2022 Fiscal Year Research-status Report
脂質・鉄代謝異常の変化に着目した神経変性疾患の新規病態発症メカニズムの解明
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21K11636
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
松本 直樹 帝京大学, 薬学部, 助教 (40447834)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ホスホリパーゼ / 翻訳後修飾 / 機能制御 / 神経変性疾患 / 鉄代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは、DDHD1(ホスホリパーゼA1、PLA1)が内在性カンナビノイドの産生酵素であり、その変異はある種の神経変性疾患を引き起こすことを明らかにした。DDHD1の機能調節の異常も、脂質代謝の恒常性破綻等を介して、神経変性疾患をはじめとする様々な加齢関連疾患の発症や病態の進展に深く関わると想定される。しかしながら、その遺伝子発現や酵素活性の調節機構は明らかでない。 私たちは、DDHD1が血清存在下、細胞内で複数箇所のリン酸化修飾を受け、ある特定の部位のリン酸化が酵素活性を負に制御する可能性を見いだした。また、同部位におけるリン酸化修飾がDDHD1の接着点への局在を促進することも明らかにした。さらに、DDHD1のリン酸化酵素や脱リン酸化酵素を複数同定し、DDHD1におけるその修飾部位を特定した。DDHD1がリン酸化以外の翻訳後修飾を受けることも見つけている。 翻訳後修飾以外のDDHD1の機能調節としては、鉄・銅・亜鉛等の生体内微量金属の代謝異常が影響を与える可能性を明らかにした。特に、鉄イオンがDDHD1の遺伝子発現と酵素活性を、個別に調節することを見つけている。この酵素活性の調節は、同じ細胞内型PLA1であるDDHD2には認められない特徴であり、軽微ではあるものの、鉄イオンと相互作用する、DDHD1のアミノ酸残基の候補を複数同定した。 今後は、まだキナーゼが未同定のリン酸化部位も存在するため、引き続き同様の手法にて解析を進める。新しい翻訳後修飾がDDHD1の機能に、どのように関わっているか調べ、その修飾酵素、部位も同定する。鉄イオンによるDDHD1の遺伝子発現や酵素活性を調節する分子メカニズムの詳細を明らかにする。 本研究は、脂質や鉄の代謝異常の変化に着目することにより、神経変性疾患等の未知の病態発症メカニズムの解明につながる可能性があり、大きな波及効果が期待できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画を若干変更したが、リン酸化に代表される翻訳後修飾や、鉄イオンをはじめとする生体内微量金属が、細胞内型ホスホリパーゼA1、DDHD1の機能(酵素活性や細胞内局在)を制御することを、はじめて明らかにした。加齢や神経変性疾患により、脳内に鉄は蓄積する傾向にあり、非常に興味深い。また、さらなる機能の制御が予想される新たな現象をいくつか見つけてきており、今後の研究成果が期待できる。 以上の理由から、中間年度の成果としては、おおむね順調に研究は進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた研究成果を基礎に、今後はリン酸化修飾に加え、新しく見つけた翻訳後修飾が、DDHD1の機能(主に、酵素活性、細胞内局在、安定性、タンパク質間相互作用等)にどのような影響を及ぼすか解析する。リン酸化とのクロストークも可能な限り解析する。 鉄がDDHD1の機能をどのように制御するか、またDDHD1が鉄代謝にどのような影響をもたらすか、鉄とDDHD1の関係を詳細に検討し、鉄代謝におけるDDHD1の役割を明らかにする。同じ細胞内型PLA1であるDDHD2との比較も行う。
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Causes of Carryover |
研究の進展により、当初の研究計画を若干変更したが、進行に大きな変化はない。 使用しなかった研究費はそれほど大きな額ではないため、最終年度に併せて、試薬や器具、機器等の購入に使用する。
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Research Products
(9 results)