2022 Fiscal Year Research-status Report
筋の健常性維持システムにおけるレニン・アンジオテンシン系の役割と筋疾患治療応用
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21K11624
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
岩波 純 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (90624792)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金川 基 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (00448044)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レニン・アンジオテンシン系 / 筋疾患 / 筋再生 / 筋萎縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
アンジオテンシンIIの受容体の一つである2型(AT2)受容体は、これまで骨格筋で発現していないと考えられてきたことから研究対象ではなかったが、AT2受容体が筋衛星細胞に発現していることが報告され、筋再生に影響していることが考えられた。そこで、骨格筋へのAT2受容体の影響を検討した。 筋再生への影響を検討するため、AT2受容体欠損マウス(AT2KO)にカルディオトキシン(CTX)を投与し、筋線維の状態を検討した。CTX投与の5日後筋再生の指標となるEmbryonic myosin陽性率は、野生型マウス(WT)では全体の80%だったのに対して、AT2KOでは55%程で低下していた。その陽性細胞の筋線維の大きさは、WT、AT2KOで同程度であった。また、中心核の割合は、WT、AT2KOで変化は認められなかった。長期の筋傷害・再生を検討するため、CTXを3週間おきに3回投与し、筋組織を観察したところ、WTに比べてAT2KOで筋線維が縮小する傾向が認められた。以上の結果からAT2受容体が筋再生に影響していることが示唆された。 筋萎縮へのAT2受容体の影響を検討した。慢性腎障害で筋萎縮が誘導されることから、アデニン過剰投与による腎障害モデルを用いて検討した。腎機能を生化学検査で評価したところ、アデニン投与によりWT、AT2KOでBUN、CREの上昇が認められたが、特にAT2KOで高値を示した。筋萎縮への影響では、通常食ではWT、AT2KOの筋線維面積に変化は認められなかったが、アデニンを投与することで両マウスとも筋断面積の縮小が認められた。この縮小はWTに比べてAT2KOで減弱する傾向であった。この時のAT2受容体の発現を検討したところ、アデニンを投与していたWTの骨格筋で増加していた。以上の結果から、腎障害からの筋萎縮に関して、AT2受容体は萎縮を促進する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筋傷害からの筋再生および筋萎縮モデルの作成、検討方法は金川教授の助言の下確立しており研究を進められている。 CTX投与による筋傷害からの再生については、これまで投与から3~14日と短期間での検討を中心に行ってきたが、長期間での検討方法として2か月ほどの筋再生についても助言を受け検討を進めている。短期でのEmbryonic myosin陽性率の減少や長期での筋線維の縮小などAT2受容体が筋再生に関与していることを示す結果が得られている。 筋萎縮モデルについて、現在0.2%アデニンを餌に混ぜ4週間投与することで腎障害を誘導して作成している。これ以上の濃度では死んでしまうマウスもいたため、現在の濃度で腎障害を作成しているが、腎機能を調べたところBUNやCREが両マウスで上昇しており、特にAT2KOで上昇が強かったことからAT2受容体が腎障害・機能に影響していることが示唆された。更に骨格筋の萎縮について検討したが、WTに比べてAT2KOで縮小している筋線維が減少していた。また、WTの骨格筋においてAT2受容体発現がアデニン投与により増加していたことから、筋萎縮にAT2受容体が関与していることが考えられるが、その原因を検討中である。腎障害の評価については、腎障害を専門とする先生に相談して解析を進めている。 AT2受容体のサルコペニアへの影響を検討するため、AR2KOの高齢マウスを準備している。現在飼育しているマウスから半年、1年齢のマウスのサンプルを採取している。今後サンプル数の増加が必要であるが、マウスの数も十分なので高齢マウスのために適時準備、採取している。 筋衛星細胞の単離方法は教わっており、現在WTの衛星細胞の染色などを行っている。 当研究室で飼育している筋ジストロフィーモデルマウスの骨格筋でのAT2受容体の発現を調べたところ、WTに比べて10倍以上の増加を示す可能性が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでと同様にAT2KOを使用し、筋傷害・再生、筋萎縮、高齢マウスでの筋線維への影響を中心に検討し、AT2受容体の影響を調べる予定である。これらのモデルにAT2受容体刺激薬を投与し、骨格筋維持・改善効果があるのか検討する。腎臓障害のマウスの骨格筋では炎症性サイトカインの発現が増加していること、更にWTよりもAT2KOで発現が増強していたことから、これまで検討してきたAT2受容体刺激により抑制される炎症、酸化ストレスなどの産生が影響していることが考えられる。これらのマウスから採取した筋組織でのシグナル伝達をウェスタンブロットで検討することで、AT2受容体の骨格筋への影響の詳細なメカニズムを明らかにする。 WTからの衛星細胞の単離を習得したが、AT2KOからの衛星細胞については検討が進められていないので、今後、AT2KOから衛星細胞を単離・培養し、増殖能、分化能、細胞死への影響を検討する予定である。 また、現在当研究室で使用している筋ジストロフィーモデルマウスの骨格筋でのAT2受容体の発現をリアルタイムRT-PCRで調べた。その結果、WTに比べて筋ジストロフィーマウスでは、AT2受容体の発現が10倍ほど増加していた。上記のモデルマウスと同様に、AT2受容体刺激薬が筋ジストロフィーモデルマウスの骨格筋維持・改善に効果があるのか検討していく。
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Causes of Carryover |
学会などのための旅費での使用がなかったため、また、他の筋ジストロフィーモデルマウスが増えたため、そちらの研究が多くなってしまったため、本研究での試薬、消耗品の使用が減り、繰越金がでた。繰越金となったものは、今後増えてくるマウスの飼育費、本研究の試薬、消耗品に当てて使用する予定である。また、学会などの旅費などに使用する予定である。
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