2021 Fiscal Year Research-status Report
分裂終了細胞における新規な老化マーカーの探索とその機能の解析
Project/Area Number |
21K11605
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
竹中 康浩 日本医科大学, 医学部, 助教 (20586789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平崎 正孝 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (10522154)
柿沼 由彦 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (40233944)
大畠 久幸 日本医科大学, 医学部, 講師 (80256924)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | RNAシーケンス / 心筋細胞 / 老化マウス / トランスクリプトーム解析 / 老化マーカー / 分裂終了細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、老化個体の分裂終了細胞等に普遍的な新規遺伝子マーカーを同定し、分裂終了細胞の老化が個体の老化にどのように寄与しているのかを本老化マーカーの加齢におけるカイネティクス及び機能解析により解明することである。この目的のために本年度は簡便な単離法が確立されている心筋細胞を分裂終了細胞の材料として研究を行った。以下計画書に記載した研究実施計画に沿って当該年度(2021年度)に実施した研究の成果について記載する。 1.老齢マウス心筋細胞の網羅的トランスクリプトーム解析 【目的】老齢および若齢マウス心筋細胞の網羅的トランスクリプトーム解析を行う。 【研究成果】分裂終了細胞に特徴的な新規の老化マーカーを同定するために、まず若齢(14ー16週齢)および老齢(1年齢)のマウス心臓からコラゲナーゼ還流法により心筋細胞を単離した。同時に分裂終了細胞と分裂細胞との比較を行う目的から分裂性の非心筋細胞についても調製した。次に若齢および老齢心筋細胞からRNA精製を行い、RNAシーケンス解析に供した。その結果老齢の心筋細胞においてRNA発現量が増加している遺伝子を多数同定した。一方、非心筋細胞については後述の理由によりRNAシーケンス解析については保留中である。 2.分裂終了細胞に特徴的な老化マーカーの同定とそのカイネティクス解析 【目的】トランスクリプトーム解析の結果から候補分子を絞り込み、分裂終了細胞に特徴的な新規老化マーカーを同定する。【研究成果】現在心筋細胞のRNAシーケンス解析により得られた結果からいくつかのGOタームに分けて候補老化マーカー遺伝子を絞り込んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
既報(Ackers-Johnson et al., Circulation Research 2016, 30;119(8):909-920)をもとに若齢および老齢マウスの心臓から心筋細胞の単離を試みたがいくつかの問題が生じたため条件検討にかなりの時間を要した。具体的には以下の1ー4を中心とする解決すべき課題が発生した。 1)生存率や形態のよい心筋及び非心筋細胞が多く得られない 2)心筋細胞と非心筋細胞の分離が不十分 3)マウス1匹からでは十分な量の心筋および非心筋細胞由来RNAを得られない 4)老齢マウス由来心臓は若齢より組織が固くコラゲナーゼ処理で十分に細胞が分離しない そこで1年目は既存のプロトコルを改良して上記課題を克服し、心筋細胞についてRNAシーケンス解析を行う事ができた。ただし、1については現在でも引き続き検討を行っている状態である。なお、2ー4については以下の方法により課題を克服することができた。 2)メッシュフィルターを用いて心筋と非心筋画分を迅速かつ効率的に分離する 3)複数マウスの心筋又は非心筋由来RNAを混合してRNAシーケンス解析にかける 4)老齢マウスの心臓の場合はコラゲナーゼ量を増やす
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Strategy for Future Research Activity |
以下計画書に記載した研究実施計画に沿って2022年度以降の研究の推進方策について記載する。 1.老齢マウス心筋細胞の網羅的トランスクリプトーム解析 【現在までの進捗状況】に記載の通り、生存率や形態のよい心筋及び非心筋細胞が多く得られないという課題については、引き続きコラゲナーゼ処理液の組成や還流方法などを検討していく。一方、初年度に購入したマウスについては、当該動物管理施設内にて研究分担者の大畠 久幸氏のもと飼育を継続しており、2022年度中に1.5年齢以上の老齢マウスが得られるため、これらのマウスから上記改良法を確立して心筋および非心筋細胞の単離を行いRNAシーケンス解析を実施する。 2.分裂終了細胞に特徴的な老化マーカーの同定とそのカイネティクス解析 1年齢マウス心筋細胞から得られたRNAシーケンス解析データについては、研究分担者の平崎 正孝氏により解析が進められている。1.5年齢以上の老齢マウスについても同様にデータ解析を実施し、老化マーカーの絞り込みを行っていく。 3.培養細胞を用いた新規老化マーカーの老化における機能解析 上記候補老化マーカー遺伝子が特定され次第、培養細胞等を用いて新規老化マーカー分子の機能を解析する。遺伝子導入方法、一般的な細胞老化マーカー測定法、酸化ストレスやDNA損傷レベルの測定方法等については既に確立しており、直ちに実施が可能な状態である。 なお、問題点としては、当初各群複数サンプルでRNAシーケンス解析を行って遺伝子発現量の各種統計学的なデータ解析を行うことを計画していたが、初年度に立ち上げのため予想以上に経費がかかってしまったため、これを行うことが出来なくなった。よってn=1で得られた結果をもとに候補遺伝子を抽出し、定量的PCR法などにより統計学的なデータ解析を行っていく。
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Causes of Carryover |
(理由) 初年度の研究立ち上げのための試薬等の購入が計画していた以上に多くなってしまった。また実験に使用する老齢マウスの在庫が動物繁殖業者において希少な状態となっていることから、1匹あたりの価格が予想していた以上に高くなっており、動物購入に予定以上の経費がかかってしまった。これにより、当該度中にこのマウス由来の心筋細胞を次世代シーケンス解析するための予算が足りなくなってきたため。 (使用計画) 令和4年度に購入予定であった試薬や老齢マウスを令和3年度に大部分購入したため、令和4年度に請求する額は減るものの、研究遂行する上で大きな問題はない。また令和4年度の計画は、主に現在所属機関にて飼育中の老齢マウスからの心筋細胞採取とその次世代シーケンス解析が中心であり、当初の研究目的通り、非分裂性細胞(心筋細胞)の老化における遺伝子発現解析と個体におよぼす効果の解明を目指す。
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