2022 Fiscal Year Research-status Report
アスリートの社会貢献活動がもたらす社会的アウトカムに関する研究
Project/Area Number |
21K11402
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
間野 義之 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (90350438)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エリートアスリート / 社会貢献活動 / アスリートアドボカシー / スポーツマネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アスリートの社会貢献活動、特に啓発活動(アスリートアドボカシー)から生じるアウトカムを実証的に検証することを目的とする。本年度の研究では、以下の3点の調査・研究を実施した。 第一に、昨年度から継続して、アスリートアドボカシーから生じるアウトカムに関する先行研究のレビューを行った。アスリートアドボカシーは、社会問題を広く普及させるメッセージだと考えられているが、これらのアウトカムは体系的に整理されていない。加えて、今年度は、アスリート自身にもたらされる批判や称賛などのアウトカムについても整理した。 第二に、啓発活動を行ったアスリートに対して、一般市民がどのように反応するのかを帰属理論および社会的アイデンティティ理論の視点から検証した。具体的には、2020年に行われた象徴的なアスリートアドボカシーを認知している人を対象に、アドボカシーに対する敬意や落胆などの感情がどのような要因と関連しているかを検証した。その結果、アスリートがどのくらい献身的だと思うかや、どのくらいそのアドボカシーが適合しているかの認知が、受け手の反応を規定することが明らかとなった。以上の内容は、国内の学会誌に掲載予定である。 第三に、アスリートアドボカシーによるアウトカム形成について、因果の視点から研究を行った。アスリートが社会問題について発言することは、一般市民の意見形成に寄与することと考えられているものの、明確なエビデンスは存在しない。そこで、本研究ではインターネット調査を用いたランダム化比較試験を意味するサーベイ実験の手法により、アスリートアドボカシーが持つ説得力を因果の視点から検証した。分析の結果、アスリートアドボカシーへの接触は、啓発する社会問題への意識をわずかに高める傾向にあるものの、その効果は過大評価すべきでないことが示された。この成果は5月に国際誌に投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アスリートの啓発活動がもたらすアウトカムに関する研究は、昨年度から得られた結果からさらに分析を重ね、国際誌に研究成果を発表することができた。さらに、実験的な手法を用いてアウトカムに関する詳細な検討を行った。アスリートのアウトカム認識に関するプロジェクトについては、アスリートアドボカシーの説得効果に関する実証研究を優先的に実施したことにより遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、これまでに得られた研究成果の一般化可能性を検証するために、多様な文脈でアスリートアドボカシーから生じるアウトカムについて検討する。アスリートを対象としたインタビュー調査についても研究計画を再考するとともに、綿密な準備を行い、調査を行う予定である。また、これまでに得られた研究の結果を学術誌へ投稿し、研究成果の公表に努める。
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Causes of Carryover |
調査手法に関する調整や調査計画の再考により調査準備がやや遅れていることが主な理由である。現在、一般化可能性に関わる調査準備を進めており、予算はインターネット調査の委託費や研究成果の公表費並びにインタビュー調査の協力者謝礼費に充当する予定である。
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