2021 Fiscal Year Research-status Report
スポーツ場面における体罰の実行を抑制する状況要因の解明
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21K11551
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
上野 耕平 香川大学, 教育学部, 教授 (20311087)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 体罰 / スポーツ指導者 / 不正のトライアングル / 犯罪機会論 / 環境心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「子どもを体罰から守るためにはどうすればいいのか?」を学術的「問い」とし,例え指導者が体罰を厭わない(子どものことを考えての体罰は許されると考える)人物であったとしても,そうした人物から子どもを守ることのできる環境,つまりは「体罰が行われにくい状況」を解明することにより,子どもを体罰から守るための具体的方略を提言することを目的としていた。 研究1年目である本年は,公認スポーツ指導者資格を有する指導者158名を対象として体罰が行われた状況について調査を行った。分析の結果,対象者の半数弱にあたる71名の有資格指導者が過去5年間に暴力,暴言,威圧,しごき,セクハラのいずれかの体罰を行っていたこと,そして体罰経験のあった指導者71名の内,6割を超える指導者が保護者ら子ども以外の人物が確認できる状況で体罰を行っていたことが明らかになった。さらに指導者による体罰を助長すると仮定した3つの状況要因(保護者から受けているプレッシャー,体罰を許容するチームの雰囲気(機会),体罰を正当化するチーム風土)の内,暴力,暴言,威圧,しごきに対しては,「保護者から受けているプレッシャー」及び「体罰を正当化するチーム風土」が,セクハラに対しては「体罰を許容するチームの雰囲気(機会)」を含む全ての状況要因が体罰を助長すると解釈可能な結果が得られた。 本研究の結果,指導者に対して勝利や競技能力の向上,人間形成などの結果や成果を求める周囲の状況が,スポーツ指導者を体罰に駆り立てている可能性が窺われた。本結果を受け,来年度以降,指導者が保護者を中心とする周囲から受けているプレッシャーの内容についてより詳細に検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍にありつつも,研究初年度に実施する予定であった調査は実施できた。当初の計画内容は十分にクリアできていることから,研究は順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降について,現時点では基本的に当初の研究計画に則って実施する予定である。ただし,コロナウイルス感染症の状況によっては,調査機会となる「指導者講習会」が中止される可能性があり,調査が遅れる原因となりうる。
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Causes of Carryover |
海外で学会発表を実施する目的で旅費を算出していたが,オンライン開催となったため差額が生じた。 令和4年8月にブルネイで開催されるアジア・スポーツ心理学会において発表を企図しており,その際の参加費・旅費として支出する予定である。
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Research Products
(3 results)