2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K11641
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
坪山 宜代 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所 国際栄養情報センター, 室長 (70321891)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 災害 / 栄養 / 備蓄 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は自然災害やCOVID-19等のパンデミック時において、食・栄養不足を回避するために家庭での食料備蓄を促進することを目的としている。依然として進まない家庭備蓄に対する意識を変えるために、「義務的」な後ろ向き意識を伴う備蓄ではなく、むしろ「備えたくなる備蓄」に転換させるために、旧来とは異なる新しい切り口のアプローチに向けた調査(質的研究含む)および開発を実施する。これにより、家庭での食料備蓄を促進させ災害時・緊急時の栄養不良を軽減させるとともに、平時の食・栄養への意識を高めることも目指す。 2年度目である2022年度は、食料備蓄に関連する要因の探索と「備えたくなる備蓄」の調査を開始した。特に、本研究のメインテーマである備えたくなる備蓄開発につながる調査を実施した。昨年度に設計し、医薬基盤・健康・栄養研究所の研究倫理審査委員会に申請し許可を受けた調査票をもとに、オンラインでの回答フォームを作成した。質的研究として具体的な回答を得ることが目的であるため、オンラインで開催される学会の参加者や対面で開催される学会において調査への参加呼びかけを行った。オンラインにて、自由回答フォームに答えてもらう形で、「どんな災害食が欲しいか」「どうして日本の家庭備蓄が増えないと思うか」「家庭備蓄をUPするにはどのような方法や仕組みが欲しいか」について調査を行っている。 また、被災時の食・栄養問題、健康課題の実態について既存データの分析を行い、男性においては魚介類の摂取頻度が高くなるほど、被災2年後の肥満のリスクが低下することを国際誌で報告した。 さらに、ワクワクする備蓄につなげるための取り組みとして、日本災害食学会が認証する日本災害食とJAXAが認証する宇宙日本食の認証基準を質的に比較分析し、常温保存性、衛生管理体制、強靭な包装容器、簡便な食事等に共通点があることを国際誌で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では家庭備蓄が進まない現状を変えるために、「備えたくなる備蓄」に意識転換させ、旧来とは異なる新しい切り口のアプローチを探索することを目的としている。 2022年度は、研究所の大阪移転などがあり、本務以外の作業が多く発生していた中においても滞りなく研究を進めた。また、新型コロナウイルス感染症による感染拡大を考慮し、対面での接触を避け、感染拡大が生じない計画を優先し、災害時の肥満リスクを軽減する食品の同定や宇宙食と災害食の類似性の研究をすすめ国際誌に報告した(Tsuboyama-Kasaoka, Uedaら. Inverse association of seafood intake with becoming overweight among survivors of the Great East Japan Earthquake. IJDRR. 2022 他2報)。 また、感染拡大への配慮を行い、予定していた調査をウェブ調査に切り替え、対面での調査を回避する方法で調査をスタートさせた。 以上より進捗状況を評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に引き続き、食料備蓄に関連する要因の探索と「備えたくなる備蓄」の調査を進める。 本研究のメインテーマである備えたくなる備蓄開発につながる調査は、当初は2021年度からインタビュー調査を行う予定であった。しかし、対面でのインタビュー調査は新型コロナウイルス感染症の感染拡大を招く可能性が考えられるため、オンラインによる調査にきりかえて調査を行った。「どんな災害食が欲しいか」「どうして日本の家庭備蓄が増えないと思うか」「家庭備蓄をUPするにはどのような方法や仕組みが欲しいか」について、自由回答フォームに答えてもらう形で調査をスタートさせた。そのため、今後は、オンライン調査で得られた自由回答のテキストデータを用いて質的記述的解析を行い、食料備蓄促進につながる糸口を探る予定である。また、当初予定していたインタビュー調査については、新型コロナウイルス感染症の感染状況を注視し、実施可能か否かを丁寧に検討する。
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルス感染症の蔓延により、予定していた対面での調査を実施しなかったため。具体的には、国内外の備蓄成功事例について、現地を訪問しての調査を予定していたが感染拡大を回避するために訪問しなかった。また、成功事例について対面インタビュー調査も予定していたが実施しなかった。しかしながら、研究成果の遅延を招かないため、オンラインに切り替えて行った調査で対象者の数を増やすことで、より幅広い意見の収集に努めた。オンラインで行ったため、出張費やその他の必要経費を使用しなかった。
(使用計画)2023年度には、新型コロナウイルスの感染法上の分類が変更されることから、対面で行う予定であったインタビュー調査については実施可能か否かを丁寧に検討し、実施可能と判断できた場合には、現地への出張費やその他関連費用を予定している。しかし、代替案として実施しているオンラインを用いたウェブ調査で、有用な情報が得られつつあるため、引き続きオンラインを中心とした形でより拡大した調査フォーマット作成、対象者への謝礼等を予定している。 それらの成果を国内のみならず海外の英文誌においても研究成果を発表する予定であるため、英文校正、査読費用、掲載料等にも使用を予定している。
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