2022 Fiscal Year Research-status Report
The unconscious mental inhibiting process of human maximal voluntary contraction
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21K11532
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
宝田 雄大 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (70367093)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Motor system / M1 / TMS / silent period / pupillary size / human strength / maximal volition |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は(a) シャウトが最大筋力に与える影響と(b)形容詞「最大の」と運動行動に関連した単語(動詞)との暗示連合学習が無自覚的目標指向性行動に与える影響を調べることである。初年度は目的(b)に取り組んだので、次年度は目的(a)を検証するために最大筋力発揮時の経頭蓋磁気刺激法(Transcranial magnetic stimulation、TMS)による単発一次運動野(M1)刺激の誘発筋電図(MEP)と瞳孔径の検査をおこなった。 その結果、シャウトが疲労をともなわない短時間の、あるいは疲労をともなう持続的な最大随意収縮(MVC)中の筋力レベルを増加させ、Silent period (SP)を短縮させることがわかった。一般に、100 ms 以上のSP時間の変化は皮質内抑制の変化を反映しており(Cantello et al., 1992) 、特にM1の皮質内抑制(Connors et al., 1988; Werhahn et al., 1999; Siebner et al., 1998; Damron et al., 2008)の指標として使われてきた。なぜなら、SP時間の変化はM1内のGABAB-ergic circuitsによって生み出され、その起源が大よそM1であると考えられているからである(Inghilleri et al.,1993) 。したがって、シャウトによるSP時間の短縮はシャウト自体の運動指令がM1皮質内抑制を低減させたことを示している。 これらの結果は、M1の皮質内抑制の低減あるいはその興奮性(Ziemann et al., 2000)の高進がシャウトの筋力増強効果に関係していることを示した最初の客観的証拠である。つまり、シャウトによる最大随意筋力増加の原因はシャウトの運動指令によるM1活動状態の高進であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的の一つである(a) シャウトが最大筋力に与える影響を最大筋力発揮時の経頭蓋磁気刺激法(Transcranial magnetic stimulation、TMS)による単発一次運動野(M1)刺激の誘発筋電図(MEP)取得と瞳孔径検査により明らかにできた(研究実績概要参照)。 しかし、TMSによる単発のM1刺激によるMEP振幅だけでは、シャウトの最大随意筋力増加の原因を皮質(M1)内抑制だけに求めることが難しいことがわかった。なぜなら、TMSによる単発のM1刺激によるMEP振幅だけでは、脊髄や筋肉が活動した後の影響を取り除くことができず、皮質レベルでの変化だけを抽出することができないからである。 したがって、最大筋力発揮中のシャウトの皮質内抑制に与える影響を調べるためには、経頭蓋磁気装置を二台連結して、一つのコイルから刺激強度の異なる二発のTMSをM1に与え、短潜時皮質内抑制や皮質内促通を評価しなければならないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の目的の一つである(a) シャウトが最大筋力に与える影響のデータを取り纏め、速やかに投稿し、その受理を目指す。その際、必要とあらば追加実験や再解析に迅速に対応したいと考えている。 その一方で、TMSによる単発のM1刺激によるMEP振幅だけでは、シャウトの最大随意筋力増加の原因を皮質(M1)内抑制だけに求めることが難しいことがわかった。なぜなら、TMSによる単発のM1刺激によるMEP振幅だけでは、脊髄や筋肉が活動した後の影響を取り除くことができず、皮質レベルでの変化だけを抽出することができないからである。したがって、最大筋力発揮中のシャウトの皮質内抑制に与える影響を調べるためには、経頭蓋磁気装置を二台連結して、一つのコイルから刺激強度の異なる二発のTMSをM1に与え、短潜時皮質内抑制や皮質内促通を評価しなければならないと考えられる。時間的な余裕があれば、その準備などに取り掛かりたい。
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Causes of Carryover |
2022年度の目的は(a)シャウトが最大筋力、運動システム、瞳孔関連神経システムに与える影響を調べることである。当初、アンプ、データ収集・解析プロセッサの新規購入またはソフトウエアのアップデート、そしてその接続先のワークステーション、そして経頭蓋磁気刺激法(TMS)の点検及び補修、波形確認用モニタやソファなどの購入を予定していた。 しかし、データ収集・解析プロセッサデータ収録装置とソファは製造販売中止となりそれに接続する増幅器はその製造販売先が変更されたことなどから、システム構成を再検討しなければならなくなった。これが当該助成金の発生理由である。そのため、今年度は早い時期に、システム構成を再検討し、TMSによる単発一次運動野(M1)刺激の誘発筋電図(MEP)検査は言うに及ばず、短潜時皮質内抑制や皮質内促通の評価を見据えたシステム構築を目指したいと考えている。
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