2021 Fiscal Year Research-status Report
SOCS3欠失マウスにおける食事誘発性炎症がGVHD重症化に及ぼす役割
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21K11671
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
石黒 創 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (10826283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牛木 隆志 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (80579152)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | GVHD / 高脂肪食 / SOCS3 |
Outline of Annual Research Achievements |
移植片対宿主病(GVHD)は日本と欧米でその発症率に差異がある。その理由としてHLAなどの遺伝的背景以外に、食生活の違いが影響している可能性が考えられる。 申請者らはマウスSyngenic骨髄移植モデルにおいて、サイトカインシグナル伝達阻害因子(SOCS) 3ノックアウト(KO)血球は、単独での炎症誘発作用はないが、炎症modulaterに対する強力な炎症加速作用を有する可能性を見出した。そこで実際に、homogeneousなSOCS3全身KOマウスに対し、炎症modulaterとしてhigh fat diet(HFD)を投与したところ、末梢血中の顆粒球増加と共に脾腫を来たし、致死的経過を辿った。また、肝臓、皮膚に高度の炎症細胞浸潤を来たし、その病理像には肥満にみられる典型的な病理像はなくGVHDに類似していた。 栄養素を介した免疫変調は免疫学的なトピックでもあり、SOCS3KOマウスを用いてGVHDへの食事の影響を明らかとすることで、食事を介してGVHDの重症化を軽減することが可能となる。ひいては、造血幹細胞移植成績の向上につながる知見が得られる可能性がある。 本年度我々は、条件検討のために、野生型のマウスを用いて数通りのGVHDモデルを作成し、コントロール食もしくは高脂肪食を投与したところ、いずれの群でも、高脂肪食投与でGVHDが重症化することが判明した。栄養成分の違い、ひいては食生活の違いが、GVHDの病態を悪化させることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野生型のマウスを用いてGVHDモデルを作成し、通常食もしくは高脂肪食を投与したところ、高脂肪食群でGVHDが重症化したことが判明した。条件検討が適切に遂行できていると考える。 今後はSOCS3ノックアウトマウスを用いてGVHDモデルを作成する。このことによりGVHDの重症化がさらに進行するか、を解明し、重症化する場合にはそのメカニズムについて詳細な検討を行う。その遺伝子改変マウスも十分に繁殖できており、実験の遂行に問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はSOCS3ノックアウトマウスをドナーとしてを用いて、血球特異的なSOCS3ノックアウト状態としたGVHDのモデルを作成する。このマウスにおいてGVHDの重症化がさらに進行するか、生存曲線やGVHDスコアを用いて評価をおこなう。 GVHDが重症化するようであれば、そのメカニズムについて検討を行う。骨髄、血漿および腸管などにおけるサイトカインやケモカインなどを含めた解析をqPCRやELISA、FACSなどを行う。以上の結果を踏まえ、高脂肪食がどのような機序で血球特異的なSOCS3ノックアウト状態としたGVHDモデルが、炎症を悪化させるかをより詳細に検討し、メカニズムを明らかとした上でその結果について論文投稿を行う。
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Causes of Carryover |
本年は野生型を用いたGVHDモデルの作成およびそのマウスの長期観察をする必要があったこと、また、SOCS3ノックアウトマウスを繁殖させる必要があったことから、比較的高額な機器や試薬を購入する必要性に乏しかったため、想定よりも使用金がかからず繰越すことになった。次年度は詳細な検討を行うことができるため、この繰越金も使用して種々の実験を予定している。
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