2021 Fiscal Year Research-status Report
Towards sustainable Olympics : Historical analysis on the Games in non-mega cities
Project/Area Number |
21K11469
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
白井 宏昌 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (40772033)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | オリンピック / 地方都市 / レガシー戦略 / 空間的視点 / 経済的視点 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界最大のスポーツの祭典であるオリンピックを開催するには多くの競技施設や関連施設の整備が必要とされ、今日では首都などの経済規模の大きい大都市のみが開催可能なものとなっている。そこで本研究では、今後より経済規模の小さい地方都市などでのオリンピック開催の可否を歴史的な事例から検討する。 そのような研究目的のもと、2021年度は日本の都市の中で、近年オリンピック大会招致を試みた福岡市(2016年大会)と広島市(2020年大会)の開催計画について、調査・分析を行った。両都市とも、大会後に大きな負担となる建築的なレガシーを残さないために、スタジアムを仮設スタンドの増設することでオリンピック規模に一時的に拡張することや、選手村を大型客船で賄うことなど、仮設建築を積極的にまた創造的に活用することに加え、メディアの時代のオリンピックを意識して、オリンピックの伝え方を意図的に行うことで、競技施設等のハードの整備負担を減らしていく計画を行っていたことが明らかになった。 上記の福岡市と広島市での事例調査に加え、IOCの視点からの考察も行った。IOCが大都市以外でのオリンピック開催についての試みに関するものとして、開催都市への大会後の負担減を考察した「レガシー戦略」や大会負荷の軽減などを目指した「Agenda2020」について分析を行い、100万人規模の都市でもオリンピックを開催できるためのIOC側の取組みを考察した。近年、オリンピック開催に立候補する都市が減少する中でIOCの開催都市に対する態度に変化を認めることが出来る一方、観客数などの大会の物理的な規模の縮小に踏み込むことを躊躇している点等が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では100万人規模の都市でもオリンピックを開催できる可能性を空間的・経済的な視点から探求することを目的としているが、2021年度は近年日本の都市で下記オリンピック大会試みた福岡市(2016年大会)と広島市(2020年大会)の開催計画について調査・分析を行い、両都市が競技施設や選手村などのハード面での整備負担を減らすための多様な工夫をしていたことが明らかになった。特に福岡市では、建築家が招致計画作成に大きく関わることで、オリンピック後も見据え、創造的に施設配置計画を行っていたことが理解できた。また広島市などは公的資金の投入を最小減に行うためのクラウドファンディングや、大会期間中の宿泊施設不足解消のための空き家利用など、これまでのオリンピック開催都市ではあまり用いられてこなかった都市整備手法を検討して、小規模都市でもオリンピック開催できるように検討していたことが明らかになった。さらには調査の過程で、広島市大会招致関係者が福岡市での経験を活用するなど、地方都市でオリンピックを開催する際の「知の継承」も行われていたことが判明した。 新型コロナウィルス感染拡大により、2021年度は主に文献資料からの調査が主な調査方法となっていたが、両都市とも招致資料やメディア報道資料なども多く残されており、地方都市がオリンピックを開催するための知見を多く得ることができ、その意味でも概ね計画通りの進捗状況であったと言える。次年度以降は、新型コロナウィルス感染状況が落ち着けば、現地での調査等も行い、さらなるデータ収集等に当たりたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画書では、初年度に国内の福岡市、広島市の事例調査を行い、2022-2024年度にはこれまでオリンピックを開催した4つの都市:ミュンヘン(1972年)、モントリオール(1976年)、アトランタ(1996年)、アテネ(2004年)について調査する予定である。4つの都市での現地調査を予定しているが、現地調査の遂行計画は、新型コロナウィルス感染状況に大きく影響を受けるため、状況に合わせて行いたいと考えている。2022年度に現地調査が厳しい場合は、まずは上記の4都市に対して文献調査を行い、それぞれの都市がオリンピック開催に向けて施設整備の点で、オリンピック後に経済的あるいは物理的な負担を削減するための戦略と実際の大会の後の運用とについて調査したいと考えている。 また、これらの4都市での調査を踏まえて、2024年度ではあらためて国内の福岡市、広島市における招致計画を考察し、過去のオリンピック都市での課題を両都市がどのように認識していたかを探求したいと考えている。特に食うk展的な視点として、一極集中型施設配置を採用した福岡とミュンヘン、モントリオール、分散型配置計画を採用した広島とアトランタ、アテネを比較し、両タイプの利点と課題を明確にしていきたい。 2021年度にはIOCがこれまで行ってきたオリンピック都市への負担削減のための試みを考察したが、今後は上記の開催都市での比較事例調査に加えて、IOCの視点から経済的規模の小さい地方都市でオリンピックを開催するために必要とされる改革あるいは規制緩和を、空間的・経済的な視点から探求していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた大きな理由としては、新型コロナウィルス感染拡大により、2021年度に予定していた福岡市および広島市での現地調査が行えなかった点が挙げられる。繰越研究費に関しては、2022年度以降、改めて福岡市および広島市での現地調査のために使用したいと考えている。
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