2021 Fiscal Year Research-status Report
運動負荷時の動脈圧波形解析による血管機能評価法の確立と心血管系リスク予測への応用
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21K11703
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
宮井 信行 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 教授 (40295811)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有田 幹雄 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 名誉教授 (40168018)
森岡 郁晴 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 教授 (70264877)
牟礼 佳苗 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (90268491)
寺田 和史 天理大学, 体育学部, 教授 (40454798)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 運動負荷試験 / 中心動脈圧波形 / 血管機能 / 動脈硬化 / 心血管系リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、これまでに運動負荷時の動脈圧波形の解析に基づく血管機能の評価に関する種々の検討を行ってきている。本研究では、多集団のスクリーニングに適用するための簡易な検査法とその評価基準を確立すること、さらに、動脈圧波形の指標と動脈硬化および血管障害のマーカーとの関連を解析することで、心血管系リスクの予測に対する有効性を明らかにすることを目的とする。 今年度は、県内の複数地域に在住する一般住民を対象とする地域疫学研究のなかで調査を実施し(調査参加者の総数は約730名)、安静時を中心とする動脈圧波形の計測、血管障害のマーカーおよび各種の危険因子についてのデータ収集を行った。現在、既存データとの統合作業を進めながら、一部のデータを用いて、喫煙、高血圧、脂質異常、耐糖能異常、高尿酸血症などの危険因子の有無による動脈圧波形の特徴を解析するとともに、性差や年齢差を加味した基準値の作成に向けた検討を行っている。 現時点までの成果として、ステップテストによる簡便な運動負荷中および終了後に計測した動脈圧波形の反射波成分の指標が、上腕-足首間脈波伝播速度(baPWV)、微量アルブミン尿、高感度CRPなどと良好な相関を示すこと、さらに、血圧高値、脂質異常、高血糖が重複する者や、喫煙量が多い者では、危険因子を保有しない者に比べて、運動負荷中に反射波成分が顕著に上昇し、終了後も回復が遅延することを認めている。さらに、危険因子の非保有者のデータを用いて検討しところ、動脈圧波形の反射波成分の指標は、男女差を伴いながら加齢とともにほぼ直線的に上昇する傾向にあることが示された。 今後は、縦断的な解析のためのデータセットの構築を行い、本検査法に基づく血管機能の判定結果が、その後の動脈硬化および血管障害のマーカーの変化とどのように関連するかを検討し、心血管系リスクの予測における有効性を検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、県内の複数地域の住民を対象とする地域疫学研究のなかで、分析に必要なデータ収集を行っている。今年度は、新型コロナウイルス感染症による調査規模の縮小や項目の削減などの影響によって、想定していたデータ数の確保に至っていない。その中でも、既存のデータを活用しながら、運動負荷時の動脈圧波形と動脈硬化や血管障害のマーカーとの関連の分析を少しずつ進めており、一定の成果が得られている。ただし、血管機能の簡易検査法と評価基準の確立の分析については大規模なデータ数が必要となるため、当初の目標に到達できていない状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も引き続き、県内の複数地域の住民を対象とする地域疫学研究の中でデータ収集を進めていきたいと考えている。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響によって調査が円滑に実施できるかが不透明な状況にあるため、対象地域の自治体との間で実施時期や方法を協議し、計画通りに遂行できるように調整するとともに、必要に応じて計画を修正していくこととする。また、データ数が十分に確保できない場合も、既存のデータを活用しながら、運動負荷時の動脈圧波形と動脈硬化および血管障害のマーカーとの関連、簡易な検査法と基準値の確立に向けた予備的な検討を進め、その研究成果を国内外の学会で発表または論文として公表していく計画である。
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Causes of Carryover |
当初は国内外の学会への参加を計画していたが、新型コロナウイルス感染症の影響により開催がオンライン形式に変更になったことなどから計上した経費に余剰が発生した。繰越額については、次年度のデータ収集に係る調査補助者等への謝金、各種検査に係る費用および消耗品の購入等に使用する計画である。また、研究成果のまとめと成果の発表に必要な経費に充てたいと考えている。
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