2022 Fiscal Year Research-status Report
Towards sustainable Olympics : Historical analysis on the Games in non-mega cities
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21K11469
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
白井 宏昌 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (40772033)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | オリンピック / 人口百万人規模の都市 / レガシー戦略 / 施設配置 |
Outline of Annual Research Achievements |
1896年にアテネで第1回近代オリンピックが開催されて以降、多くの都市がこの世界的スポーツイベント招致に名乗りを上げ、時にその競争は激しいものとなった。また、開催に伴う経済負担や競技施設などの整備負担が大きくなるにつれて、オリンピック開催ができる都市は、先進国の首都など経済規模の大きな都市に限られるようになった。本研究では、このような状況に対して、人口百万人程度の比較的小さな都市でもオリンピックが開催できる可能性を、これまで招致あるいは開催してきた百万人規模都市の事例研究から考察しようとするものである。これまで、2016年大会に招致を試みた福岡と2020年大会の招致を計画した広島での事例調査から、東京のような首都ではない小規模都市ならではの招致計画の立て方などを考察し、都市に物理的あるいは経済的負担を掛け過ぎないオリンピック計画のあり方を考察してきた。さらには実際にオリンピックを開催した他の開催都市と比べて小規模都市であるミュンヘン(1972年)、モントリオール(1976年)、アトランタ(1996年)、アテネ(2004年)の各都市にも注目し、この中で、アトランタとアテネに関して考察を進めてきた。アトランタの事例からは民間主導の資金計画と大会後に物理的レガシーを残さない施設計画に注目しながら、百万人規模の都市が取りえる戦略を考察した。これに対して、アテネ大会ではオリンピック開催に対して、巨額な資金を投入し、多くの競技施設等を建設したが、大会後は負の遺産となってしまっている点に注目し、このような都市がオリンピック開催することのリスクを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、2021年度に国内の2つの招致都市:福岡と広島を文献・資料等から調査を行い、それぞれの都市が採用した都市に経済的・物理的負担を掛けない招致戦略について考察し、またそのような戦略に対して福岡から広島へと「知の継承」が行われてきたことを明らかにした。そして2022年度では研究対象としている4つの海外の開催都市のうち2つの都市:アトランタとアテネを対象に、施設整備を中心に開催計画を大会報告書等を用いて分析し、またその大会後の状況をメディア資料や海外での研究論文などを参照しながら考察した。両者では競技施設の整備計画に関して、大会後の想定の仕方に大きな差異があり、それが異なるオリンピック・レガシーをもたらす大きな要因となり、これからのオリンピック都市について重要な知見を得ることとなった。2021年度および2022年度の研究を通して、比較的小規模の都市がオリンピックを招致・開催することについての考察ができたため、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。しかしながら、両年度はまだ新型コロナウィルス感染の影響を強く受けており、当初予定していた現地での調査が出来ていなかった点は2023年度以降の課題として取り組みたいと考えている。
また、本研究は人口百万人規模の都市がオンピックを開催できる手法を探求することが主要なテーマであるが、その過程で、そのような都市がオリンピックをなぜ開催する必要がある(あった)のかという背景に触れる必要性を強く感じるようになった。特に、近年ではオリンピック開催自体に疑問の声が上がる中、そのような大規模スポーツイベントを百万人規模の都市が招致・開催する意義も合わせて考察した。その研究成果の一つとして、2012年ロンドン大会と2020年東京大会での両都市のオリンピックへの取り組みを比較し、変容するオリンピック開催の意義についての論考を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初提出した研究計画書では、2021年度に福岡、広島の事例調査を行い、2022-2024年度にミュンヘン(1972年)、モントリオール(1976年)、アトランタ(199年)、アテネ(2004年)について調査する予定であった。これまで、福岡、広島、アトランタ、アテネの各都市について、大会に必要な競技施設等の施設配置や都市インフラ整備に関して文献・資料による事例調査を行った。今後の予定としては、2023年度はミュンヘンとモントリオールの2つの都市についても、文献・資料調査および現地での調査を踏まえて、より広い考察を行いたいと考えている。さらに、2023年度以降にはこれまで新型コロナウィルス感染拡大のため実施できなかった各都市での現地調査を行い、現地でも入手可能な資料の発掘や、招致計画に携わった関係者へのインタビュー、オリンピック後の競技施設や都市空間の状況調査を行いたと考えている。また、さらには2021年度に実施した、今後もオリンピックというイベントを持続的に開催してくための国際オリンピック委員会(International Olympic Committee:IOC)の取組みも引き続き注視しながら、オリンピックと都市の関係を考察していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた大きな理由としては、新型コロナウィルス感染拡大により、2021および2022年度に予定していた国内および国外都市での現地調査が行えなかった点が挙げられる。繰越研究費に関しては、2023年度以降、改めて福岡および広島さらには国外都市での現地調査のために使用したいと考えている。
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Research Products
(1 results)