2021 Fiscal Year Research-status Report
オキシトシンによるアルコール依存障害の減弱メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K11726
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
日出間 志寿 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (30241558)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オキシトシン / アルコール嗜好性 |
Outline of Annual Research Achievements |
オキシトシンシステムの欠損によってアルコール嗜好性が高まるかを明らかにするために、オキシトシン欠損マウス(OXT KO), オキシトシン受容体欠損マウス(OXTR KO)を用いて二瓶選択試験を行った。水が入った瓶とエタノールが入った瓶を設置し双方の飲量を調べ、嗜好性を評価した。OXT KO, OXTR KO いずれも野生型(WT)と比較してエタノール嗜好性に差はみられなかった。次にアルコールの諸障害における OXT/OXTR の機能を調べるため、以下の行動解析を行った。Wire Hanging Testにより運動機能や筋力を評価した。エタノールを腹腔内投与しマウスを金網にしがみつかせ、ひっくり返してから落下するまでの時間を計測した。OXT KO, OXTR KO マウスともに、エタノール 投与 35 分後の落下時間が WTと比較して有意に短くなり、オキシトシンシステムの欠損により、エタノール摂取後の運動機能の回復力の低下が示唆された。 (2) Open Field Testにより不安行動を評価した。エタノールを腹腔内投与し Open Field boxにマウスを入れ 10 分間の行動を記録した。OXT KO, OXTR KOともに WTと比較して有意な差はなかった。(3) Tail Suspension Testによりうつ様行動を評価した。エタノール腹腔内投与後に マウスの尾を固定して宙づりにし 6 分間の不動時間を計測した。OXT KO, OXTR KOともに WTと比較して有意な差はなかった。 (4) Loss of Righting Reflex Testにて 運動機能を評価した。エタノールを腹腔内投与しマウスを仰臥位に置き、回復するまでに要する時間を計測した。OXT KO, OXTR KO マウスともに WT マウスと比較して有意な差はなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常状態ではオキシトシンシステムがアルコール嗜好性に関与しないことと、アルコール摂取後の運動機能の回復の遅延が明らかになった。次にオキシトシンシステムがアルコール依存症に伴う不安、うつ、運動障害にもたらす影響を解析することを目指した。第一にStevenson JR et al, (2017)の報告を参考にして野生型マウスを用いてアルコール依存モデルマウスの作成を試みた。野生型としてC57Bl/6マウスに10%エタノールを2 g/kg/dayを11日間連続して腹腔内投与を行ったのち、1週間エタノールを与えずに飼育した。アルコール依存度を二瓶選択試験(水が入った瓶とエタノールが入った瓶を設置し一定時間の双方の飲量を調べる)で評価した。その結果、有意なアルコール依存は確認されず、アルコール依存モデルマウス作成の条件の改良が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はオキシトシンシステムが、アルコール依存症モデルマウスのアルコール依存性、アルコール離脱症状である不安、うつ、運動障害にもたらす影響を解析する。第一にアルコール依存モデルマウスの作成方法を改良する。Kingらの報告(2017)によると、暗期に2時間、3日間連続で20%エタノールを飲水させ、4日目に4時間20%エタノールを飲水させることにより成獣齢の野生型マウスはアルコール嗜好性が高まり依存性を示すようになる。Oxt KO、Oxtr KOに対して同様の処理を行い、アルコールに対して嗜好性、依存性、アルコール離脱症状、不安、抑うつ、運動機能を評価する。脳領域特異的にOXTR発現神経の活動を抑制し、OXTRがアルコールの依存性と離脱症状に関与する脳領域を明らかにしアルコールの依存性と離脱症状を減弱化で活性化するOXTR発現ニューロンの神経回路を明らかにする。具体的には、OXTR発現神経特異的にCreを発現するOxtr-Creマウスに、アデノ随伴ウイルスベクターにより抑制性のDREADD(designer receptors exclusively activated by designer drug)であるhM4DiをCre依存的に導入する(OXTRCre/hM4Diマウス)。感染後、hM4DDiの特異的リガンドclozapine-N-oxide(CNO)を適用しOXTRCre/hM4Diマウスをalcohol dependentとしてCNO投与後、アルコール嗜好性、不安、抑うつ、運動機能を解析する行動試験を行い、どのOXTR発現領域が重要であるかを解析する。
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Causes of Carryover |
計画していたアルコール依存症モデルマウスの作成にいたらず、その後の動物実験を行わなかったため、実験動物にかかる飼育費と遺伝子型決定や組織染色、ウイルス作成に用いる試薬を使用しなかった。今後の研究の進展により研究費の遂行を行う。
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