2023 Fiscal Year Research-status Report
スポーツ・文化イベントのサービス品質評価 -コロナ禍でのイベント運営の検討-
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21K11465
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤谷 かおる 金沢大学, 地域創造学系, 教授 (60257079)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | スポーツイベント / 文化イベント / イベント評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症の位置づけは2023年5月から「5類感染症」になり、これまでのイベント開催への制約はなくなり、国民の自主的な取組をベースとした対応に変わった。本年度の研究目的は、「国内スポーツ・文化イベント調査」の2022年度(782名)と2023年度(412名)を比較し、(1)「国内スポーツ・文化イベント」の実態、及びコロナ禍前後のサービス評価項目とその構造の違いを明らかにする。さらに(2)事例により、イベントの実状とサービス評価項目の検討を行うこととした。 (1)2023年度開催イベントのスポーツ、文化、地域イベントの全てで、2022年度開催イベントより、参加が増加する傾向を示した。特に地域イベントでその傾向が顕著であり、徐々にコロナ禍以前に戻りつつある現状が明らかとなった。さらに、2023年度のサービス評価の方が両イベントとも、「4.場内アナウンス・ビジョン・音響」「13.手軽な料金」「15.安全管理対策」で重視する結果を示した。加えてスポーツイベントでは、「5.インターネット配信」「7.会場へのアクセス・駐車場」も重視する傾向を示した。イベントの因子構造は、「1.基本的なサービス」「2.期待・膨張的なサービス」「3.中核的なサービス(高度な技術、有名なプレイヤーの起用)」の3因子に集約されたが、イベントの特徴や主な参加者によって求めるサービスが異なることが明らかになった。 (2)金沢百万石まつり(2023)の調査では、「15.安全管理対策」「ほかの観覧者や出演者との交流(独自項目)」「7.会場へのアクセス・駐車場」「6.観覧のしやすさ・見やすさ」で平均値が低く改善を求める結果を示した。 2022~2023年度のイベント評価調査により、スポーツ・文化イベントの基本的な因子構造は設定できたが、今後はイベントによって個別サービスの検討が必要になると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021~2023年度前半のスポーツ・文化イベントの調査では、「A.国や都道府県レベル」の国民文化祭、「B.地域レベル」の金沢百万石まつり、スポーツイベントでは「C.プロスポーツイベント」のフットサルリーグを対象に、現在の関わりと楽しみ方について、観察・聞き取りを実施している。イベントとの関わり方と楽しみ方はほぼ一致し、現状のイベントでは、多くの人が「観る」関わりと楽しさを求める現状を把握できている。 2021年後半~2023年度の全国規模でのweb調査は、上記の研究実績の概要に示したようにスポーツイベントと文化イベントそれそれ2回実施済みである。上記ABCレベル別の参加状況、平均参加回数、その関わり方の全国的な傾向は把握済みである(「研究課題1と2」)。 しかし、イベントに参加しながらも今後の楽しみ方として、それぞれのイベントに「関わりたくない」とする回答が10%前後見られた。今後は多様な関わり方がある事例を積み重ね、関わり方の多様性を示していく必要がある。なかでも、スポーツイベントでは、マラソン大会等で好循環を促す取り組み(ボランティアからランナーとして参加、あるいはその逆)が多く実践されている。また、文化イベント(祭り)では子ども用ミニ版を大人がサポートするワークショップ等が開かれ、伝統を引き継ぐ取り組みが実践されている。 「観る関わり方」から「参加する関わり方(選手・出場・参加者)」「作る関わり方(企画・運営・実施・ボランティアなど)」へ、イベントとの様々な関わり方が実際には数多く実践されている。 今後は、「研究課題3」のイベントを取り巻く「運営実態及び組織体制」の課題について聞き取り調査を実施する。イベントとの関わり方の中で人々が「参加する関わり方」や「作る関わり方」に抵抗を示さないよう、情報提供方法を含め、その影響要因は何かをフィールドワークで明らかにしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、「研究課題3」スポーツ・文化イベントの運営実態及び組織体制の課題について、国内で聞き取り調査を行う。各種スポーツ団体、文化団体、並びにこれらを結ぶ「文化スポーツコミッション推進委員会」に了解を得ながら実施していく。 特に、2022年と2023年に実施した「スポーツ・文化イベント調査」では、「イベントでの関わり方」と「今後の楽しみ方」が課題となっている。人とイベントとの関わりの中で、主催・開催団体が「魅力あるイベント」と「安全なイベント(優れた感染防止対策、混雑対策を行っていたイベント)」の取り組みについて聞き取り調査を行い、「運営実態」と「組織体制及びその具体的な取り組み」の成功事例として示す。 今後のイベントとの関わり方の中で人々が「出場・出演・参加する関わり方」や「作る関わり方」に抵抗を示さないよう、情報提供方法を含め、その影響要因は何かをフィールドワークで明らかにする必要がある。 当初の計画では石川県のイベントを中心に計画していた。なかでも祭りは、「伝統を生かした地域おこし」として取り上げたい課題であったが、被災地の現状を見ると、現地を訪れ、フィールドワークを行うことは困難である。しかし、能登の人々が祭りの復活を求めて、日々努力されている報道も目にする。被災地の人々の思いに配慮し、調査時期は延長を含め、慎重に検討する必要がある。そこで、まず2024年度は金沢市を中心としたスポーツイベントを中心に取り扱い、文化イベントはその後に検討する。 2025年度(最終年度)には、学会誌、研究室HPで研究成果を示し、イベント経験者が求める「スポーツ・文化領域別(規模・コンテンツなど)イベント」のサービス評価構造と具体的な運用方法について示す。
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