よりも安価になったため次年度使用額が発生した。次年度購入予定のモーションキャプチャ用のソフトウェアのライセンス料金が円安により値上げが予想されるため、翌年度の助成金と合わせてその費用に充てる予定である。
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