2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanism that determines the site of fusion of myoblasts to myofibers
Project/Area Number |
21K11488
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
長田 洋輔 岡山理科大学, 理学部, 講師 (50401211)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | C2C12 / 骨格筋 / 筋肥大 / 筋分化 / 細胞融合 / 電気刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋はわれわれが体を動かすために必要な組織であり,損傷を修復する再生能と,使用状況によって肥大/萎縮する可塑性を持つ。筋肥大は,おもに筋線維のタンパク質合成量が増加することによって起こるが,骨格筋に大きな負荷が与えられた場合には,筋サテライト細胞に由来する筋芽細胞の融合によって新たな筋核を獲得する。筋細胞の融合には,myomakerやmyomerger等の筋細胞特異的な細胞融合関連タンパク質が関与することが明らかにされつつあるが,つまり細胞融合部位が決定される過程については十分に解明されていない。また,筋芽細胞同士の融合については理解が進んでいる一方で,筋線維と筋芽細胞の融合に関する研究は遅れている。その理由の一つとして,筋線維への細胞融合の検出が容易でないことが挙げられる。 当年度はマウス筋芽細胞株C2C12に細胞培養系で電気刺激を与える実験系の構築を試み,C2C12細胞を増殖促進的環境下において分化誘導し,3日間の電気刺激を与えることによって,再現性良く筋収縮を誘導することに成功した。その条件では,筋管の最大横径平均値が有意に増加したこと,より大きな最大横径をもつ筋管の割合が増加したことから,培養筋細胞に電気刺激を与える実験系の構築に成功した。電気刺激によって筋肥大が促進されたことが示唆されたため,今後は筋核数を計数し,細胞融合の促進について検証する。細胞融合が融合されていた場合には,細胞融合部位を同定するための実験に移るが,細胞融合が促進されていなかった場合にはより効果的な電気刺激を与えるための実験条件を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当年度はマウス筋芽細胞株C2C12に細胞培養系で電気刺激を与える実験系の構築を試みた。C2C12細胞を5×10^4個/35mm培養皿に播種し,24時間後に分化培地に培養液交換して分化誘導し,その3日後から電気刺激を与えた。電気刺激には,電気刺激装置SEN-3301(日本光電),アイソレータSS-202J(日本光電),炭素電極(直径5mmの炭素棒)を用い,刺激持続時間 2.5ミリ秒,周波数 1 Hz,電流 0.1~10 mAの条件にて,1日に5分間の通電を3日間連続で行った。 当初の培養条件では,いずれの条件においても明らかな細胞ダメージは観察されず,10 mAにおいてのみ稀に収縮する細胞が認められことから,10 mAを暫定的な条件として採用した。さらに,細胞密度により電気刺激の効果が変化する可能性を考え,分化培地(インスリン,トランスフェリン,亜セレン酸ナトリウム,BSAを含むDMEM)に2,5,10% FBSを添加して同様の電気刺激を与えたところ,5,10% FBSを添加した場合に再現性良く筋収縮を誘導することができた。当該条件においては,筋管の最大横径平均値が有意に増加し,度数分布図では大きな最大横径をもつ筋管の割合が増加したことから,培養筋細胞に電気刺激を与える実験系の構築に成功したと判断した。電気刺激によって筋肥大が促進されたことが示唆されたため,今後は筋核数を計数し,細胞融合の促進について検証する。細胞融合が融合されていた場合には,細胞融合部位を同定するための実験に移るが,細胞融合が促進されていなかった場合にはより効果的な電気刺激を与えるための実験条件(電極の形状,刺激強度,刺激時間,電気刺激装置,培養条件など)を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに培養筋細胞に電気刺激を与えることによって筋肥大を誘導することに成功したため,筋核数の計数によってし電気刺激が細胞融合を促進する可能性を検証する。細胞融合が融合されていた場合には,細胞融合部位を同定するための実験に移るが,細胞融合が促進されていなかった場合には,より効果的な電気刺激を与えるための実験条件を検討する。具体的には,電極の形状,電流・電圧,刺激を与える時間,電気刺激装置,培養条件を詳細に検討する。また,同様の実験をヒト不死化未分化筋芽細胞株Hu5/KD3でも行う。 細胞融合部位を同定するための実験として,筋細胞特異的に細胞融合に関与することが報告されているmyomaker,myomixerや,筋細胞の融合前後でダイナミックな変化が起こる脂質マイクロドメイン等の免疫細胞化学液検出を行う。また,常の細胞培養系では,筋管に対する筋芽細胞の融合部位を制限することはできないため,効率的な観察を行うことが困難であることから,非接着性の基質にスポット状の接着部位を設けて細胞をアレイ状に配置することで,融合部位を一定範囲内に制限することを試みる。まず筋芽細胞同士の融合を観察するための培養を行って細胞の接着方法や細胞間の距離を調整した後に,筋管と筋芽細胞の融合を観察するための培養条件を検討する。細胞融合部位は通常の観察方法に加えて,マイクロ流体破砕を用いた細胞膜の裏側解析技術を用いて,生きたままの細胞膜の内側を観察することを試みる。
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Causes of Carryover |
当年度は新型コロナウイルス感染症への対応のため,十分な研究時間を確保することができなかった。その中にあっても,C2C12細胞に対して電気刺激を与え,筋収縮を誘導する実験系を構築できたこと,電気刺激によって筋肥大を誘導することに成功したことから,研究自体は着実に進展している。細胞への電気刺激を当初の計画とは異なり,大学所有の代替機にて行うことを検討したために支出額が減少したことも次年度使用額が生じた理由に挙げられる。次年度は,より効果的な電気刺激方法へと発展させるため,電気刺激装置や電極の購入を検討している。また,細胞のタンパク質合成量をモニターするための試薬,筋細胞融合に関与するタンパク質の抗体,遺伝子発現解析のために必要なリアルタイムPCR試薬や,ウェスタンブロット用の抗体,培養液,成長因子・サイトカイン等を購入して研究を実施する。
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