2023 Fiscal Year Research-status Report
体重を利用した新しいエキセントリックトレーニングが高齢者の身体機能に及ぼす影響
Project/Area Number |
21K11473
|
Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
桂 良寛 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 准教授 (70622835)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲見 崇孝 慶應義塾大学, 体育研究所(日吉), 講師 (10750086)
山口 翔大 慶應義塾大学, 体育研究所(日吉), 特任助教 (80896093)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | エキセントリックトレーニング / 高齢者 / 下肢筋力 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症の影響により、2021年だけでなく2022年以降も研究フィールドが度々閉鎖されたため、継続的な調査ができなくなったが、科研費補助事業期間が延長されたことで、2024年現在では本研究の目的である”自重エキセントリックトレーニング(ET)”と、”一般的自重トレーニング(GT)”のトレーニング効果を検証するためデータを収集することができた。 近年、伸張性筋活動を主としたETによる体力や健康の向上効果は報告されているが、短縮性と伸張性筋活動の両方を行うGTとの比較は行われていない。そこで、高齢者の身体機能に与える影響をETとGTとで比較した。隔離期間が解除された後に新たな被験者を募り、高齢者40名(75.9±5.5歳)を、ET群21名、GT群19名に分けた。ET群は伸張性筋活動5秒であったのに対し、GT群は伸張性筋活動5秒+短縮性筋活動5秒であった。両群とも週1回、60分間、集団で椅子スクワット、踵上げ下げ、椅子腹筋、壁腕立て等を行い、少なくとも週1回は自宅でも同様の運動を10週間にわたって実施した。介入前後で血圧、安静時心拍数(RHR)、自覚的運動強度、30秒椅子立ち上がりテスト(CS)、脚伸展筋力(MVC)、移動能力(TUG)、6m歩行速度(6WV)等を測定し、それらの変化を二元分散分析で群間比較した。 各週の自覚的運動強度はET群がGT群より有意(p<0.01)に低かった。血圧、RHR、TUG、6WVはGT群よりET群でより大きな改善が見られ(p<0.05)、MVCとCSは両群とも同様に向上した(p<0.05)。 これらの結果は、ETがGTよりも身体的負担が少ないにもかかわらず、身体機能を向上するのにより有効であることを示唆している。ETは虚弱者や慢性的疾患を有する人でも実施しやすく、より多くの人々の健康寿命の延伸に貢献できると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響のため、研究開始時から度々研究フィールドが閉鎖される事態が発生した。当初予定していた継続的な追跡が難しくなったため、安定的に体操教室が開催できるようになるまでの間は、隔離期間中(非監視下)でのエキセントリックトレーニングの効果についても調査した。 自宅部屋での隔離期間中は、個人で下肢筋群の強化を中心としたエキセントリックトレーニングを継続的に実施した。しかし、隔離期間が解除された直後に体力測定を行った結果、脚伸展筋力や椅子立ち上がりテスト(CS)、TUG、筋持久力等は隔離期間前と比較して有意(P<0.05)に低下していた。その後、週1回、3か月間の集団でのエキセントリックトレーニングを行ったが、CS以外の項目は有意な改善を示さなかった。メンタルヘルスのアンケートでは、集団でのトレーニングを望む声が多く、孤独感を感じる環境下では筋力トレーニングの効果は低く、トレーニングの種類や方法よりも、友人や家族との触れ合いが重要であることが示唆された。 施設の閉鎖が解除された後は、本研究のテーマである自重エキセントリックトレーニングと、一般的自重トレーニングの効果の比較のために再度被験者を募り、週1回、10週間の体操教室を再開した。被験者の確保にはかなりの労力と時間を要したが、無事に集めることができ、一定期間ではあるが各トレーニング効果の比較検討を行うためのデータを収集することができた。科研費(基金)補助事業期間の延長を承認していただいたことで、今後の論文の作成や投稿、学会発表等については順調に実施できる予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究フィールドの度重なる閉鎖のため、研究は順調に進んだとは言えなかったが、現時点では本研究のテーマである自重エキセントリックトレーニングと一般的自重トレーニングの効果を検証するためのデータを得ることができた。自重エキセントリックトレーニングは心肺機能にかかる負担が小さく、さらに下肢筋力は一般的自重トレーニングと同程度まで増強できることが分かった。そのため、現在多くの場所で行われている一般的筋力トレーニングに比べて安全で、内科的疾患を有する人でも比較的取り入れやすいトレーニングであることが示唆された。 本研究の結果は、今後の高齢社会でより多くの人の健康寿命の延伸に貢献できると考えられる。従って、今後はこれらのデータをさらに詳しく分析した後、学会発表および論文投稿する予定である。また、新型コロナウイルス感染症の影響によって研究フィールドが閉鎖された期間中のエキセントリックトレーニングの効果についても同様にデータをまとめ、論文として投稿する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:購入予定であった研究機器が貸与できることになったため。 使用計画:差額は論文の投稿費用に充てる。
|