2022 Fiscal Year Research-status Report
積極的思考を育む競技体験ー防衛的悲観主義との関連ー
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21K11354
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
奥野 真由 久留米大学, その他部局等, 講師 (00633215)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 防衛的悲観主義 / 認知的方略 / アスリート / 競技スポーツ / 心理尺度の開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、防衛的悲観主義の認知的方略を用いているアスリートに着目し、競技場面における認知的方略とパフォーマンスの関係について明らかにすることを目的としている。防衛的悲観主義のアスリートは、将来の遂行において悲観的になることで、考えをめぐらせることや入念な準備を行い、その結果高い成績を維持しているという特徴を持つ。防衛的悲観主義者は、物事を悪い方に考えることで成功している適応的な悲観者であるとされている(Norem & Cantor,1986)。 これまでのアスリートを対象とした防衛的悲観主義に関する研究は、認知的方略のタイプを比較し、その特徴を明らかにすることを目的とした研究が大半であり、防衛的悲観主義の認知的方略とパフォーマンスとの関係については、未だ十分な実証的検証がなされていない。悲観的認知が高いパフォーマンス発揮につながるメカニズムを明らかにすることで、認知的方略の個人差を踏まえたアスリート支援や競技指導が可能となる点が、本研究の意義である。 2022年度は、アスリート版認知的方略尺度の開発に取り組んだ。予備調査として、国内外の既存の認知的方略尺度から精選した項目による尺度を作成し、大学生アスリートを対象にインターネットでの質問調査を実施した。その結果、競技スポーツ場面における認知的方略を的確に捉えられていないことが確認された。そこで次に、アスリートおよび心理サポート担当者を対象とした一対一の半構造化インタビューを実施し、尺度項目表現の精選を試みた。現在、インタビューから得られた結果をもとに尺度項目表現の修正に取り組んでいる。一連の研究成果を学会で発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画していた予備調査およびインタビュー調査は概ね順調に進んでいるものの、当初の研究計画よりやや遅れている。これは、2021年度に研究計画を変更したことが影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、前年度に引き続きアスリート版認知的方略尺度の開発に取り組む。尺度項目の内容を修正し、信頼性と妥当性を確認するための本調査を実施する。大学生アスリート(800名程度を予定)を対象に、インターネットでの質問調査を実施する計画である。加えて、認知的方略とパフォーマンスの因果モデルの検討と精緻化を目的とした調査として、インタビュー調査を実施する。対象は競技場面において防衛的悲観主義の認知的方略を用いている成人のアスリート(5名程度)、方略的楽観主義の認知的方略を用いている成人のアスリート(5名程度)とし、一対一での半構造化面接法を用いる。調査で得られた結果は国内の学会大会にて発表し、スポーツ心理学やスポーツ科学の研究者との議論を通じ、結果の信頼性と妥当性を高める。また、学術論文として学会誌へ投稿し、競技場面や研究場面で広く用いられるよう公表する。
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Causes of Carryover |
2022年度は、開発した尺度の信頼性と妥当性を確認するための本調査に着手することができなかったため、次年度使用額が生じた。2023年度は、本調査として800名程度を対象とした質問紙調査および一対一でのインタビュー調査を予定しており、そのための旅費や協力者への謝金として使用する計画である。また、得られた知見は、国内での学会大会で発表することや、学術誌へ投稿することを予定しており、そのための旅費や投稿料として使用する計画である。
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