2021 Fiscal Year Research-status Report
音の方向感認知能力の評価方法構築に関する臨床的研究
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21K11547
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
砂原 伸行 金沢大学, 保健学系, 准教授 (30624613)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 音源定位 / 眼球運動 / 聴覚認知 / 高次脳機能 / 注意機能 / 視線計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は音の方向感認知能力のTVモニターを用いた評価方法を,視線計測の観点から構築することである.特に本研究課題では基本機器の視線計測装置を非接触型とすることとした.また音源呈示範囲を通常のTV画面サイズの横幅に狭めて装置全体をコンパクトにすることが重要となる.これは臨床上簡便かつ,実用的計測が出来るシステムの構築につながる. 本年度は視線計測を用いてのシステムの構築にあたって,特にプログラムの作成,実験環境,測定条件の整備に充てた.主プログラムは音源呈示と同時に時間経過による視線の位置情報を取得できるプログラムである.当初は2スピーカによるステレオ音源で疑似音像を任意の位置に呈示する方法の構築を検討しており,その結果に基づいて複数スピーカを用いた実音源での視線計測方法を構築していく予定であった.しかし今年度導入したシステムの基本機器である非接触型の視線計測装置の可動条件の検討を重ねたところ,複数スピーカでの実音源を用いても,設定したTV画面サイズの音源呈示範囲内(20~25°)で実用的な視線計測が可能なことが予備実験により明らかとなった.そこで先に複数スピーカを用いた実音源での視線計測方法の構築を目指すこととした. また視線計測装置の較正方法の工夫により,較正後にTVモニターを上部に移動しても,校正時のTVモニター設置位置内で変わらず視線計測が可能であることを確認することが出来た.このことにより本実験時のスピーカ配置などの実験環境の具体的設定が検討出来るようになった.さらに本実験設定のための予備検討を重ねたところ,65インチ相当のTVモニター幅(約197センチ)をメイン実験環境設定とし,そこでの基礎的データの取得を最初に行う方針とした.そのための測定条件として音源の種類,数,音源位置,音源定位時の持続時間,インターバル,呈示回数について検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初の研究計画では基本機器である非接触型の視線計測装置の整備,セッティングをもとに,視線計測を用いた音源定位方法の実際について検討することが主目的とされた.すなわち音の方向感認知能力の評価システムの構築にあったって,種々の測定条件,実験環境の整備が最重要項目であった.本研究では音源定位を視線計測にて行うという特殊性から実際の音源定位時にあたって,音源呈示と同時に時間経過による視線の位置情報を座標として取得可能なプログラムの開発も必要とされた.幸いにもこの特注プログラムの可動も含め,本年度中に複数スピーカを用いた実音源での視線計測方法の基本がほぼ構築された.実験設定においてもTVモニター幅に応じた実音源の設置角度の具体的な数値を検討することが出来,また視線導出範囲の限界についても特注プログラムを用いた予備実験にて明らかにすることが出来た. 本年度は特注のプログラム開発に関して当初,2スピーカによるステレオ音源で疑似音像を任意の位置に呈示する方法の構築も目指していたが,現在疑似音像の設定の仕方については開発業者との間で継続協議中である. 本年度の大きな進展は複数スピーカでの実音源を基本に実験環境の構築を行うことが出来たことである.また角度情報として得られた,視線の位置情報の解析方法についても一部検討することが出来た.したがって概ね研究の進捗は順調に進呈していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討では,複数スピーカでの実音源を基本に実験環境の構築を行うことが出来た.非接触型の眼球運動測定装置については,較正後に校正時のTVモニター設置位置内に何も配置しなくても,その空間内での視線計測が可能となる調整を行うことが出来た.今後はその空間内で効率的に刺激としての音源配置が出来るよう,実験設定状況を整えていく必要がある. 実験の基本方針としてTVモニター65インチ相当の横幅での計測から始めることになったため,その際の測定条件(音源の種類,数,音源位置,音源定位時の持続時間,インターバル,呈示回数)について決定し,若年健常者を対象とした本実験に入って行く予定である.また視線解析データについては1試行ごとに視線の向く角度が1秒間に30回測定が可能であり,数値によるデータもCSVファイルにて出力される.これらのデータ解析方法について,位置情報の数値処理のみならず二次元平面内でどのような方法で位置情報を視覚化して行くかは今後の課題である.これについては眼球運動測定装置の基本ソフトを用いて時間経過に伴う位置情報の動画化がすでに可能であるので,この情報を有効活用していく予定である.また45インチ相当のTVモニター幅(90センチ相当)での条件との比較検討を今後行う予定であるので,この実験環境での測定条件の整備も必要になってくると考えられる.
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Causes of Carryover |
本年度の予定として眼球運動測定機器に伴うプログラム,すなわちは音源呈示と同時に時間経過による視線の位置情報を取得できるプログラムの開発,導入を予定していた.当初は2スピーカによるステレオ音源で疑似音像を任意の位置に呈示する方法の構築を検討しており,その結果に基づいて複数スピーカを用いた実音源での視線計測方法を構築していく予定であった.本年度途中で両方のプログラム作成を目的に前倒し請求を行ったが,その後複数スピーカを用いた実音源での視線計測方法の構築を優先し,そのプログラムのみを使用しての実験環境の整備を継続して来た.疑似音源を用いたプログラム作成についてはその後の開発業者との打ち合わせにより,測定精度について再検討の余地のあることが分かった.以上の理由により,当初の予算よりも多い使用額が次年度に生じたことになる. 次年度は上記の2スピーカを用いた疑似音源でのプログラムも含め,音源呈示に関わる刺激制御のための特注プログラムを追加し,実験状況に応じた刺激システムの整備を行うことで経費を使用していく予定である.また被験者の実験状況の均一化のため,頭頚部固定装置の改良,スピーカ固定のための補助器具の作成などにも経費を使用する予定である.
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