2021 Fiscal Year Research-status Report
訪日外国人が見た近世日本のスポーツ ―幕末~明治初期の見聞録を中心に―
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21K11374
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
谷釜 尋徳 東洋大学, 法学部, 教授 (40527933)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アンベール / 武士 / 武術稽古 / 剣術 / 馬術 / 江戸 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、幕末~明治初期の訪日外国人が残した見聞録の収集を行った。その中で、特にスポーツ関連の記述が豊富な見聞録を史料として、過去の再構成を試みた。 具体的には、スイスの使節団代表として幕末期に日本を訪れたエメ・アンベールの見聞録『日本図絵』を手掛かりに、1863~1864年の江戸における武士の武術稽古について考察した。当該研究の概要は、以下のように整理することができる。 1.アンベールが見聞録の中で多くの印象を書き残したのが、武士の剣術稽古についてである。アンベールの記述からは、防具が発達した近世後期の剣術稽古の模様を知ることができた。彼が見た武士の剣術試合の記録は、外国人の客観的な視点からの観戦記として価値が高い。また、アンベールの著作に掲載された挿絵には、武士が神社の境内を道場として稽古に励む様子が描かれていた。 2.アンベールは、武士の馬術訓練を見聞し、騎乗する武士のフォームまでを詳細に記録した。江戸市中の流行を敏感に察知していた彼は、江戸市中で興行されていた曲馬という見世物についても書き残している。アンベールの記述は、武士階級による馬術訓練場の存在にまで及んでいた。とくに、武士の馬術稽古が庶民と交わる地域内で実施されていたことは、彼の眼を驚かせたようである。 3.アンベールの眼差しは、薙刀の稽古に励む女性の姿を捉えていた。この稽古は非公開で行われていたため、アンベールは女性の稽古姿を詳しく観察することはできなかったが、その見聞録は知られざる江戸の女性スポーツの一端を描写した貴重な証言である。 4.アンベールの見聞録は、日本側の史料と比較しても実情を反映していると考えてよい。そればかりか、アンベールの観察眼は日本人が当然の出来事として記録に残してこなかった事象も客観的に捉えている。このように、異国の文化を正確に書き留めたアンベールの知識欲は、特筆すべきであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、幕末~明治初期の訪日外国人の見聞録を多数収集することができた。見聞録の内訳は、日本語訳の文献のみならず、英語の原書も入手できている。 また、2021年度は、史料収集にとどまらず、エメ・アンベールの見聞録を分析して研究論文にまとめることもできたので、概ね順調に進展していると判断することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度と同じく、訪日外国人の見聞録の収集を継続する。 また、見聞録の中にみられるスポーツ関連の記述を抽出し、訪日外国人が近代以前の日本のスポーツをどのように客観視していたのかを特定する作業を実施したい。 研究成果を整理して、学会等での発表や、学術誌への投稿を行う予定である。
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