2021 Fiscal Year Research-status Report
怒りの感情抑圧が精神的・身体的異常を引き起こすメカニズムの解明
Project/Area Number |
21K11714
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
高橋 優 川崎医科大学, 医学部, 講師 (40551049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 武士 川崎医科大学, 医学部, 教授 (60335594)
上野 浩司 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (60725068)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 怒り / 感情 / 抑圧 / マウス / 行動実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
怒りという感情の抑圧による身体的症状(倦怠感や全身の痛みなど),精神的症状(不眠、不安、焦燥など)を訴える患者は多い。特に日本人は集団の和を重んじるため,社会において怒りなどの陰性的な感情を強く抑制する傾向が高い。しかし,怒りの感情抑圧による身体症状への影響のメカニズムが不明であるため,病因に基づいた生物学的検査や治療薬の開発が出来ていない。我々は実験動物であるマウスにおいて,慢性的に怒り行動を阻害すると社会的行動や脳の神経細胞に異常が生じることを発見している。本研究では,これまでの研究成果を応用させ,怒りの抑圧による身体的症状と精神的症状への影響を明確にするために進めている。マウスの怒り(攻撃的行動)を毎日抑制させると,3週間かけて少しずつ体重の減少がみられた。これは怒りの抑制がストレスになっていることを示唆している。さらには,マウスの怒り(攻撃的行動)を毎日抑制させるとテールサスペンション試験での行動が変化した。 怒りは原始的な感情であり,「危険にさらされた」という意識が怒りを喚起している。怒りは大脳辺縁系を刺激してカテコールアミンの放出促進や,扁桃核から副腎皮質神経系の活性化,独特の表情の変化など複数の経路で反応を生じさせる。そのため,怒りの抑制は円滑な集団生活を維持するために重要であり,社会的な動物に存在している脳機能であると考えられる。しかし,怒ることで発生した大脳辺縁系や副腎皮質神経系の活性化を抑え続けることが生体内にとってどういった影響を与えることになるかは不明のままであったが,本研究の結果は怒りの抑圧が身体的にも精神的にも影響を与えることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
攻撃的マウスの作成には情報収集と予備実験に多くの時間と労力が必要だったが,令和3年度後半には終了した。本格的に令和3年度後半から「怒りの感情抑制ストレス負荷」を実施することができている。ストレス負荷後のマウスの状況を調査するための行動実験も順調に終了した。マウスからのサンプル採取も間もなく終了予定であり,令和4年度に向けて順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
①行動解析後のマウスから材料採取 (担当:髙橋・石原) :全ての行動実験の終了後,全てのマウスから血液を採取する。血液は遠心分離後,血清をサンプルとして冷凍保管する。血液採取後,マウスを4%パラホルムアルデヒドで灌流固定し,脳を取り出す。脳はクリオスタットを使用し,冠状断の凍結切片を作成する。 ②血液中のストレスホルモン濃度の測定 (担当:石原) :怒りの抑圧によって副腎皮質ホルモンの量が増加していることを確認するために,血中のコルチゾール,コルチコステロン,コルチゾン等の量を測定する。 ③組織学的解析によるマウス脳における活性化部位の探索 (担当:髙橋・北村) :怒りの抑圧によって偏桃体が活性化していることを確認するために,マウス脳を抗c-fos抗体を使用して免疫組織学的に染色する。その他の脳領域でも異常な活性化が生じていないか染色,観察する。また,怒りの抑圧による慢性的なストレスによって海馬の神経発生に異常が生じていないか確認する。
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Causes of Carryover |
使用期限の短い試薬キットや免疫染色の試薬などの購入を次年度にすることにしたために次年度使用額が大きくなっている。さらには,コロナウイルス感染症拡大のため学会参加が計画通りに行えず情報収集などが出来ていないために次年度使用額が大きくなっている。 次年度使用額は情報収集を行うための学会旅費や特注の行動実験機器の購入,試薬キットの購入に充てる計画である。
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Remarks |
研究代表者(高橋)researchmap(https://researchmap.jp/7000027714) 研究分担者(石原)researchmap(https://researchmap.jp/read0074436) 研究分担者(上野)researchmap(https://researchmap.jp/hiroshiueno/)
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