2022 Fiscal Year Research-status Report
生活習慣の週内変動とクロノタイプ,日内変動特性,健康関連QOL尺度に関する研究
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21K11538
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
西村 一樹 広島工業大学, 環境学部, 准教授 (50550026)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 週内変動 / 社会的時差ボケ / eating jet lag / 睡眠時刻のバラツキ / 食事時刻のバラツキ / クロノタイプ / 変動係数 / 標準偏差 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は,男子大学生1,200名を対象に自記式の起床と就寝時刻調査を1週間実施した.対象者は,健康関連QOL(SF-36v2)日本語版とミュンヘンクロノタイプ質問紙日本語版に回答した.得られた1週間の起床時刻と就寝時刻から睡眠時間を算出した.社会的時差ボケの指標として,平日と休日の睡眠時間の中央値の差の絶対値を算出した.さらに,1週間の起床時刻と就寝時刻の標準偏差,睡眠時間の変動係数を睡眠の変動に関する指標として用いた.重回帰分析を用いて,社会的時差ボケに影響を及ぼす睡眠指標を検討した. 重回帰分析は従属変数を社会的時差ボケの指標,独立変数に各睡眠の指標を用いて,実施した.クロノタイプは5.3±1.5時,社会的時差ボケは1.1±1.0時間であった.クロノタイプと起床・就寝時刻,平日と休日の起床時刻の差の相関係数が高値であったことから,クロノタイプは独立変数から削除した.強制投入法によって重回帰分析を実施し,起床時刻の標準偏差,平日と休日の就寝時刻の差,平日と休日の睡眠時間の差,就寝時刻の標準偏差,睡眠時間変動係数が採用された(調整済み決定係数=0.756).標準化係数は起床時刻の標準偏差(0.49),平日と休日の就寝時刻の差(0.45),平日と休日の睡眠時間の差(0.26)の順に高値であった.採用された5項目についてステップワイズ法を実施した.第1式で起床時刻の標準偏差,第2式で起床時刻の標準偏差と平日と休日の就寝時刻の差が採用された. 以上の知見から,社会的時差ボケが休日の睡眠時間の延長のみならず起床時刻の不規則性によって引き起こされることが示された.さらに,社会的時差ボケは休日の睡眠時刻の遅延に比較して,1週間の起床時刻の不規則性の影響が大きいことが明らかになった. これらの研究成果は,原著論文としてChronobiology Internationalに採択された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度の研究課題「生活習慣の週内変動と生理指標の概日リズム特性の関連性」は概ね順調に進んだものと評価する.男子大学生1,200名を対象に生活習慣調査を実施した.得られた知見は,原著論文として国内誌および国際誌に各1編掲載された.しかしながら,当初予定していた「生活習慣の週内変動の高低で群分けし,生理指標の概日リズム特性,健康関連QOL尺度のサマリスコアを比較する」ことについては検討するデータが不足しているため検討できなかった.この課題は令和5年度に引き続き実施するものとする.一方,概日リズムの同調因子である朝食の摂取時刻やその不規則性,夕食後の夜食頻度で群分けし,社会的時差ボケや睡眠指標の検討を実施した.これらの研究成果は,原著論文として国際誌に投稿中である.これらの理由から現在までの進捗状況は概ね順調に進んだものと評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は,横断的な手法を用いて,提案した睡眠の変動に関する指標(起床時刻,就寝時刻の標準偏差および睡眠時間の変動係数)と食事の不規則性に関する指標(起床時刻から朝食までの時間,最後の食事から就寝までの時間とそれらの標準偏差)が社会的時差ボケ,eating jet lag(絶食時間の中点の平日と休日の差)に及ぼす影響を明らかにする.さらに,重回帰分析を用いてそれぞれの時差ボケに及ぼす睡眠,食事のパラメータの影響を明らかにする. さらに,これらの睡眠や食事の不規則性に関する指標が睡眠障害得点(ピッツバーグ睡眠質問票),健康関連QOLサマリスコアに及ぼす影響を検討する.具体的には睡眠障害得点や精神的サマリスコアで群分けを行い,睡眠や食事の不規則性に関する指標の比較を行う.これらの研究成果によって令和5年度に実施予定である生活指導介入プログラムの開発の科学的根拠となる知見を得ることができる. さらに,これまでに得られた知見に基づき生活習慣の週内変動に着目した生活習慣介入プログラムを開発する.生活習慣介入プログラムは,対象者自身が容易に実施可能な行動変容プログラムを予定している.開発したプログラムに基づき生活指導介入を実施し,効果測定を実施する.効果指標は①一週間の生活習慣に関する調査,②ミュンヘンクロノタイプ質問紙日本語版,③健康関連QOL尺度(SF-36v2)とする.生活指導介入の有無による効果指標を比較し,介入プログラムの効果を評価する(介入しなかった対象者に対して,調査後に介入プログラムを提供する). 令和5年度は令和4年度の研究成果を国内学会(体力医学会,生気象学会など)において口頭発表を行い,学術的な評価を受ける.さらに,原著論文として国外の学術雑誌に投稿する.
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Causes of Carryover |
令和4年度の研究課題「生活習慣の週内変動と生理指標の概日リズム特性の関連性」は概ね順調に進んだものと評価する.次年度使用額が生じた理由は,当初予定していた国際学会での研究成果発表をコロナ渦であることから見送ったことである.繰り越した経費は論文投稿に必要な経費(英文校正料,投稿料,掲載料,別刷り費)として計上する.
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