2021 Fiscal Year Research-status Report
運動で高まるストレス耐性の神経機構解明:交差耐性仮説の検証
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21K11441
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岡本 正洋 筑波大学, 体育系, 助教 (30726617)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 低強度運動 / 海馬 / 視床下部 / ストレス交差耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレス対処能力の向上は、うつ病やアルツハイマー病などの精神疾患や認知機能障害の予防の観点から重要であるが、ストレス適応を高める神経機構は未だ不明である。申請者はこれまでに、低強度運動が海馬の神経新生を高め、記憶・学習能力を向上させるだけでなく、一過性のストレスによる認知機能の低下を防ぐことを明らかにした。海馬の背側部と腹側部では機能が異なり、腹側部は情動やストレス反応の調節を担うことが知られている。近年、腹側部の神経新生低下はストレス回復力(Stress resilience)の破綻を招くことが報告されており、運動によるストレス適応力の向上に海馬腹側部が関与している可能性が考えられる。そこで、本研究では、運動がストレスに打ち克つ脳を育む神経機構として、海馬の関与を明らかにすることを目的に実験を行なった。 実験では、ストレス耐性を担う神経機構を同定するため、ストレス反応(ストレスホルモン分泌)を司る視床下部の室傍核(PVN:paraventricular nucleus)に逆行性トレーサーを注入し、PVNに投射する領域の内、運動とストレスで活性化する領域を検証した。その第一段階として、本研究で使用する被験動物における逆行トレーサーを注入する適切なPVNの座標を同定した。また、逆行性トレーサーの結果からPVNは海馬や分界条床核(BNST: bed nucleus of the stria terminals)からの投射を受けていることを確認することができた。今後はこれらの領域が運動で高まるストレス耐性に関与する検証を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交差耐性を担う神経細胞を同定するために、逆行性トレーサーを利用する必要があり、既に本研究で使用する被験動物の室傍核への逆行性トレーサーの注入位置を確立することができた。また、室傍核へ投射する領域として海馬や分界条床核を含む候補領域を同定しており、概ね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
逆行性トレーサーによる室傍核への投射領域の標識が可能となったことに伴い、今後は運動で高まるストレス交差耐性に関与する神経機構を解明するため、室傍核へ投射する海馬や分界条床核などの領域において、運動とストレスの両方で活性化する神経細胞を同定する。
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Causes of Carryover |
新型感染症による研究室を同時に利用できる人数が制限されたことなどが影響し、想定よりも実験の条件検討に時間を要し、次年度使用額が生じた。条件検討は完了したので、今後は一回の実験規模を拡大するなどし、助成金を有効に使用できるよう進める。
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Research Products
(3 results)