2022 Fiscal Year Research-status Report
異常タンパク質蓄積の低減を指向したプロバイオティクスの研究
Project/Area Number |
21K11578
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Research Institution | Iryo Sosei University |
Principal Investigator |
丹治 貴博 医療創生大学, 薬学部, 准教授 (60453320)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プロバイオティクス / 線虫 / 枯草菌 / 納豆菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢に伴う細胞内異常タンパク質の蓄積は、最終分化した細胞の機能障害をもたらし、ポリグルタミン病やパーキンソン病、アルツハイマー病に代表される神経変性疾患を引き起こす。本研究では、線虫をモデル生物として、神経変性疾患を引き起こす要因である異常タンパク質蓄積を低減するプロバイオティクスを明らかにすることを目的に、その探索を進めた。 2021年度に引き続き、異常タンパク質の蓄積の指標として、①野生型線虫の腸細胞における複屈折性 ② 蛍光タンパク質標識ポリグルタミン(Q40)発現線虫(AM141株)における蛍光タンパク質の凝集 ③ 蛍光タンパク質標識α-シヌクレイン発現線虫(NL5901株)における蛍光タンパク質の蓄積 ④ アミロイドβ1-42筋肉発現線虫(CL4176株)における麻痺 を解析した。 探索の結果、①の実験系で、枯草菌(Bacillus subtilis)および納豆菌(B. subtilis var. natto)株の給餌により、腸細胞における複屈折性が消失した。複屈折性の抑制は、通常餌(大腸菌 Escherichia coli)との混合給餌でも認められたことから、大腸菌給餌により引き起こされる腸細胞の複屈折性を、枯草菌や納豆菌が抑制すると考えられた。また、複屈折性の抑制効果は、枯草菌や納豆菌の培養上清や紫外線照射によって得た死菌では認められず、生きた枯草菌や納豆菌が複屈折性の抑制に重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初は持ち合わせていなかった、蛍光ユニット付きの微分干渉顕微鏡や、画像データの保存に必要なデジタルカメラを揃えることで、研究を滞りなく進める環境が整い、前年度の遅れを取り戻すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
枯草菌・納豆菌による腸細胞複屈折性抑制効果の分子機構を明らかにするため、寿命や健康寿命への関与が報告されている遺伝子(インスリン様シグナル伝達経路や mTOR 経路など)の欠損変異体に対する効果を調べる。多数の遺伝子をスクリーニングする場合には、RNA干渉(フィーディングRNAi)が効率的である。また、複屈折性の増強を示す変異体やRNAi個体に対しても、枯草菌・納豆菌が複屈折性抑制効果を示すか調べる。
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Causes of Carryover |
昨今の物価の急激な上昇により、研究課題の遂行には経費の節約が不可欠であったため、微分干渉顕微鏡で蛍光観察するための蛍光ユニットを取り付ける際に、水銀ランプ、ランプハウス、バーナーを購入せずに実体顕微鏡と共用にすることで費用を削減した。未使用額を次年度以降の実験に回すことで、必要な物品を不足なく購入できることが見込まれる。
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