2021 Fiscal Year Research-status Report
Examining the impact of holding sporting events on citizens' sport participation
Project/Area Number |
21K11479
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松岡 宏高 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (10367914)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スポーツイベント / スポーツ参加 / オリンピックレガシー / インスピレーション / ノスタルジア |
Outline of Annual Research Achievements |
経済的要因を主とした地域活性化への期待を抱いて多くの自治体がスポーツイベントの誘致を試みるが、その効果は短期的であることが多い。一方で長期的な効果が期待されるのが、開催地住民のスポーツへの参画に与えるポジティブな影響である。このスポーツに直接的なレガシーを再検討することは、学術と実践の両視座において重要である。しかし、開催都市や国の住民のすべてが同様にイベント開催の影響を受けてスポーツを実施するとは考え難く、そこには多様な要因が複雑に関係している。 スポーツイベントのスポーツに直接的なレガシーに着目する本研究の目的は、スポーツイベント開催への人々の関わりが人々の長期的かつ継続的なスポーツ実施に与える影響を明らかにすることである。具体的には、まず、その2つの主要な変数の間に介在する媒介変数を含めた因果関係の解明を試みる。さらに、それらの因果関係は、すべての人々に同等に相当するわけではないことから、その因果関係を制御する調整変数の影響についての検討も試みる。スポーツイベントとその後のスポーツに関わるレガシーの関係を複数の媒介変数と調整変数を用いて説明することに取り組むのが、本研究の独自的かつ創造的な点である。もう一つ大きな独自的かつ創造的な学術的要素は、スポーツイベントの短期的な影響と長期的な影響を分割して、2回の測定を行うことである。各変数を適切なタイミングで測定し、2回の測定データを紐づけて因果関係の分析をすることで、研究の内的妥当性を高く保つことが可能となる。 そこで本研究では、調査対象をイベント開催地および周辺地の住民を対象とし、スポーツイベントの影響を開催直後とその数年後の2回にわたって測定し、それらに含まれる変数間の関係を検討する。対象となるスポーツイベントは2021年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックとし、3年間で実施する計画とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の計画は、1)スポーツイベントの影響やレガシーについての先行研究のレビューを行い、必要な変数に関する概念の検討及びその概念を測定する尺度についての検討に取り組む。2)1回目の測定のための調査計画を設計する。インターネット調査会社の検討と決定、対象地域と人数の確定、調査項目の確定を行う。3)スクリーニング調査を行い、本調査(1回目)の対象者を絞る。4)1回目の測定を行う(4~6都市、計1,600~1,800サンプルの予定)ことであった。 基本的には計画通りに進められ、2021年7月から8月にかけて開催された東京オリンピック・パラリンピックが閉会した直後から1週間をかけてオンライン調査を実施した。全国各地区の人口分布と性別の割合を考慮したサンプリング計画を基に、1,845サンプルからの回答を得た。関東地方の回答者が最も多く34.9%、次いで中部地方が17.9%、近畿地区が15.6%で、性別の割合は、男性が52.4%、女性が47.6%であった。媒介変数の一つとして扱うインスピレーションについては、大会そのものから、あるいは出場選手やチームから刺激を受けたことについての知覚レベルを複数の項目を用いて測定した。7段階尺度への回答のばらつきについて確認がされ、次年度以降に収集する2回目のデータを含めた変数間の関係を検討する分析についても適したデータであることが現時点で確認された。また、「オリンピックの影響を受けて今以上にスポーツがやりたくなった」かとの質問に対しては、「そう思う」が38.5%、「どちらとも言えない」が22.4%、「そう思わない」が39.1%であった。 まずは、1回目のデータ収集が計画通りに行われ、研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究の目的を果たすために、東京オリンピック・パラリンピック閉幕後1年が経過した時点でのデータを収集するための2回目の調査を実施し、計画を設計する。具体的には、2022年度には、1)前年度の最後に行った1回目の測定データの統計解析および結果の解釈を行う。2)その結果を基に、学会大会等での研究報告を行う。3)前項図2の右部に示した2回目の調査で用いる変数に関わる概念の検討を行う。4)2回目の調査の準備のために調査項目の精査を行う。さらに2023年度には、1)1回目の調査に対して有効な回答があった対象者に2回目の測定を行う(4~6都市、計800~900サンプル(継続回答者の割合を50%と想定)の予定)。2)2回目の測定データの統計解析および結果の解釈を行う。3)研究の成果をまとめ、学術論文の執筆を行う。 2年目となる2022年度の主な課題は、2回目のデータ収集のタイミングの再検討と、有効回答の確保である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止に関連し、2021年3月に出席を予定していた国際学会への参加を取りやめたため、研究旅費を執行しなかった。本件に関わる経費を使用しなかったこと、および1回目のデータ収集のコストが抑えられたことより、計画の見直しを行い、データ収集の回数を増やして、経費をより有効に活用することを検討する。
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