2021 Fiscal Year Research-status Report
線虫腸細胞内ペプチド含有顆粒を若さの指標とした健康寿命促進因子の探索
Project/Area Number |
21K11706
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
大橋 綾子 (小林綾子) 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (90272484)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オルガネラ機能 / 腸内顆粒 / ペプチド / ABC輸送体 / 線虫 / 健康寿命 / 質量分析 / 精製 |
Outline of Annual Research Achievements |
寿命・老化の研究でも知られるモデル生物 線虫C elegansにおいて、幼虫の後期から成虫の初期の腸細胞内に出現する機能未知の顆粒(細胞内オルガネラ)を見出しました。この顆粒は、成虫の加齢とともに消失してしまいます。本研究課題は、この顆粒を「若さの指標」と捉え、顆粒に内包される因子を同定し、「健康寿命促進因子」の候補として、健康寿命との関わりを調べるものです。 具体的には、(1)注目する顆粒(HEBE顆粒と命名)が内包する分子を同定し、結果をもとに顆粒の機能を類推します。続いて、(2)顆粒内包分子がこの顆粒の維持と健康寿命に与える影響を調べます。これらの研究を通じて、顆粒の維持を指標とした「健康寿命促進因子」の探索系の構築を目指します。 初年度は、研究計画にあげた「HEBE顆粒内包分子の同定~顆粒精製と内包分子の解析」を進めました。計画当初は、顆粒に取り込まれる蛍光標識ジペプチドを用い、セルソーターにより蛍光標識された顆粒を粗精製する予定でした。しかし、顆粒表面に発現させたGFP融合膜タンパクへの抗体・磁気ビーズによる免疫磁気精製により、HEBE顆粒を回収することができました。 また、内在性分子の探索とは独立して、寿命促進候補医薬品に注目した研究も着手しました。その第一歩(予備実験)として、寿命促進効果が期待される医薬品(代表的なタンパク分解酵素阻害剤)を選び、腸細胞内の顆粒に及ぼす影響を観察しました。線虫の飼育環境と阻害剤の投与方法により、腸内顆粒の状態が変わることを見出しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画(1)で予定していた顆粒の精製がセルソーターではなく、抗体磁気ビーズ法で可能となったため、計画は概ね順調に進められる状態となりました。質量分析後のデータ解析は、時間や手間はかかるが比較的単純な作業でもあり、実験補助者の雇用により進むことが期待されました。しかし、コロナ禍もあり、条件が合う適した人材を確保することができませんでした。予算を繰り越したのも、予定していた実験補助者の確保ができなかったことがその理由となっています。 最終年度に予定していた医薬品を用いた研究をスタートさせました。トータルとしては、概ね順調に進展しています。
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Strategy for Future Research Activity |
注目する若さの指標の候補となる顆粒を回収することができたので、次年度は、ペプチドなど低分子を中心に質量分析を進めていきます。内在する因子が線虫の遺伝子産物に由来するのか、餌とする大腸菌に由来するのか、などを明らかにしていく予定です。 また、寿命促進が期待される医薬品に注目した研究も着手しました。予備実験から、線虫の飼育環境と阻害剤の投与方法によって、腸内顆粒の状態が変わることを見出しましたので、次年度はこれらの結果を踏まえて、系を確立していきます。
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Causes of Carryover |
本年度は、実験補助員への人件費、ならびに実験に伴う試薬類の物品費が使用されなかったため、次年度は、実験補助員の雇用内容の見直し(単純な生物飼育作業とデータ解析作業を分けるなど)も考慮して、計画的に使用できるように努めます。
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