2023 Fiscal Year Annual Research Report
運動時の静脈血管応答に対する一酸化窒素の役割:野菜由来の硝酸塩摂取を利用した検討
Project/Area Number |
21K11561
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
大上 安奈 東洋大学, 健康スポーツ科学部, 教授 (00550104)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 一酸化窒素 / 静脈貯留量 / 静脈還流量 / ビートルートジュース |
Outline of Annual Research Achievements |
運動時において心拍出量増大を維持するためには静脈還流の調節が重要となる.下肢運動時の下腿部静脈還流を評価する実験モデルとして,つま先足立ち運動を行なった時の下腿部容積の変化量を測定し,静脈側から心臓側に移動した血液量(静脈還流)を評価する方法がある.これは,運動に伴う骨格筋収縮が静脈血管を機械的に圧迫することで,静脈血管内の血液を心臓側に戻す筋ポンプ作用を利用した方法である.静脈容量が大きいほど,筋ポンプ作用による静脈還流が多いことから,最終年度は,硝酸塩摂取に伴う一酸化窒素(NO)活性上昇が静脈血管平滑筋を弛緩させるならば,静脈容量が増大し,それに付随して,つま先足立ち運動に伴う筋ポンプ作用による静脈還流も増大するという仮説を検討した.ビートルートジュースとコントロール飲料(プルーンジュース)を摂取する2条件を設定した.各飲料摂取2時間後に,仰臥位から立位姿勢への姿勢変化時およびそれに引き続くつま先足立ち運動時における右下腿部容積の変化を測定した.姿勢変化時の右下腿部容積増加量とつま先足立ち運動時の右下腿部容積低下量をそれぞれ,下肢静脈血液貯留量と静脈還流量として算出した.また,血漿中の硝酸イオン濃度を測定するために,本実験とは別の日に各飲料摂取2時間後に採血を行った.なお,各測定は1週間以上のウォッシュアウト期間を設け,ランダム順で実施した.本研究で得られた結果は以下のとおりである.ビートルートジュース摂取により血漿中の硝酸イオンは上昇したが,姿勢変化およびつま先足立ち運動時の下腿部容積変化は条件間で差は認められなかった.以上の結果から,健康な若年成人において,野菜由来の硝酸塩摂取は,硝酸イオン→亜硝酸イオン→NO経路を介して体内のNO活性を高めるが,姿勢変化時の下腿部静脈血液貯留量および筋ポンプ作用による静脈還流量は変化させないことが明らかとなった.
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