2022 Fiscal Year Research-status Report
心筋組織において運動が及ぼす解糖系酵素GAPDHのニトロ化シグナルへの影響
Project/Area Number |
21K11397
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
馬場 猛 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (80366450)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インスリン / 翻訳後修飾 / 2型糖尿病 / 心筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
血糖値制御システムの破綻による糖尿病の発症が、脳卒中や心臓病などの病態を誘発する主要因の一つであり、血糖値調節機構を解明することが非常に重要だと考えられる。これまでの本研究によって、ラット心筋由来のH9c2細胞株では、インスリン刺激依存的に解糖系酵素GAPDHがリン酸化修飾されるに先だってトリプトファンがニトロ化修飾され、酵素活性の亢進が引き起こされることを見出してきた。さらにこのニトロ化修飾は速やかに脱ニトロ化されていく。ニトロ化・脱ニトロ化に関与する分子の探索を行うために、EGFP融合-野生型GAPDHあるいはEGFP融合-変異型GAPDH(トリプトファンをフェニルアラニンに置換:Trp/Phe)を安定的に発現するように樹立したH9c2変異体細胞株に対してインスリン刺激し、各細胞溶解液を抗EGFP抗体を用いた免疫沈降後、電気泳動し、インスリン刺激後のEGFP融合-野生型GAPDHに強く結合していた分子量約40kDaの分子に着目した。プロテオーム解析による同定によって、この分子がH9c2細胞株にもともと内在しているGAPDHであることが明らかとなった。また、抗ニトロトリプトファン抗体および抗GAPDH抗体によるウエスタンブロットの結果からもEGFP融合-野生型GAPDHがインスリン刺激後、ニトロ化され、ニトロ化に伴って内在のGAPDHと会合することが確認された一方で、EGFP融合-変異型GAPDH(Trp/Phe)ではインスリン刺激に伴うニトロ化修飾および内在のGAPDHとの会合は検出されなかった。解糖系の反応の場はサイトゾルであり、GAPDHはサイトゾルで四量体を形成して解糖系酵素として機能することが知られているが、本研究によって得られた知見により、トリプトファンのニトロ化修飾が四量体形成にかかわっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新知見は得られているが、GAPDHのニトロ化・脱ニトロ化に関与する分子の探索を行うために樹立した変異体細胞株に対して、計画当初、抗FLAG抗体を用いて実験を実施する予定であったが、抗EGFP抗体を用いた実験に計画を変更して実施しているため予定よりやや遅れているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度では、インスリン刺激後、EGFP融合-野生型GAPDHに強く結合していた分子量、約40kDaの分子に着目したが、野生型GAPDH、変異型GAPDH(Trp/Phe)との結合に差異のある分子が他にも検出されているので、その分子をプロテオーム解析により同定する。同定した分子(標的タンパク質)をRNA干渉(RNA interference: RNAi)により遺伝子発現を抑制し、GAPDHのニトロ化修飾への影響を検討する。また運動が及ぼす心筋組織内のシグナル伝達、特にニトロ化修飾への影響を検討するために、15 週齢から肥満を呈し24 週齢で雄の約90% が糖尿病を発症する、2型糖尿病モデルラットを用いて持続的運動トレーニング、レジスタンストレーニングを行い、糖負荷試験、抗GAPDH抗体を用いた免疫沈降法、電気泳動法、さらに抗ニトロトリプトファン抗体によるウエスタンブロット法によって心筋組織内のGAPDHのニトロ化修飾について解析する。
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