2021 Fiscal Year Research-status Report
運動スキルの異なる細切れ運動が心理生理状態、実行機能および作業成績に及ぼす影響
Project/Area Number |
21K11550
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
曽根 涼子 山口大学, 教育学部, 教授 (50271078)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 運動スキル / 実行機能 / 認知的作業 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、運動が実行機能に及ぼす影響は運動スキルによって異なる可能性が示唆されている。本研究では、学校や職場の休憩時間に取り入れ易いような短時間の運動の場合について、運動スキルが運動後の実行機能や認知的作業パフォーマンスに及ぼす影響について検討した。 本研究におけるクローズドスキル(CS)・オープンスキル(OS)運動は、ラダー(8マス×6コース、放射状に配置)を用いて、ステップの種類、移動する距離や速度を同じにして行わせた。また、各運動スキルの要件を満たすように、CS運動では次に行う運動(コースやステップ)を事前に指示し、OS運動では次の運動についてその直前に予測できないタイミングで中央に置かれたモニター上に1秒間のみ提示される課題の正解によって指示した。被験者は健康な男子学生8名であった。実験は、CSとOSの各条件において、まずベースライン(Base)の実行機能、ワープロ入力作業および暗算作業のパフォーマンス等を測定し、引き続き運動時間が0(安静を保つ場合)、2.5、5および10分間の運動と測定を行った。各運動後の測定時間は約1時間であり、その間にBaseと同じ測定を3回繰り返した。 運動時の心拍数はCS・OS運動ともに140~150拍/分程度であった。ワープロ入力作業のエラー率は運動スキル条件の主効果に有意差があり、CS運動に比べてOS運動の方が低かった。正しく入力された1分間あたりの文字数(3回の平均値)には運動時間要因の主効果に有意差があり、10分間の運動で増加した。それら以外に運動スキルや運動時間の明らかな影響は認められなかった。 以上のことから、ワープロ入力のような認知的作業の質は運動スキルの影響を受ける可能性があることが示唆された。また、5分間程度までの短時間の中強度運動では、その後の実行機能や作業パフォーマンスに明らかな影響はないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のため、実験方法に工夫が必要であったが、目的にそった形で実験を行い、研究を進められたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には、10分間までの短い運動時間の場合について、運動スキルが運動後の実行機能や認知的作業パフォーマンスに及ぼす影響について検討し、運動スキルによって認知的作業の質が異なる可能性を示唆した。ただし、運動時間が短時間であったため、その影響の持続時間は長くはないと考え、各運動スキルにおける4つの運動時間の場合を1回の実験で行うようにしたが、そのことが結果に影響した可能性を完全に否定することはできなかった。また、購入した機能的近赤外分光装置(fNIRS)によって前頭前野の脳酸素化状態の測定を行ったが、運動の場所と測定の場所(実験室)が同じではなかったためにセンサーの脱着が必要であったこと等あり、結果的に信頼できるデータを取得できなかった。 したがって、今後は、運動スキルの影響について実験方法の改善等によって再確認するとともに、fNIRSによる測定を行って検討する。その結果を踏まえて運動の内容を決定し、その運動の影響を職場や学校における活動時間を想定し、日中(休憩時間を定期的に設定)を通して調べる。その結果から、作業や学習のパフォーマンスにプラスに働く運動の行い方を検討する。
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Causes of Carryover |
物品費が予定よりも多く、謝金が不足するため前倒し支払請求をしたが、予定よりも謝金が少なかったことが理由である。次年度使用分は消耗品に使用する予定である。
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