2022 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質代謝変動による高次脳機能低下を抑制する食環境の構築
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21K11628
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
福渡 努 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (50295630)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アミノ酸 / 脳神経科学 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
トリプトファン代謝産物キヌレン酸が脳内で増加すると,神経伝達物質の放出抑制を介して高次脳機能を低下させる.本研究では,キヌレン酸産生機構がアミノ酸代謝と関連することに着目し,末梢のアミノ酸代謝変動が脳内キヌレン酸産生を介して高次脳機能におよぼす影響を明らかにすることを目的としている.令和4年度には,令和3年度に引き続き,末梢のアミノ酸代謝変動が脳内キヌレン酸産生におよぼす影響を明らかにするため,異化代謝亢進モデル動物について検討した. エネルギー消費量増大に伴う異化代謝を亢進させるために,ラットにチロキシン含有食を与え,異化代謝の程度が軽度,中度,重度となるラットを作成した.チロキシン投与量依存的に筋委縮およびアミノ酸異化代謝が亢進した.チロキシン投与により,肝トリプトファン-NAD経路の初発酵素トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ活性が低値を示したものの,肝,腎,骨格筋におけるキヌレニン,キヌレン酸含量および尿中キヌレン酸排泄量が高値を示したことから,末梢トリプトファン代謝が亢進した.しかし,血中キヌレニン濃度は変動せず,脳キヌレニン,キヌレン酸濃度も変動しなかった.以上の結果は,末梢トリプトファン代謝が亢進したものの,肝,腎,骨格筋等の組織でキヌレニンからキヌレン酸への代謝も亢進したため,血中キヌレニン濃度の上昇が抑制され,脳内キヌレン酸産生が影響を受けなかったことを示唆する.本研究成果は,肝および骨格筋におけるトリプトファン代謝を亢進させることにより,脳キヌレン酸濃度上昇に伴う高次脳機能低下を防ぐ可能性を示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り,異化代謝亢進モデルとして,令和3年度にデキサメタゾン,令和4年度にチロキシンを投与したラットを用い,タンパク質・アミノ酸代謝変動,脳内キヌレン酸産生におよぼす影響とその作用機序を明らかにすることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
1. タンパク質およびアミノ酸代謝変動と脳キヌレン酸産生との関係を明らかにするために,異化代謝亢進モデル動物および腸疾患モデル動物における末梢のトリプトファン代謝変動および脳内キヌレン酸産生への影響とその作用機序を明らかにする. 2. 食餌による脳内キヌレン酸産生抑制機序を明らかにするため,肝障害モデル動物にキヌレン酸産生抑制作用をもつアミノ酸を高濃度に含む食餌を与え,末梢のトリプトファン代謝および脳内キヌレン酸産生におよぼす影響について明らかにする.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により,参加を予定していた海外での国際学会の開催が延期となったため,計画していた旅費を執行せず,次年度使用額が生じた. この次年度使用額を実験に要する物品費に充てることにより,より詳細な実験を実施する予定である.
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