2023 Fiscal Year Annual Research Report
高精度間接熱量測定で挑む食事誘発性熱産生の再評価~自律神経と脂質吸収に着目して~
Project/Area Number |
21K11610
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
海老根 直之 同志社大学, スポーツ健康科学部, 教授 (30404370)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福岡 義之 同志社大学, スポーツ健康科学部, 教授 (20265028)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 食事誘発性熱産生 / 間接熱量測定 / 脂質酸化 / 糖質酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの1日の総エネルギー消費量のおよそ1割を占めるとされる食事誘発性熱産生(Diet-Induced Thermogenesis: DIT)であるが,消化吸収にまつわる現象であるため,その詳細には不明な点が残されている.脂質摂取に由来するDITは,摂取エネルギーの0~3%と他のエネルギー産生栄養素に比べて著しく低く見積もられている.この基となった知見の取得条件を最新の研究手法と照らし合わせると大きな乖離が認められる.そこで本研究では,高精度な測定システムを構築し,DIT現象を再評価することを目的とした. まず,DITは物理的運動によって生じるエネルギー消費に比べるとごく小さな反応であるため,測定中の体動を効果的に抑制する術を整備した.また,市販の冷凍炒飯をベース食とすることで日常の食事に近いかたちで測定ごとの食事組成のばらつきを抑止する試験方法を考案した. 若年男性12名を対象とし,ベース食170gに対するオイル15gの添加がDITに及ぼす影響を評価した.オリーブオイルまたは中鎖脂肪酸オイルを添加する計3試行の比較試験とし,エネルギー代謝の測定には質量分析器とフード法を組み合わせた高精度なシステムを運用した.いずれのオイル添加食においてもエネルギー消費量は増加したが,既報のようなオイル種による明確な差は認められなかった.一方,呼気ガスデータから算出された基質酸化量については,中鎖脂肪酸オイルが有意に高値を示し,代償的に糖質酸化が抑制される様子も観察された.別途,オイル15gを封入したカプセルを摂取させる脂質単独摂取試験を実施したところ,速やかに吸収される中鎖脂肪酸オイルを摂取した際の累積DITがオリーブオイル摂取時に比べ4割程度上回ることを確認した.本研究の結果,脂質は摂取の仕方により食後のエネルギー消費に様相の異なる作用を生じさせることが明らかとなった.
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